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捺印目的の出社が不要に? 電子署名とは│仕組みやメリットをわかりやすく解説

執筆者BUSINESS SOLUTION WEB 編集部
2022.01.18

働き方改革によってリモートワークの導入やペーパーレス化が進む中、多くの企業が電子署名に注目しています。そこでこの記事では、電子署名の機能や仕組み、導入メリット、活用シーンなどを解説。また、導入にともなうデメリットや課題についても言及していきます。

電子署名とは

電子署名とは、電子的に作成された署名を指し、ある電子文書が正式かつ改ざんされていないものであることを証明するために用いられます。本人確認などで活用される署名や捺印に取って代わるもので、簡単な電子文書のやり取りで重要な役割を果たしています。

2001年には、「電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)」が施行され、同法に基づく電子署名が印鑑やサインと同等の効力を持つものとして新たに定義されました。これによって、電子署名を用いた本人性の証明がビジネスシーンで浸透しつつあります。

電子署名を検証する電子証明書

電子証明書(電子署名用証明書)とは、電子署名の信頼性や正当性を検証するために活用される証明書です。実印を証明するために用いる印鑑登録証明書のようなもので、電子署名の本人性を担保します。

印鑑登録の手続きは市役所で行われますが、電子署名の登録手続きは電子認証局が実施しています。同局が発行する電子証明書を利用すれば、それをもって電子署名の本人性を確認することが可能になります。

例えば、電子署名された文書を受け取った際、電子証明書に記載された内容などを確認することで、受け手側は書類の本人確認を行うことができます。このように、電子署名は電子証明書とセットで真の効果を発揮します。

電子署名の活用状況

電子署名は、契約書の提出など社外とのやり取りを中心に活用されてきました。しかし最近は、取引先とのやり取りだけではなく、社内での決裁業務などに関しても利用が進んでいるようです。

電子署名の主な活用シーン
契約・取引 契約書や発注書、請求書、見積書などの提出
情報公開 IR情報やニュースリリースなどの公開
コミュニケーション 機密情報を含む社内メールなどの配信
文書の保存 個人情報や機密文書などの保存
申請 官公庁への申請など

一例ですが、ペーパーロジック社が実施した「電子契約」導入実態に関するアンケート調査によれば、電子契約導入済みの企業は63.3%、昨年調査比較で34.5%アップしたとのことです。

また、日本経済新聞によると、新型コロナウイルスの感染を防ぐため、楽天株式会社は電子署名の手続きを導入すると発表。野村不動産株式会社では、2020年冬から新築の分譲マンションや戸建ての売買契約の手続きを電子化するということです。

参考:日本経済新聞「楽天 電子署名システムを導入へ
日本経済新聞「野村不動産、物件売買の契約手続きを電子化

このように、国内では大手企業を中心に、契約業務などで必要になる署名などについて電子システムの導入が進められているようです。

電子署名の活用が難しいシーン

ますます増える電子署名の活用シーン。しかし、電子文書を使った契約が認められていないシーンでは、もちろん電子署名を利用することができません。

例えば、定期借地・定期建物賃貸借契約書や投資信託契約約款、特定商取引における交付書面、労働者派遣個別契約などでは、紙媒体での書面のやり取りが原則となっているため、電子署名の活用が難しい状況です。

電子署名を活用する際は、電子文書でのやり取りが可能かどうかを必ず確認する必要があります。

電子署名の技術や仕組み

電子署名には、「公開鍵暗号基盤(PKI:Public Key Infrastructure)」と呼ばれる複雑な技術が採用されています。デジタルの世界では、自筆で署名したり実印を押したりできないため、署名者のみが所有し厳重に保管する「秘密鍵(印鑑に相当)」を活用し、電子契約書などに電子署名を行います。

さらに署名検証(電子文書の受け手側が署名者の本人性を確認すること)を可能にするため、署名者本人の「公開鍵」を格納した電子証明書を文書に添付し、第三者に送付します。

