導入事例レポート カスタムコントローラ

株式会社スズケン ケンツ事業部様
医療用具として求められる高いハードルをクリアしたカスタムコントローラ


携帯型の心電計の検査データを解析センターで専門スタッフが解析
株式会社スズケンは、1932年11月に「鈴木謙三商店」として名古屋の地で創業し、70年以上の歴史をもつ企業である。医療用医薬品の卸売事業を中核とし、ほかに医薬品や医療機器の開発製造、さらには全国に広がるネットワークから集まる医療現場の声を活かし、医療支援や健康支援などの医療関連サービス事業も展開している。2006年3月期には、グループ企業全体で、売上高1兆5千億円を超えるという国内でも有数の大企業である。

ロジテックのカスタムコントローラは、同社のケンツ事業部が扱う「コンパクトデジタルホルター心電計※」に記録された心電図データの解析システムに利用されている。

通常、心電図といえば、病院のベッドで横になった状態で検査することが思い浮かぶ。しかし、このような心電図検査は意外にも、わずか10数秒間の心臓の動きを記録しているだけなのである。この間に不整脈などの症状が現れる場合はよいが、1日のうちのわずかな時間にしか症状が現れない患者さんの場合、心電図検査では診断できないことがある。

一方「ホルター心電計」は、体に装着して携帯したまま自由に活動できるうえ、24時間連続で心電図を記録することができる。測定できる波形は一般の心電図の12チャンネルに対して、ホルター心電計では2ないし3チャンネルであるが、日中の活動時や夜間の安静時など日常生活の中で一時的にしか症状が現れない患者さんの検査には大きな威力を発揮する。また、以前はカセットテープを記録媒体として心音そのものを録音していたが、現在では電気的に測定した心臓の動きをデジタル記録してメモリに保存することで小型化を実現。同社のホルター心電計「Cardy(カルディ)シリーズ」はクレジットカードサイズで、薄さ15mm、電池を含めても重量がわずか72gというコンパクトサイズになっている。

ホルター心電計「Cardy(カルディ)シリーズ」に記録されたデータは、「デジタル記録ホルター心電図解析システム」のPCに取り込み、専門の臨床検査技師が解析ソフトを使って解析する。しかし、「デジタル記録ホルター心電図解析システム」は非常に高価なうえ、解析には医師または専門の臨床検査技師が必要なため、以前は規模の大きな病院でしか利用できなかった。そこで同社はホルター心電計を販売するとともに、社内にホルター心電図の「解析センター」を設置し、検査件数が少ない診療所や開業医、さらには大病院からも処理能力がオーバーした場合のデータ解析を受託するサービスを全国で展開している。

ロジテックのカスタムコントローラは、「デジタル記録ホルター心電図解析システム」に組み込まれているPCの最新モデルと、同社が名古屋/東京/札幌で展開する解析センターのサーバおよびクライアントマシンとして採用されている。
※1961年にホルター博士により開発されたために「ホルター心電計」と呼ばれている。

医療検査機器の一部であるPC、そこに求められる高いハードル
「デジタル記録ホルター心電図解析システム」は医療現場に設置されるため、日本の薬事法によって医療用具として承認を受ける必要がある。今回、ロジテックのカスタムコントローラが採用されるまでの間、同事業部では複数の大手メーカーの市販PCや、自社で組み上げたオリジナルPCを採用し、製品の仕様変更のたびに医療用具としての承認を受けてきた。

ところが近年では、EU(欧州連合)で始まったCEマーキングなどの品質管理に関する指令の強化が日本の製品にも影響を及ぼすようになった。日本でも薬事法の改正により、2007年4月以降は、電磁波が他の医療機器へ与える影響を規制するEMC試験への適合が、医療用具として承認される必須条件となるなど、承認条件が従来よりも厳しくなってきた。

同社はPCメーカーではないため、自社組み立のオリジナルPC全体をひとつの製品として認めてもらえない可能性がある。最悪の場合は部品レベルでEMC試験を受け、承認を取る必要性が発生するなど、多くのリスクが考えられるため、再び大手海外メーカーのPCを採用する方向で検討することとなった。

しかし、採用を予定していた海外メーカーのPCの場合、3年間のメーカー保証は受けることができても、4年目以降の保証がないという問題があった。「PCの世界では3年で製品を更新するのは普通でも、医療の世界では、機器の更新に5年以上かかるのが一般的であり、それ以上の長期に渡っての部品保証が欲しい。」と同社のケンツ事業部 副部長兼情報解析課統轄課長の田中基博氏は語る。

過去にメーカー製PCを採用していた時代に、PCが故障しても交換部品がないために修理できず、同等レベルの新品と無償で交換しなければならなかった苦い経験もあった。さらに、3か月から半年という短期間でモデルチェンジするPCメーカーのマシンでは、医療用具としての承認が間に合わないかもしれないという心配もあった。そこで取引のある代理店から、これらの問題を解決できる製品として紹介を受けたのがロジテックのカスタムコントローラであった。

