導入事例レポート カスタムコントローラ

丸紅マシナリー株式会社様
カスタムコントローラの採用により安定した動作を実現し、保守コストの削減に成功


わずか十数年で激変した印刷業界アナログ主導からデジタル主導の世界へ
「丸紅マシナリー株式会社」は1969年に前身の会社が設立された。その後、丸紅グループの一員となり、1988年に現社名に変更された。オンデマンド 印刷システムや、場所を取らない小型の印刷システムの販売に強みを持ち、東京都千代田区の本社を中心に8つの営業拠点を全国に展開している。現 在は、印刷データのXML化やデータベース化といったソリューションや、印刷業界向けのセキュリティソリューションなども新たなビジネスとして展開している。

同社のフィールドである印刷業界は、PCの普及により、この十数年で劇的な変化を遂げた。かつては印刷物を仕上げるのに、職人による手間と時間のか

かる工程を必要とした。まず、手書きの原稿を写植機で印刷用の写植文字にする。次に印画紙に出力された写植文字を手作業でレイアウト用の台紙に貼り付けて「版下」を作成。さらに版下を製版フィルムに撮影して、それを「刷版」と呼ばれる印刷機にかけるための原版にし、最後に印刷機にかけて、ようやく印刷物が完成した。

それがMacintoshやWindowsRといったPCの普及で一変していく。原稿はPCで入力したテキストデータとなり、テキストデータをDTPソフト(組み版ソフト)やデザインソフトを使って編集するだけで「版下データ」が出来上がる。これで写植による版下作成という工程がなくなった。版下データはすぐさま「セッター」と呼ばれる装置で製版フィルムに出力されるようになり、版下を撮影する工程もなくなった。さらに最近では「CTP(Computer to Plate)」というシステムが主流になり、版下データからダイレクトに「刷版」が出力され、製版フィルム出力という工程さえもなくなっている。ま た、少部数印刷に適したオンデマンド印刷では刷版そのものがなく、ワープロソフトの原稿をプリンタで印刷するのと同じような感覚で印刷されるようになった。このように印刷業はアナログ主導から、デジタル主導の世界へと一変したのである。

PCを使用することにより新たに生まれた大きな問題点
こうしたデジタル印刷に欠かせないのがデータを処理したり、印刷機器をコントロールするためのPCである。だが、印刷機器にPCが深く関わるようになると新たな問題が発生するようになった。

ひとつは、市販のPCを採用したため、安価で導入しやすい反面、数ヶ月でスペックが変更されるので、動作条件が厳しいソフトウェアに対応しづらいという点である。

例えば、版下データを前述の「CTP」で刷版を出力する場合、PCにインストールされた「RIP(リップ:Raster Image Processor)」というソフトウェアを使って、版下データを刷版用のデータに変換処理する。このRIPソフトは1バイト言語圏である海外製品を2バイト言語圏の日本語環境用にカスタマイズしているため、動作条件が非常にシビアである。PCのハードウェアのモデルチェンジやOSのアップデートだけでも、たちまち動作が不安定になり、最悪の場合は動作しなくなってしまう。

そこで、PCのスペックが変更されるたびに動作検証が必要になった。これには時間と労力がかかるだけでなく、不具合が見つかればハードウェアやソフトウェアの変更が必要となり、当然、それだけ余分なコストが発生することになった。

もうひとつは、システムが複雑化したことで、トラブルが発生したときの原因の特定が難しくなったことである。

アナログ時代に使用されていた機器は、多くがスタンドアローン型の専用機だったので、トラブルが発生しても、原因の切り分けが比較的容易であった。しかし、デジタル化により各機器がPCでコントロールされ、それらがネットワークでつながるようになると、システムが複雑化し、「トラブルの原因がどこにあるのかを簡単に究明できなくなってしまった。」と丸紅マシナリー株式会社 商品開発チーム 市原担当課長は振り返る。トラブルには、PCのスペック変更が原因となるケースもあり、PCの動作の安定がいっそう求められた。原因が特定できなければ、トラブル要因と対策のノウハウを蓄積することができず、保守に多大な時間とコストを要することにもなる。そしてなにより、お客様に動作の安定した製品を提供できなくなる。

そこで丸紅マシナリーでは、これらの問題を解決するために、できるだけ長期に渡って同じスペックのハードウェアに、安定感のあるOSがインストールされた独自仕様のPCを用意することにした。

ロジテックのカスタムコントローラを導入したことで安定した動作を確保
市販PCを作るメーカーに小ロットで長期に渡って供給可能な独自仕様のPCを作ってもらうことは現実的ではない。そこで丸紅マシナリーでは独自仕様のPCを長期的に供給してもらえるベンダーを探しはじめ、2003年にようやく出会ったのがロジテックの「カスタムコントローラ」であった。

