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被災地の健康管理に貢献!
KDDI研究所が開発した
遠隔健康管理支援システム
“メディックケアステーション”
端末にロジテックのタッチパネルPCを採用!
未曾有の大災害の発生。企業の責任として被災地の支援に取り組む
2011年3月11日、誰もが忘れられない大災害「東日本大震災」が発生した。災害直後の混乱から復興へと向かう中、多くの企業が復興支援の取り組みを始める。KDDIグループにおける研究開発の中核である「株式会社KDDI研究所」は、これまでにCT画像を携帯電話で高速伝送し閲覧するシステムや低遅延高品質なテレビ電話と血圧・体重データの自動登録機能を持った遠隔健康指導システムなど、健康・医療分野で活用できる技術の研究開発を長年に渡って行ってきた。震災後、そのノウハウを活かした復興支援を実施するため、いくつもの被災地域に対して提案を行ってきた。その中の活動の一つとして、岩手県宮古市での取り組みがあった。「被災直後より復興支援活動を開始している、当社と長年に渡って共同研究等で関係していた岩手県立大学の先生に何らかの支援ができないかと相談したところ、当時、避難所となっていた『グリーンピア三陸みやこ』に駐在していた田老仮設診療所の医師をご紹介いただきました。」(株式会社KDDI研究所 営業企画グループ 山中厚子課長)。そして、医師との相談の結果、KDDI 研究所が開発した遠隔健康管理支援端末「メディックケアステーション」を仮設住宅の住民の健康管理のために導入することが決まった。このシステムは、血圧などの個人のバイタルデータを自己管理したり、遠隔地にいる医師がチェックすることで利用者の健康管理を支援するというものである。「グリーンピア三陸みやこ」の周辺には、津波で大きな被害を受けた宮古市田老(たろう)地区の住民が暮らす400世帯規模の大きな仮設住宅があるが、すでに施設内に仮設診療所があることから、そこから距離のある樫内(かしない)地区の仮設住宅にこのシステムを設置することになる。当初は仮設住宅内の集会所に設置しようと考えたが、自由な利用ができないことから思案していたところ、隣接する社会福祉法人 翔友 就労継続支援B型事業所「みやこワーク・ステーション」内に、喫茶店があることを知る。ここは仮設住宅に近いうえに、広々としてくつろぎやすく、人々が集まりやすい環境であった。この場所であれば、仮設住宅の住民が徒歩で通うことで軽い運動にもなり、コミュニティの場所として精神的サポートにつながるほか、樫内地区の住民にも利用できるようにすることで、交流のきっかけとしても期待できる。そこで同事業所の施設長兼サービス管理責任者 及川耕一氏に事情を説明したところ、快く了承をいただき、喫茶店に入る手前のロビーの一角に端末を設置することになった。「 みやこワーク・ステーション」は、平成19年4月、障害者の自立支援法に基づいて設立された施設で、35人の利用者が毎日通っており、企業から依頼された作業、自家焙煎のコーヒー作り、ロールケーキ作りなどに取り組んでいる。2011年11月に端末が設置され、仮設住宅と地区の住民、施設の利用者と職員がおもに利用している。
気軽に自分の健康をチェックできる「メディックケアステーション」
 「メディックケアステーション」は、災害直後、避難所、診療所にもなった岩手県立宮古北高校の保健室にも設置されている。みやこワーク・ステーション同様、体重と血圧を計ることができる。高校生の血圧を日常的に記録することは日本では例がない。
