エッジコンピューティング

エッジAIとは?クラウドAIとの違いや活用シーンを紹介

執筆者BUSINESS SOLUTION WEB 編集部
2022.08.02

近年、AI(人工知能)技術の発展とともに、AIに期待される役割が増えてきています。ただ単に機械学習として自発的な判断ができるツールとしての枠組みを超え、膨大かつ複雑なデータをリアルタイムで分析・反映できるようなディープラーニングを活用した取り組みが始まっています。

本記事では、そんなAI時代に必須とされる「エッジAI」について解説します。エッジAIによるシステム構築や情報のキャッチアップを視野に入れている方は、ぜひ参考にしてみてください。

エッジAIとは? クラウドAIとの違い

エッジAIとは、「エッジ(=端・ふち・へり)」であるエンドポイントにAIを搭載し、直接情報処理を行うシステムのことを指します。具体的には、パソコン・スマートフォン・タブレットなどユーザーが直接操作する端末や、IoT家電・機材にAIを導入し、AIによるリアルタイム判断を促す仕組みです。

膨大なデータ処理が求められるようになった今の時代だからこそ必要とされている技術であり、現在ではさまざまなシーンでエッジAIの導入が進んでいます。

クラウドAIとの違い

エッジAIは、従来のクラウドAIとは一線を画すものとして生まれました。どちらもAIを搭載しており高度な判断ができるという点では同じですが、クラウドAIはその名の通り、クラウドシステム上にAIが搭載されています。

そのため、パソコンや機材などのエンドポイント端末で収集・活用しているデータは、一旦クラウドシステムを介して処理する必要が出てきます。

そのため、通信速度の影響をダイレクトに受けやすいことがデメリットであり、膨大なデータ分析には向きません。また、すべてのデータがクラウド上に集約されることから、サイバー攻撃を受けて大量のデータが流出する恐れがあるなど、セキュリティレベルを高くしておく必要があります。

一方で、エッジAIはエンドポイントである端末そのものにAIを搭載するため、通信環境が悪くてもスピーディーなデータ分析が叶います。自動運転などリアルタイムな反応が必須とされる分野において欠かせない技術として成長しています。

エッジAIのメリット

それでは、改めてエッジAIのメリットを探っていきましょう。

リアルタイム性と分析の向上

エッジAIはエンドポイントで直接データ分析を行うため、リアルタイムに近いレスポンスを得ることができます。その分同じ時間で分析できるデータ量が多くなり、時間効率に優れていると言えるでしょう。

なるべく短時間で分析を済ませたいときや、分析をリアルタイムにすることでエンドポイント側の動きをスムーズにしたい場合に有効です。

今後、さらにIoT化が進み、インターネット上で膨大なデータ通信が行われるであろうことを考えると、業務効率化の観点で業種・職種問わずエッジAIの活用を検討してはいかがでしょうか。

通信費などのコスト削減

エッジAIが搭載されているエンドポイント側でデータを分析し、必要な情報のみクラウド上で保存・送信することで、通信費の負担を抑えることが可能です。同じ作業で比較するとクラウドAIよりコストカットが可能なため、長期的に運用する上で大きなメリットとなるでしょう。

また、必要な情報だけをクラウド側に送り、それ以外はエンドポイント側に留めることで、クラウドの月額利用料などを抑える効果もあります。

「あっという間に保存容量がいっぱいになってしまった」「追加でデータ容量を購入せねばならず、月額利用料が膨らみがち」というときは、エッジAIによる分析に切り替えてみてはいかがでしょうか。

セキュリティの向上

原則、データや情報をクラウド上に保存しないため、サイバー攻撃などの不正外部アクセスに強いというメリットがあります。万が一サイバー攻撃を受けても被害を最小限に抑えやすく、他のデータまで流出してしまうというリスクが下がります。

そのため、機密情報・個人情報・金融取引情報を扱うケースでは、エッジAI化の動きが盛んです。自社で取り入れる際は、取り扱う情報の特性と照らし合わせながら、エッジAI導入の検討を進めていきましょう。

エッジAIとIoTの関係性

IoT(= Internet of Things)は「モノのインターネット」と呼ばれている通り、今後ありとあらゆる「モノ」がインターネットに接続されるようになると予測されます。

IoTの代表例として一般家庭向けの家電とスマートフォンの連携などが挙げられますが、産業分野のIoT化もめざましく、医療・物流・農業・製造業・交通インフラ・教育システムなどさまざまな分野で活用されています。この流れはさらに加速化すると考えられており、高いメリットが得られる一方で、データ通信量やセキュリティに対する不安の声も上がるようになりました。