ロジテックのカスタムコントローラは、あらかじめラインアップされているベーシックモデルをベースに、クライアントの要望に応じて各種パーツのアップグレードやオプションを追加できる法人向けのオーダーメイド仕様のコントローラである。クライアント側で具体的なスペックを提示できない場合でも、希望条件や使用条件、現在使用中のPCの問題点などを、ロジテックのカスタムコントローラ担当者に相談すれば、ロジテックの20年を超えるPC周辺機器メーカーとしての経験とノウハウに基づいた最適なカスタムモデルを提案してもらうことが可能である。また、要望があれば、ベーシックモデルにとらわれず完全オリジナルのコントローラを作り上げることも可能だ。

ベーシックモデルには、マザーボードなどを1〜3年間の長期に渡って供給できる製品もあり、丸紅マシナリーは、動作の安定したチップセットを搭載し、長期供給が可能な国産マザーボードを採用したベーシックモデルに、CTP本体とコントローラを接続するSCSIアダプタを追加し、OSには安定感があることからビジネスソリューションで評価の高いWindows(R)2000 Professionalを搭載したカスタムPCを作り上げた。

こうして登場した初代モデルは、OSをWindows(R)Server 2003に変更した第2世代が登場するまでの数年間は、仕様を変更することなく安定感のある動 作で同社の製品を支えることとなった。


間接費の削減に成功しただけでなく、お客様にも喜ばれるシステムへ
カスタムコントローラの導入は、さまざまなメリットを生み出す。市販のP Cでは余分な機能(例えば5.1chサラウンドやゲーム端子)や余分なソフトが含まれることで、トラブルが発生する原因を増やすことになりやすいが、カスタムコントローラなら不要なオプションを省くことができるので、要求される機能だけに特化したシンプルなコントローラを作ることができる。また、長期的に同じスペックを持つコントローラを採用することで、ソフトウェア開発スタッフがコントローラのモデルチェンジやOSの変更に伴う対策的なバージョンアップに時間を費やす必要がなくなり、長期的なスケジュールで次期バージョンの開発などに専念できるようになる。

保守面でも、長期に渡って同じモデルの供給を受けることで、コントローラ本体が原因となるトラブルを大幅に減らせ、対策や処置の体系化も容易になる。丸紅マシナリーの場合でもソフト/コントローラ本体/印刷機械というように、今までよりも原因の切り分けを明確にできるようになったことで、対策ノウハウを体系的に蓄積しやすくなり、保守スタッフが現場で復旧作業に費やす時間も短縮することに成功した。

こういった開発面や保守面でのメリットは、人件費が大半を占める開発コストや保守コストの削減につながり、結果的には市販のPCを採用するよりも、大きなコストメリットを生み出すことにも成功した。

カスタムコントローラの導入よるメリットはそれだけにとどまらなかった。丸紅マシナリーの得意先である印刷業は印刷機械の稼働率が売上や利益に直結する世界であり、トラブルでシステムが停止してしまうと大きな機会損失になる。そのため1分1秒でも早くトラブルを解決し、システムを稼働させなければならない。市原課長によると「カスタムコントローラの導入は、製品全体のトラブルを減らせただけでなく、対策ノウハウが蓄積できたことで、万一トラブルが発生しても短時間での復旧が可能になり、システムの停止時間が短縮され、お客様にたいへん喜ばれるようになりました。」という。そしてこのことは丸紅マシナリーにとって販売面でのさらなるアピールポイントともなった。

丸紅マシナリーでは、カスタムコントローラのメリットを実感し、今後は同様のシステムを使用している他の機器にもロジテックのカスタムコントローラの採用を検討し、積極的に取り入れていく方針である。また、新たなるソリューションの展開として印刷業界向けsのセキュリティシステムの導入を提案している。

これからはネットワークセキュリティを含めたトータルソリューションの展開も
小・中規模の印刷業者は高齢化や後継者不足などから、デジタル化による新たなる設備投資をやめ、廃業する事業者も多い。一方、デジタル化の時代に 生き残るために積極的に最新のシステムを導入し、事業の拡大に努める事業者も多くある。デジタル化に積極的に取り組む多くの事業所では、インターネットや社内ネットワークの利用頻度が高くなっている。しかし、中小規模の事業者ではネットワークを導入しているからといって専門の管理者を置くことはむずかしい。結果的にセキュリティ対策が不十分になり、「知らない間にウイルスメールを客先に送ってしまい、取引停止になってしまった会社もあると聞きます。」と市原課長は話す。

そこで丸紅マシナリーでは、積極的にデジタル化、ネットワーク化を進める中小の事業者に向けて、インターネットの出入り口で、ウイルスや不正アクセスを検知/防御する「リアルタイム・セキュリティシステム」の展開を始めており、今後はセキュリティやネットワークシステムを含めた印刷業界向けのトータルシステムソリューションの展開を進める計画だ。