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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは? 事例と導入のメリットを紹介

執筆者BUSINESS SOLUTION WEB 編集部
2019.05.08

ECサイトの躍進によって物流の在り方に変化が求められています。製品を製造し、エンドユーザーの手元へ届けるまでのプロセスをいかにスムーズに行えるか、メーカーの供給体制が問われています。

そのような中、業務効率化はもちろん、欠品や遅配を減らすべくサプライチェーンを機能させ、顧客満足度の向上を図る取り組みが活発化しています。今回は、サプライチェーンマネジメント(SCM)の重要性について今一度振り返ってみたいと思います。

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サプライチェーンマネジメントが必要とされる背景

サプライチェーンとは、製造する製品の部材調達から設計、製造、そして物流を経て最終的にエンドユーザーの手に渡るまでの一連のフローを指す言葉です。

このサプライチェーンには、部材を製造する企業、アッセンブリーを行う企業、物流・梱包企業、商社、小売店といった具合に、多数の企業が参画しています。2000年代に入りITツールの進化とともに、サプライチェーンの一元管理が可能となりました。このサプライチェーンを一元管理する経営手法をサプライチェーンマネジメントと呼びます。

サプライチェーンマネジメントと並んで「ERP」というキーワードが用いられることもあります。かつて製造業では、部材調達(資材部)、人材(人事部)、キャッシュフロー(経理部)といった情報が社内で共有されていないことが多く、事業部間で情報共有できていないことが原因でリードタイムの遅延を招いていました。そこで、各部門間で情報共有できるプラットフォームの構築のため、多くの企業がERPを導入するようになりました。

ERPはあくまで社内間の連携ですが、サプライチェーンマネジメントは、企業の枠を飛び越え、協力企業までも包括したより規模の大きい取り組みになります。

サプライチェーンマネジメントで一元化を図る取り組みは、本格的にITが萌芽した2000年代初頭には日本で見られたのですが、現在、改めてサプライチェーンマネジメントの重要性が説かれています。これには一体どのような時代背景があるのでしょうか?

労働人口の変化

モノづくりにおいて、日本の製造業は「技能工」と呼ばれる熟練した技術と知識を持った職人たちによって支えられてきました。しかし、少子高齢化にともなう後継者不足が指摘されており、モノづくりにおいても、経験の浅いスタッフでも従事できるよう、作業マニュアルを徹底する方向へシフトしています。また物流業界においても、かねてから長距離トラックドライバーの人材難が深刻化しています。サプライチェーン全体で最適化や合理化に努め、無駄のない供給体制を敷くことが求められています。

ビジネスのグローバル化

土地代と人件費の安い海外へ製造拠点を移す動きに加わり、ECサイトの普及により海外のエンドユーザーへ製品を届けることで事業拡大する企業も増えてきています。ビジネスのグローバル化によって、サプライチェーンもより広いエリア、より多くの人や企業が協働するようになってきています。そのような中、発注ミスや遅延があると、企業や製品のイメージやブランドを損なうリスクがあり、国際競争で勝ち残っていくためにサプライチェーンマネジメントの強化は欠かせなくなっています。

AI、IoT技術の変革

ビッグデータの活用によって、不特定多数のユーザーの嗜好や行動パターンなどが分析できるようになりました。蓄積されたこれらのデータをもとに、需要や流行の予測を行い適切な製品供給に生かすことができるのです。今後さらにAI(人工知能)技術が発展してくると、価値観やライフスタイルが多様化している現代人のニーズに対しても、適切かつスピーディな供給体制が構築されていきます。製造業では「インダストリー4.0」、物流業界では「ロジスティクス4.0」などの構造改革が進んでいます。

サプライチェーンマネジメントの事例

サプライチェーンマネジメントの導入で成果を挙げている事例を紹介します。

株式会社トーハン

出版取次大手のトーハンでは、書店と読者を最適なタイミングでつなげるために書店向けシステム「TONETS V」、出版社向けシステム「TONETS i」を構築。書店と出版社の両者から仕入・物流・営業のデータを一元管理して、供給スピードを早めています。

書籍は、多品種少量のニーズが多頻度で生まれます。もともとトーハンは出版社と書店の間に入る取次業者のため、エンドユーザーとの接点はありませんでしたが、このサービスの導入によって情報と物流が「取次-書店-エンドユーザー」の三者間で発生することになり、結果として合理的なサプライチェーンにつながった事例と言えます。

<参照元:株式会社トーハン「事業内容 情報流通機能」

株式会社 日本アクセス

総合食品商社である株式会社 日本アクセスは、全温度帯対応の独自インフラを構築。特に全国550箇所の物流拠点と協力したTPL(3PL=サード・パーティ・ロジスティクス)物流で、原料の調達から共同輸送までの全体最適はもちろん、複数企業を対象とした共同保管・配送、生産・販売・資源リサイクルまで一気通貫のサービスを提供しています。さらにメーカー、卸売企業、小売企業を包括したサプライチェーンマネジメントを構築し、供給予測を活かした在庫の最適化を行っています。

