PoCとは? 実証実験との違いやポイントをわかりやすく紹介!
新たなアイデアを具現化するときや商品・サービスをリリースするときに、可能な限り失敗するリスクをゼロにしたいと考えるのは、全ての企業に共通するものです。あらかじめ効果・コスト・課題の洗い出しができれば、リスクの判断や改善施策の考案に役立つでしょう。
本記事では、リスク回避のためにも欠かせないPoCについて、詳しく解説します。実証実験との違いやPoCのポイントにも触れるため、メリットも含めてぜひ参考にしてみてください。
PoCとは? 実証実験との違い
PoC(Proof of Concept)とは、「概念実証」という意味を持つ言葉です。開発の場では、新たなアイデアを実際の開発に移す前に実現可能かを検証する目的でPoCをすることが多く、事前の効果検証に役立つ手法として確立しました。
特にニーズやトレンドの移り変わりが激しく、消費者ニーズが読みづらくなっている昨今、リスク回避のための施策やアイデア実現の不確実性の抑制に役立つことで注目されています。
実際に、PoCの結果次第で開発への着手を決める企業が多くなっています。あまりにもリスクが高く、改善施策も有効でないと判断できる場合は、損失の拡大を防ぐために開発自体を中断することもあるでしょう。
投資したコストに見合った分の効果を得るためにも、多くの業種においてPoCが欠かせなくなりつつあるのです。
実証実験との違い
PoCと似た言葉として「実証実験」がありますが、2つの間に明確な違いはありません。実証実験も商品・プロダクトを実際の環境下で稼働させ、事前にリスクの見落としや課題を浮き彫りにする手法です。
あえて違いを明確にするならば、PoCは技術・概念・アイデアの検証をする手法であり、実証実験は実際の商品・プロダクトの検証をする手法であることが挙げられます。
製品やアイデアの実現可能性に着目しているのがPoC、製品の課題や問題点の洗い出しを目的としているのが実証実験です。
しかし、どちらの検証でも似通った結果になることもあり、線引きをせず考えても問題ありません。現にPoCを、実証実験と同じニュアンスで使用している企業もあります。
PoCを行うメリット
PoCを行うメリットとして、下記3点が挙げられます。
ひとつずつ解説していくため、本格的に実践する前にチェックしてみてください。
リスクを最小限に抑えられる
PoCは、リスクマネジメント手法として確立しています。小規模にPoCをすることで、あらかじめリスク・課題・問題点などを浮き彫りにでき、早めの対策できる点がポイントです。
リスクに気づかぬまま具現化して、後々ミスマッチに気づくことは、大きなロスにつながります。適宜フィードバックを加えていけばロスの予防にもなるため、PoCを導入している企業が多いのです。
コスト・工数削減
PoCは、コストや工数の削減にも貢献します。今の方法が間違っているとわかれば、即時方向修正ができるでしょう。
本来発生するはずであった無駄なコスト・工数を省けるため、自社が持つリソースを最適に分配できるようになります。
投資や開発の判断に有用
PoCをした結果、狙い通りの効果が出る可能性が高いとわかれば、投資・開発の判断がしやすくなります。誤った判断で大々的な投資をすると、失敗したときに会社そのものの存続が危ぶまれかねません。
事前にPoCで効果実証できれば、多額の出資をして設備投資したり、早い段階でGOサインを出して機会損失を防いだりすることができるでしょう。
また、適正な方法で収集されたデータなどの判断材料が多いほど、投資家からの出資を集めやすくなるため、財務状況改善にも貢献します。
PoCの進め方
PoCを進めるためには、ステップを細分化していくことが大切です。
より正しい効果測定にするためにも、下記を活用していきましょう。
目的設定
まずは、PoCをする目的を明確にします。なぜPoCをするのか、どのような結果が出ることが理想なのか、改めてリストアップしていきます。目的が曖昧な状態で検証しようとすると「何を検証すべきか」わからなくなるリスクがあるためです。
特に、ゴールの設定は重要です。理想とズレがあるか冷静な判断をするためにも、PoC実行前に着手しておくことをおすすめします。
検証内容設定
検証内容を設定し、準備を進めます。どのアイデア・機能に検証をかけるのか、効果が正しく出そうな検証方法であるかを探り、再度PoCの目的と照らし合わせます。
検証を成功させるためには、検証範囲をなるべく限定したほうがよいでしょう。課題・問題点がどこにあるか明確にするためにも、対象をブレさせないことが大切です。
実証
準備が整い次第、実証のフェーズに移ります。より結果の評価がしやすくなるためには、実際に使用する対象を巻き込んだ実証にすることが大切です。
本番環境でテストするようなイメージにすれば、精度の高いデータを得やすく、その後の改善にも役立ちます。
結果の評価
PoCの結果をチェックし、実現可能性・リスク・効果・コストなどを評価します。
このまま開発を進めるべきか、改善してからにするべきか、そもそも断念すべきかなどその後のプランを考えましょう。
また、検証前には見えていなかった課題や問題点が可視化されれば、見落としに気づくことができます。
記録を取って別の開発に活かすことができれば、自社の開発ノウハウとして蓄積することも可能です。
PoCを成功させるポイント
最後に、PoCを成功させるポイントを解説します。
狙い通りの効果を得るためにも、ミスマッチのあるPoCになることを避けるためにも必見です。
できるだけ小規模から実践する
前述の通り、PoCの実施範囲を限定しなるべく小規模から始めることがベストです。
規模が大きくなればなるほどコストも時間もかかってしまうため、開発工数を削減できるPoCならではのメリットが半減してしまうおそれがあります。
実現可能性の検証をするというPoC本来の目的から外れることのないよう、常に意識しておくことが重要です。
実際のサービスに近い形を意識する
実際のサービスに近い形を意識したPoCにすることで、正しいデータを収集していきましょう。環境が異なる場合、机上の空論となるリスクが生じます。
結果的に「PoCでは問題がなかったのに、実際に開発してから想定外のことが起きている」という事態が生じやすく、フィードバックが役に立たなくなってしまいます。
可能な限り、実運用と同じもしくは近い環境を用意し、PoCに着手することがポイントです。
PoCを行う目的を明確にする
「PoCの進め方」でも触れた通り、PoCをする目的を明確にしておくことが重要です。ゴールのイメージをなるべく具体的に描き、PoCの結果が理想とズレているか細かく検証していきましょう。
その後はフィードバックを繰り返し、改善策を模索していきます。
企業によっては、PoCを繰り返すばかりでフィードバックができず、目的を見失ってしまうケースもあるようです。コストと工数ばかりがかさむ原因となるため、「PoCをすること」自体を目的にしないよう注意してください。
POCはプロジェクトの成否を正しく判断するためのツール
新規プロジェクトの立ち上げやシステム開発前には、もはやPoCが必須になりつつあります。クオリティを上げた高い水準の開発にするためにも、早い段階でリスクや見落としに気づけるPoCは、積極的に実施すべきだと言えます。
2022年2月には、ZoomがMicrosoft Teamsと連携しているウェアラブルサービス「LINKLET」のPoCパックがリリースされています。PoCの伴走サービスも追加でき、PoCにはじめて着手する企業やノウハウのない担当者でも活用しやすい工夫がされています。
プロジェクトの成否を正しく判断するためのツールとして活用し、成功の可能性を高めていきましょう。