働き方改革で注目の「週休3日制」とは?その仕組みや導入事例について
働き方改革の一環として、週休3日制が注目されています。出産や子育て、介護、趣味などと仕事の両立を図るワーク・ライフ・バランスの実現を目的とし、一部の企業が本格的に導入。また、さまざまな企業が現在導入を検討しています。そこでこの記事では、週休3日制の仕組みや導入事例、メリットなど、この制度の全体像を詳しく解説していきます。
「週休3日制」とは
一般的に「週休3日制」は、企業などが週に3日間の休日を設ける勤務形態を指します。ワーク・ライフ・バランスの実現を目指す政府の働き方改革などの方針を背景として、導入に前向きな企業が昨今増加しています。しかし、「週休2日制」や「完全週休2日制」の導入状況に比べると、週休3日制導入の割合はまだまだごくわずかです。
週休2日制とは、1か月に2日の休みがある週が少なくとも1度ある制度で、完全週休2日制は、毎週2日間の休みがある制度を指します。すなわち、具体的に週休3日制とは、月に3日間の休みの週が少なくとも1度あり、それ以外の週は1日以上の休みがある制度です。一方、完全週休3日制は、毎週3日間の休みがある制度を指すことになります。
週休3日制の仕組み
週休3日制は大きく3つのパターンに分けられます。1つ目は「1日当たりの労働時間を増やす方法」。2つ目は「給与水準を下げる方法」。そして、3つ目は「給与水準を一定にし、裁量制などと併用する方法」です。
働き方に関する制度は企業によって細かく規定が異なっており、画一的なものではありません。このため、以下のパターンはあくまで参考例として週休3日制の仕組みを捉えてください。
1日当たりの労働時間を増やす方法
最もわかりやすいパターンは「変形労働時間制(一定期間内で労働時間を柔軟に調整する制度)」の導入による週休3日制の実現です。休日を1日増やし、その労働時間を他の日に充てて調整します。例えば、1日8時間労働の企業で金曜日を休日にする場合、残り4日の勤務日を10時間労働にして帳尻を合わせます。この制度では、労働時間が変わらないので給与水準は一定となります。
しかし、日本は1日の法定労働時間を原則8時間としているため、このパターンでは毎日2時間の時間外労働が発生することになってしまいます。この2時間分の労働を残業として扱うと、企業はその分の給与を支払わなければなりません。従って、このパターンを導入する企業は、月単位での変形労働時間制を併用するなどして調整を図ることが必要でしょう。
給与水準を下げる方法
残り4日の勤務時間を変えずに給与水準を下げて調整する方法です。週休3日制を導入すると、1日8時間労働の場合、1か月で最大32時間の労働時間が削減されることになります。つまり、企業はこの最大32時間分の労働に対する従業員の給与を減額し、帳尻を合わせます。
給与水準を一定にし、裁量制などと併用する方法
労働時間や給与水準を変更せず、週休3日制を実現する方法もまた存在します。成果主義やアウトプットを重視する企業と相性が良く、年俸制や裁量労働制と併用するなどして運用されるケースが見られます。このパターンでは、労働時間が減るものの給与水準が一定であるため、企業は従業員のパフォーマンスに応じた給与の調整を図らなければなりません。従って、パフォーマンスを評価するための新たな仕組みが必要になります。
週休3日制の国内での導入状況
厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、1週間に3日以上の休日を設けている企業の割合は2018年で6.9%、2019年では7.7%となっています。
企業規模別に見ると、2019年の同企業の割合は、従業員が1,000人以上の企業では10.9%。300~999人では8.9%、100~299人では7.0%、そして30~99人では7.7%でした。企業規模が大きいほど、割合が高くなる傾向が見られます。
また、週休制の形態によって労働者数を分類したデータによれば、完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度で働く労働者の割合は、2019年で10.2%となっています。