<参照元:株式会社 日本アクセス「ロジスティクス 3PLセンター」

花王株式会社

花王株式会社は、小売店からの受注に対して欠品を生じさせない在庫最適化を実現するために、独自の仕組みを構築しています。卸店を介さずに、60ブランド1,500に及ぶ製品を受注から24時間以内に納品できる体制を整え、ロジスティクス部門が需要予測技術を開発。ニーズを先読みしながら、過不足ない製品の供給を実現。さらに環境にも配慮し、モーダルシフトの推進や鉄道輸送の活用を積極的に行っています。

<参照元:花王株式会社「モノづくり」の現場

サプライチェーンマネジメント導入によるメリット

サプライチェーンマネジメントの導入事例をいくつか紹介しましたが、改めてそのメリットを解説しましょう。

人材や費用の最適配分
ネットワークによって、すべてのセクションにおけるモノの状態、生産パフォーマンス、管理状況などが可視化されます。これによって、需要が増大しているところにコストや人員を割くことが可能で、逆に供給過多になっている部分の業務見直しもできるため、効率的な生産スキームを構築することができます。

在庫の可視化
過剰な在庫は、企業にとってキャッシュフローの悪化を招き、在庫切れは会社の信用を落とす要因にもなるため、在庫管理における需給のバランスは、常に企業の悩みでもあります。現在の売れ行き状況を鑑みて発注をかけることによって、生産量がコントロールされ、在庫の適正化にもつながります。

供給スピードの向上・多様なニーズへの対応
随時ユーザーのニーズを汲み取るためにマーケティングは欠かせないものです。サプライチェーンマネジメントに加えて、ビッグデータと連動した需要予測があれば、多様なニーズへの対応はもちろん、供給スピードの向上も実現できます。

リアルタイムで各工程を一元管理
すべての工程を可視化できるため、社外で起きている事象や、関連する企業すべてを包括した管理体制を構築できます。一元管理ができることで迅速な経営判断や戦略の軌道修正も可能になり、経営陣からの現場への指示がスムーズになります。

多くのメリットがあるサプライチェーンマネジメントですが、運用していくためにはイニシアティブを執る人材が必要で、業務に対する知識はもちろんのこと、関連各社・部門に対して丁重かつ公正にコミュニケーションを図れるリーダーを抜擢する必要があります。

中小企業におけるサプライチェーンマネジメントの課題

サプライチェーンマネジメントを導入するにあたり、さまざまなハードルもあります。まずは部材調達からエンドユーザーへの供給まで、すべての工程にかかわる事業者を統率することが必須です。全工程における課題の発見や改善案などを各社横串で情報共有する必要があり、定期的に打ち合わせや研修会を行い、各社間のリレーションシップを深める必要があります。そのためには、前項で触れたイニシアティブを執るリーダーの育成も不可欠ですが、会社によっては独自の“縦割り組織”が根づいているところもあり、まずは社内の意識改革から始めなくてはいけない企業もあります。

続いてコストの問題です。サプライチェーンマネジメントを機能させていくためには、ITによるインフラ整備が必要です。業態や規模に応じて、独自のシステムを構築する必要があるため、コストも高くなります。またシステムの保守・運用をする専門的人材が必要になることも中小企業にとっては大きなハードルとなります。

ビジネスの多様化そしてグローバル化によって、製品の安定供給というのは「課題」ではなく「必須」の事項になってきています。ITをうまく活用しながら、より競争力ある企業へと会社を導いていくことが、経営者やマネジメント職に求められているのです。

まとめ

製造拠点がグローバル化し、多品種少量生産の注文が多頻度になる中、製造業や物流には大きな変革が求められています。そのため、全工程をデータで可視化、一元管理できることには大きなメリットがあります。大企業では独自のシステムを構築して、サプライチェーンと連携しているケースが多くなっています。本部と現場がリアルタイムに情報を共有することで、さまざまなニーズに対応できるようになります。製造拠点や物流拠点のITツールの導入、ICT環境の整備には、コストや導入後の運用など考慮すべき点はありますが、的確な対策を講じることで大きなメリットを期待できます。

中小企業はコストや専門人材の点を考えると、大規模なサプライチェーンマネジメントのシステムを導入するのは現実的ではないと考えられがちです。しかし、協力会社とのネットワークを強固にして、市場に柔軟な対応をしていくことは必要不可欠でしょう。大規模なシステムを導入せずとも、協力会社と小規模なネットワークを構築し、スピーディな情報共有やデータ交換が可能な環境をつくることが第一歩となるでしょう。

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