引用:電子認証局会議 電子署名活用ガイドより

電子署名の流れ(電子文書の作成・送信者)
1.ハッシュ関数を用いて、電子署名を行う電子文書のハッシュ値を計算する。
2.秘密鍵を利用して、計算したハッシュ値を暗号化する。
3.電子署名を電子文書に添付する。
※ハッシュ関数とは、任意のデータから別の値を得るための操作、または、その値を得るための関数を指します。
署名検証の流れ(電子文書の受信・検証者)
1.ハッシュ関数を用いて、受け取った電子文書のハッシュ値を計算する。
2.署名者の公開鍵を利用して、電子署名を復号する(ハッシュ値の計算)。
3.計算した二つのハッシュを照合し、一致しているかどうか確認する。

加えて、電子文書の受け手側は、証明書検証(文書の送信者から共有された公開鍵が、秘密鍵に対応したものであるかどうかなどを検証すること)を行う必要があります。これは、電子証明書を発行している認証局への確認によって検証することが可能です。

このように、電子署名の有効性は高度なデジタル技術によって下支えされています。電子署名の仕組みは、紙の契約書に捺印し印鑑証明を添えて先方に提出する従来のステップと基本的な流れは変わりません。

電子署名のメリット

電子署名の導入は、経費やタスクの削減、コンプライアンスの強化など、さまざまなメリットをもたらします。

1. 経費の削減
物理的な紙を用いず契約の締結などが行えるため、書類の印刷費用や郵送費用を削減することができます。さらに、電子文書のやり取りでは印紙税が課税されないので、収入印紙が不要です。

2. タスクの削減
電子文書のやり取りでは書類の郵送手続きなどがなくなるため、作業に関わる人員や費やす時間を大幅に削減することが可能です。

また、電子署名の導入は不要な出社を減らすことにもつながります。現在、多くの企業がリモートワークを導入し、業務の効率化などを進めています。しかし、電子署名が導入されておらず、捺印のためだけに出社している従業員もいるのではないでしょうか。電子署名が認められれば、そうした出社が不要になり交通費や移動時間を削減できるため、企業は他の業務に人員やコストを充てることが可能になるでしょう。

3. コンプライアンスの強化
電子署名は、文書の対外的なやり取りのみでなく、社内のやり取りにおいても活用されています。契約書などの文書の社内での改ざんを防止できるため、企業はコンプライアンスを強化することが可能です。

電子署名のデメリット

電子署名には、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクといったデメリットも存在します。電子署名や電子文書はデジタルデバイスやサーバー、クラウドサービスに保管されているため、コンピューターウイルスに感染したりサイバー攻撃を受けたりすると、最悪の場合、保管しているデータが漏えいしてしまいます。

また、情報セキュリティーのシステムが整備されていない企業では、社内に蓄積された電子文書を簡単に引き出すことができてしまうため、情報漏えいのリスクが高まります。従って、電子契約や電子署名を導入する際は、必ずセキュリティーとセットで考えるようにしてください。

電子署名を巡る課題

電子署名の導入にあたっては、まだまだ多くの課題が存在します。ここでは電子署名を巡る課題やその要因についてそれぞれ解説していきます。

1. 電子契約・電子署名を認めていない取引先への対応
たとえ自社が電子契約や電子署名を認めていたとしても、取引先が導入していなければ、電子契約をすることはできません。紙媒体での契約が根強く残る国内では、電子契約・電子署名を認めていない企業がまだ数多くあります。

2. 利用コスト
電子署名に効力を持たせるには、電子証明書の発行が必要です。証明書の発行は認証局で行うことができますが、手続きに一定の時間とコストがかかります。さらに、導入企業だけではなく、取引先についても、システムや電子証明書を利用するために料金を支払わなければならないケースが見られます。従って、取引先の理解を都度得なければなりません。

まとめ

電子署名に関する理解は深まりましたでしょうか。電子署名や電子契約への切り替えは、リモートワークが浸透する昨今、非常に注目されています。また、ペーパーレス化を進めるだけではなく、時間や費用、人材などにかかるコストを削減する手立てになります。ぜひ、これを機会に、電子署名の導入を検討してはいかがでしょうか。

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