※但しこのデータは、「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」を導入している企業としているため、週休3日制の割合を厳密に表すものではありません。
週休3日制の国内での導入事例
国内では大企業を中心に、週休3日制の本格導入や試験導入が進められています。そして、その導入方法は企業によって細かく異なります。ここでは、各企業の事例を説明していきます。
ヤフーの導入事例
多様な働き方の実現を狙い、家族をサポートしながら働くことができる「えらべる勤務制度」を導入しています。同社ホームページによると、「小学生以下の同居の子を養育する従業員や、家族の介護や看護が必要な従業員」が対象。また、月単位で申請したり変更・解除したりすることが可能になっています。ただ、この制度を利用して取得した休暇は無休扱いになります。
参考:ヤフー株式会社 プレスリリース 「育児や介護、看護を行う従業員を対象に働き方の選択肢を増やす「えらべる勤務制度」を導入」
ファーストリテイリング(ユニクロ)の導入事例
ファーストリテイリングでは、変形労働時間制をもとにして2015年10月から週休3日制を導入しています。1日8時間の労働時間を10時間に変更し、従業員は土日を含む週4日の勤務が可能に。労働時間は維持されるため、給与水準も変わりません。但し、アパレルという業界の特性上、土日祝日に働く従業員の確保が重要であるため、週休3日を平日に限定しています。
日本IBMの導入事例
日本IBMでは、「短時間勤務制度」と呼ばれる独自の仕組みを導入し、週休3日制などを実現しています。一定条件のもとで勤務形態を変更することができ、週4日勤務に加え、週3日勤務が可能です。出産や結婚、介護などと仕事を両立させ、ワーク・ライフ・バランスを充実させることが主な狙いで、同制度のほか、在宅勤務を推奨する「e-ワーク制度」など多様な制度を設けています。
週休3日制のメリットとデメリット
週休3日制には、メリットとデメリットがそれぞれ存在します。しかし、企業文化や従業員の志向性などによって、その度合いは異なるでしょう。企業と従業員にとってのメリットとデメリットを分析し、制度の導入について考えることが必要です。
従業員にとってのメリットとデメリット
従業員にとっての週休3日制最大のメリットは、本業以外の時間を今まで以上に確保できることです。子育てや介護をしている従業員や、副業をしている従業員は、そちらにより多くの時間を割くことができるようになるので、本業以外の時間の充実を図ることができます。
一方、デメリットとしては、1日当たりの労働時間の増加が挙げられます。給与水準を保ったまま仕事を続けたい人は休みが増える分、1日の労働時間を長くしなければなりません。1日の労働時間を変更したくない従業員は、給与の低下を覚悟する必要があるでしょう。
企業にとってのメリットとデメリット
企業にとってのメリットの1つには、離職リスクの低下が挙げられます。日本では、子育てや介護をきっかけに離職する従業員がまだまだ多いので、仕事とプライベートを両立させる制度の導入は離職率の低下につながります。また、休日を増やすことで従業員のリフレッシュを促し、生産性や集中力を高めることも可能です。
一方、1日に出社する従業員の数が変動するため、取引先とのやり取りが滞ったり、仕事が回りにくくなったりするデメリットが存在します。例えば、クライアントから急な依頼があった場合、担当者が週休3日制で働いていると、すぐに対応できないケースが考えられます。また、その日の従業員の確保ができず、経営に支障をきたす可能性もあります。
まとめ
週休3日制に関する理解は深まりましたでしょうか。週休3日制は一部の企業でしか採用されていないため、具体的な成功の事例はまだまだ出てきていません。さらに、制度の種類は多岐にわたるので、どの方法が自社に適しているのかわからない担当者も多いでしょう。
一方で従業員は、休みが1日増えるからといって楽観的になるのは禁物です。制度の選択肢が増えることはメリットになりますが、選択を誤るとその後の生活や働き方などに大きな支障が生じるかもしれません。
企業担当者は社内での制度導入を吟味しながら、従業員は導入後のライフプランなどを考慮して、週休3日制の導入を双方合意のもとで進めることが大切です。