医療用具としての条件と客先からの要望をクリアしたロジテックのカスタムコントローラ
同社では、ロジテックのカスタムコントーラであれば、 3年間保証だけでなく、1年以上の同一モデルの提 供や、3年目以降も部品の供給を受けることが可能 であり、さらには工業用をはじめ、高い品質や信頼性 を要求される法人向けのコントローラとしての幅広い 実績があることがわかった。そこで同社の開発部門 およびメンテナンス部門の担当者が、ロジテックの自 社工場の生産ラインや検査設備などを実際に見学 して、最終的にこれなら同社の要望を満たすカスタム コントローラを生産できると確信し、採用が決定された。

ロジテックではカスタムコントローラのさまざまな検 証や試験、そして組み立てまでを長野県伊那市にあ る自社工場を中心に行っており、今回のEMC試験 のような各種テストについても社内の検査設備など を使って迅速に検証できる体制を整えている。

また、ロジテックのカスタムコントローラは、カスタマ イズ性が高いことも特長のひとつである。当初、同 社が採用を予定していた大手メーカーでは、仕様変 更が可能な内容が限られるためカスタマイズの自由 度が低く、結果的に同社が要求する条件に応えられ ない部分が多くあった。一方、ロジテックのカスタム コントローラは、その点でも自由度の高さを発揮した。 例えば医療現場ではメディアの信頼性の高さから、デー タの保存や移動に現在でもMOメディアが多く使わ れている。また記録型DVDメディアについては、メディ ア自体が保護されているカートリッジタイプのものが 利用されることが多い。ところが大手メーカーのPC では、HDDやメモリの容量などはカスタマイズできても、 内蔵タイプのMOドライブやカートリッジ対応のDVDRAM ドライブを組み込むといった特殊な仕様変更ま では簡単に対応してもらえない。そのうえ、これらのス トレージデバイスをPC本体に内蔵した状態で製品 化すると、製品ごとに医療用具としての認証が必要 になる。このような場合でも自社工場で事前に十分 な検証をしてから承認申請できるなど、製品の目的に 応じて細かな対応ができることがロジテックのカスタ ムコントローラのセールスポイントとなっている。

解析センターの業務効率化やこれからのグローバルな事業展開にも貢献
今回、ロジテックのカスタムコントローラは、「デジ タル記録ホルター心電図解析システム」向けのスタ ンドアローン型のほか、同社の解析センター向けのサーバおよびクライアントマシンとして使われるネットワー ク型のものも導入されている。

解析データを取り込むサーバマシンは、同社からの 「丈夫で高い処理能力」という要求に対応するため、 Intel(R) CoreTM 2 Duoプロセッサに2GBの大容量メ モリ、連続稼働に耐える国内メーカーのノンストップ 電源とバックアップ用のバッテリーを搭載した高性 能かつ高信頼性を実現している。一方、解析データ を編集するクライアントマシンは「デジタル記録ホルター 心電図解析システム」向けと同等のマシンスペック にネットワーク機能が追加されている。

これまで解析センターのマシンはスタンドアローン 型であったため、臨床検査技師がデータを分析する 際には、自分が担当する患者さんのデータが入った マシンの前に移動して24時間分の心電図をプリント アウトし、そのあと自席に戻ってチェックする必要があっ た。もしデータの拡大や編集が必要になった場合は、 再びデータが入ったマシンの前に移動してソフトウェ アを操作する。しかし、1台のマシンに複数の患者さ んのデータが入っているため、他の検査技師と作業 がぶつかる場合があり、そのような時は待機しなけれ ばならず、効率的な運用ができなかった。

今回、マシンがネットワークで結ばれたことにより、 検査技師ごとに1台のクライアントマシンを占有でき るようになった。サーバからネットワーク経由でデータ を取り込めば、あとは自分のクライアントマシンで、プ リントアウトから拡大、編集などすべての業務が可能になり、待ち時間というムダを省くことができた。

また、解析センター同士もデータセンターを中心にネッ トワークで結ばれたことで、データセンターに集められ たデータを名古屋/東京/札幌の各解析センターで業 務を均等化できるようになり、年間5万件以上のデー タを解析するセンターの効率的な運用が可能になった。 こうしたネットワーク化は、解析センターの業務シス テムのさらなる進化を予感させる。名古屋/東京/札 幌それぞれの地域で解析する特長を活かしながら、 労働力にゆとりのある地方での業務比率を増やすこ とで、人件費の抑制と人材の確保が容易になる。また、 田中基博氏は解析センターの将来像として「いずれ はヨーロッパ、アジア、アメリカに拠点を置き、時差を 利用しながら8時間ずつ24時間体制で解析をするよ うなことも考えたい」と語る。これにより、常に昼間の 解析作業を可能にすることで、深夜勤務によるミス や人件費を減らし、安定した労働力を確保できる。こ うした事業のグローバル化にも新しいロジテックのカ スタムコントローラが貢献することが期待される。