エンドポイントセキュリティの重要性。DX時代の脅威
セキュリティ対策は多種多様ですが、近年特にエンドポイントセキュリティが重視されていることをご存知でしょうか。2021年には「DX元年」が提唱されるなど、業種・職種を限定せずさまざまな会社でIT化・デジタル化が進みつつあります。
DX化について業務効率化や生産性向上などのメリットが挙げられている中、課題とされているのがセキュリティ対策です。ソフトウェアやツールにはあらかじめセキュリティ対策を施せるものの、エンドポイントに対するセキュリティ対策が十分でなく、結果としてサイバー攻撃に見舞われるケースが出ています。
本記事では、このエンドポイントセキュリティの重要性を解説します。これからのDX推進に伴う適切なセキュリティ対策考案のためにお役立てください。
エンドポイントセキュリティとは?
エンドポイントとは、ネットワークに接続されたデバイス端末のことを指します。「終点」「端」などの意味を持つ「エンドポイント」という単語からも分かる通り、ネットワークにおける終点に当たる、パソコン・スマートフォン・タブレットなどに代表される通信端末をイメージするといいでしょう。
エンドポイントセキュリティとは、これら通信デバイス端末のセキュリティレベルを上げる取り組みを指し、エンドポイントにおける不審な行動やウイルスを検出する対策が大半です。ハッキングのようなデバイス全体を探るような不審な動きがあれば、アクセスを遮断したりポップアップメッセージで警告したりします。
また、ウイルスやマルウェアなどを検出すれば、隔離に向けた動きを取ることもあります。
こうした仕組みを基に高いセキュリティ環境を築き、デバイス端末およびネットワーク上の情報を適切に守ることが、エンドポイントセキュリティの目的です。
エンドポイントセキュリティとゲートウェイセキュリティの違い
エンドポイントセキュリティは、パソコン・スマートフォン・タブレットなどのエンドポイント内にある情報を保護するための対策です。そのため、エンドポイントだけでなくネットワーク環境にも目を向け、対策を行うことが特徴です。
一方で従来型のゲートウェイセキュリティの場合は、パソコン内にウイルスやマルウェアを侵入させないことが目的でした。ネットワークとエンドポイントの接続点のみを監視するシステムであり、接続点に至る前やエンドポイントに侵入して以降のことは感知できないことが一般的です。
例えるなら、ゲートウェイセキュリティは門番のような役割、エンドポイントセキュリティは警備員によるパトロールのような役割があると言えるでしょう。守備範囲も目的も異なるため、セキュリティレベルも異なります。
エンドポイントセキュリティに注目が集まる背景
ここでは、エンドポイントセキュリティに注目が集まる背景を具体的にご紹介します。
テレワークの普及
働き方改革関連法案が施行されたほか、近年の新型コロナウイルスの感染対策に伴い、企業によるテレワークの導入が急速に進んでいます。自宅やコワーキングスペースで仕事をする人が多くなり、オフィスレベルのセキュリティ環境から抜け出す機会が増えました。社外からのアクセスが当たり前になることで、情報流出のリスクが高まっています。
中には会社から貸与されたものとは異なるパソコン・スマートフォン・タブレットを使用して仕事をする人もいるため、社員ごとにセキュリティレベルがバラつきがちになるという課題もあります。
こうした状況にあっても情報を守れるよう、各種端末レベルでのエンドポイントセキュリティが急務とされているのです。
サイバー攻撃・不正アクセスの高度化
サイバー攻撃や不正アクセスは年々高度化し、対策しても追いついてくる「イタチごっこ」状態にあるとされています。個人のレベルで一から対策するのは難しく、中には知識がある人でも感知できないサイバー攻撃や不正アクセスも出てくるでしょう。
このように、従来のゲートウェイセキュリティだけではサイバー攻撃を防ぎきれない可能性があるため、エンドポイントセキュリティのような新たな取り組みを導入し、最新技術をフル活用してセキュリティ対策を行うことが推奨されます。
エンドポイントの複雑化
現在、多くの人がパソコン・スマートフォン・タブレットを使うようになったほか、スマートウォッチやスマートスピーカーなどのツールも増え、エンドポイントが複雑化しています。ひとりでいくつものエンドポイントを持っているなど、ITリテラシーが低い人でも手軽にエンドポイントを活用できます。
もちろん手軽にデバイスを活用できることは非常に便利なことですが、セキュリティ対策の面でみると、大きなリスクがあると分かります。IoTにつながるデバイスも年々増えているため、特に高レベルな対策が必要です。
エンドポイントセキュリティの種類
最後に、エンドポイントセキュリティの種類を解説します。種類ごとの特徴にも触れますので、概要を理解するためにお役立てください。
EPP(Endpoint Protection Platform)
コンピューターウイルスや不正アクセスからエンドポイントを守るためのソフトウェアシステムです。コンピューターウイルスに共通する代表的な項目を学習しており、アクセス内容を参照しながら、項目に該当するものがあればシャットダウンします。登録されているウイルスは確実に防げるため、高い効果があると言えるでしょう。
一方で、登録されていない未知のウイルスや、時代に合わせて進化するサイバー攻撃には対処しづらいことがデメリットです。あくまでも、ソフトウェアが知っているウイルスにのみ効果を発揮するものとして捉えておきましょう。
NGEPP(Next Generation Endpoint Protection Platform)
マルウェアやコンピューターウイルスの動作を検知してエンドポイントを守るソフトウェアシステムです。EPPに搭載されている情報と完全にマッチしないマルウェアもブロックしやすく、あくまでも不審な動作が生じたポイントを探れることが特徴です。
AIなどの機械学習を搭載していることも多く、時代に合わせてツールそのものが少しずつ進化していくことがメリットだと言えるでしょう。
EDR(Endpoint Detection and Response)
定期的にエンドポイント内を巡回し、異常があれば即刻ブロックするためのソフトウェアシステムです。万が一EPPやNGEPPをすり抜けてエンドポイント内に侵入された場合に、大いに役立つシステムだと言えるでしょう。
異常の発覚後すぐに対処できるため被害を最小限に抑えやすく、管理者への自動報告機能を搭載していれば即座に知らせてもらうことができます。同じような不正アクセスから他の社員のエンドポイントを守る際にも、有効に働きます。
DLP(Data Loss Prevention)
機密情報や個人情報など、外部への流出がリスクとなるデータにのみ焦点を当てるセキュリティソフトウェアです。
あらかじめポリシーを設定しておくことにより、情報の閲覧・加工・持ち出しができないよう設定できます。たとえ自社社員であったとしてもポリシーに反する行動であれば確実にブロックできるため、ヒューマンエラーによる情報流出にも備えられます。
特定の範囲のみを巡回するためサーバー負担が軽く、通常業務にほとんど影響がありません。
まずはエンドポイントがさらされているリスクの把握を
デジタル化・IT化に対応するということは、専用ツールを使うことだけに留まりません。セキュリティに関する情報収集をしっかり行い、社員も取引先も顧客も守るような取り組みが必須だと言えるでしょう。それを兼ね備えて初めてDX化が実現すると認識し対策することが肝心です。
まずはエンドポイントが日常的にさらされているリスクを把握し、対策を始めましょう。社員のITリテラシー教育と並行すれば、より高い効果が見込めます。