クラウドAIからエッジAIに切り替えることで、このようなリスクを低減しやすくなります。その場でデータ分析できるエッジAIの方が利便性は高く、できることの幅も広がっていくでしょう。

特に自動運転や工場の機械や設備、製造ロボットの予知保全など、リアルタイム性が求められるIoT活用のシーンでエッジAIは求められます。自動運転の場合、カメラやセンサが取得したデータを瞬時に処理・分析し、状況判断できなければ車両の制御ができません。また予備保全に関しても、エッジAIを活用し常にモニタリングすることで、機器劣化などの予兆に対し迅速に対応できます。

クラウドAIよりもリアルタイムでデータを処理・分析できるエッジAIの特性は、ビッグデータの収集を担うIoTとの相性がいいでしょう。利便性向上と業務効率化のどちらの視点から見ても、IoTとエッジAIは、切っても切れない関係性にあると言えます。

エッジAIが期待される業界と活用シーン

最後に、エッジAIの活用が期待されている業界を紹介します。実際に活用されているケースもピックアップしますので、エッジAIの活用イメージを膨らませながらチェックしてみましょう。

期待される業界

エッジAIは、農業への導入が進んでいます。スマート農機を活用することで、真夏・真冬の農作業負担を減らし、人手不足や過疎化に悩む農家を救う効果が期待されています。農作業の自動化や効率化を進めるスマート農業では、リアルタイムなデータ処理・分析が求められるため、エッジAIが活躍します。

また、エッジAIを搭載したドローンによる俯瞰したデータの抽出・蓄積・分析で、より生産性を向上させるような仕組みづくりができるようになりました。

また、製造業におけるエッジAIにも注目が集まっています。工場において、AIやIoTなどのデジタル技術を活用したスマートファクトリー化を実現することで、危険作業の件数が減るようになりました。人手不足対策としても有効で、実際に手を動かす工程はエッジAIに任せることで、人はデータの分析や経営判断に集中できるようになったのです。

クラウド上などにアップせずあくまでもローカル処理にこだわることで、高いセキュリティレベルを設けられるようになり、結果、業種・職種の幅を問わず、さまざまなシーンでエッジAIが活用されています。

参考:
KUBOTA PRESS
Hewlett Packard Enterprise 「製造業におけるエッジAIの活用」

活用シーン

エッジAIの活用シーンは多く、近年特に注目されているもののひとつに自動運転が挙げられます。リアルタイムな情報処理により、万が一の歩行者飛び出し・障害物・運転者の体調不良に素早く対応できるようになりました。これにより、事故を減らしながら自動運転を叶える研究が盛んになっています。

また、監視カメラの映像をリアルタイムに解析処理することで防犯に役立てたり、工場における検品作業をエッジAIで代替したりと、活用の幅は広がっています。また各カメラに解析処理が分散されるため、カメラ台数を増やしてもサーバーへの負荷を抑えられることも特徴の一つです。主な機能としては下記が挙げられます。

・侵入検知
指定エリアへの人の出入りを検知
・徘徊検知
指定エリア内に、指定した時間よりも長く滞在する人を検知
・ラインクロス検知
境界線を越えて移動する人を検知
・不審物検知
置き去りにされた物体を検知
・持ち去り検知
物体の消失を検知
・顔検知
人の顔を検知し、追跡
・混雑検知
指定エリアにどれだけの人がいるか識別し、混雑を検知
・逃走検知
人の移動速度を識別し、走っている人を検知

さらに、人が入れない場所にエッジAI搭載ロボットを入れて情報分析をするなどの取り組みも考えられています。

参考:自動運転ラボ「自動運転に必須の「エッジAI」とは?」

エッジAIはリアルタイム性が求められるデータ処理・分析に最適

エッジAIは、IoT化によるデータ通信量の増大とセキュリティリスクに関する課題を解決する、新たな取り組みです。限りなくリアルタイムに近い応答が可能になります。

クラウドAIは、大規模なデータ処理・分析が可能ですが、リアルタイム性や通信コストの面で懸念が生まれます。一方エッジAIは、リアルタイム性や通信コストの削減、セキュリティ性の向上が期待でき、多くの業界で進む機器の自動化には必須の技術となってくるでしょう。

現行のクラウドAIだけではなく、早期の段階からエッジAI搭載の道を探ってみてはいかがでしょうか。

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