健康管理支援端末「メディックケアステーション」は、実証実験の後、2009年から東京都奥多摩町で事業化され、新たな実証実験とともに現在も研究が続いているシステムである。みやこワーク・ステーションに導入されているシステムでは、あらかじめ住民などに付与されたIDカードを使って、体重と血圧を計り、その場で測定結果を確認できる。定期的に測定したもらうことで、自らの健康管理に役立てようというものである。また通信回線を使って「グリーンピア三陸みやこ」にある仮設診療所の医師が必要に応じて、対象者の体重や血圧の変化を確認することもできる。システムは、パソコンに不慣れな高齢者にも簡単に使えるように、音声ガイダンスとタッチパネルを採用している。IDカードをカードリーダーにかざすと、画面上のかわいいキャラクターが音声でやるべきことを知らせてくれる。まずは体重計に乗るように指示があり、次に血圧を計るように指示がある。血圧の測定が終われば、測定結果が画面に表示される仕組みだ。操作はタッチパネルのボタンを押すだけの簡単さだ。測定結果はサーバに保存されるので、当日の結果だけでなく、1週間/1か月/1年といった単位で過去のデータをグラフにして確認することができる。また、結果をプリントアウトして自宅に持ち帰ったり、かかりつけ医に見てもらうという使い方もできる。「みやこワーク・ステーションのシステムでは、体重と血圧という2種類のバイタルデータを管理していますが、データの取り込みが可能なデバイスさえ用意できれば、さまざまにカスタマイズできます。奥多摩町は現在、歩数計と連動させて健康管理をする実証実験をしています。」(株式会社KDDI研究所 健康・医療 ICTグループ 阿部幹雄研究主査)。また体組成計に変更することで、体重だけでなく体脂肪率などのデータを取り込むこともできる。「他にも非接触通信の規格であるNFCの機能を埋め込んだ血糖値測定機とリーダーを組み合わせることで、測定結果を取り込むなど、さまざまな実験を進めています。」(阿部幹雄研究主査)。画面についても利用者に親しみやすいようにアニメーションを使用しているが、地域性を重視したキャラクターにするなどカスタマイズも可能である。
国内メーカーという安心感が第一の採用理由。ロジテックのタッチパネルPC
KDDI研究所では、このシステムの開発にあたって、パソコンに不慣れな高齢者の方の利用が多いことが考えられることから、実験段階からキーボードやマウスを使用せず、タッチパネルの利用を前提としていた。当時は、端末にタッチパネルを使ったユーザーインターフェイスを採用しているものは少なく、画面が小さいうえにコストも高くついたが、実験を進める中で、タッチパネルによる操作の将来性を確信することとなった。ところが、使用していたタッチパネルPCが調達できなくなるトラブルが発生してしまう。タッチパネルPCのような特殊な製品は台湾など海外メーカーがOEM元となって供給している製品が多く、代理店を通じて製品を輸入した場合、日本国内でのバックアップやサポートを十分期待できない不安があった。代替品を探す中で、ロジテックが販売元となっている製品を見つける。国内周辺機器メーカーであるロジテックであれば、タイムリーにサポートを受けることができるうえ、カスタマイズなどのやり取りも容易であるという安心感がある。これが最大の理由となり採用が決まった。もうひとつ機能面では、病院や家庭内で使用することを考慮すると、静音性を重視する必要があり、「ファンレス」は必須であった。そしてロジテックであれば、その要望にマッチした製品を提供でき
ることも優位点となった。ロジテックでは、このようなタッチパネルPCを、タイムリーに供給できるように、標準化したモデルを在庫で用意するほか、顧客の要望に応じてカスタマイズされたモデルを設計し、提供できる体制を取っている。老舗周辺機器メーカーとして長年蓄積されたノウハウを持つだけでなく、海外調達の製品でも、ロジテックが窓口となって国内で検証・サポートしているので、顧客は安心して製品を選択することができるのだ。
誰もが気軽に使えるというシステムがひとりの大切な命を救った
みやこワーク・ステーションのシステムの利用者には、血圧計が津波で流され利用できなくなった住民もいて、この端末のお陰で無事に血圧の管理ができるようになったと感謝の声も返ってきている。医師からは、住民が診療に訪れた時に平時のバイタルデータを詳しく知ることができ、診察の参考になるとの言葉もいただいている。及川氏によると、導入後は、「おもに高齢の女性の方ですが、ここで販売されているパンを買うついでに血圧を計り、喫茶店で働く障害者の方と言葉を交わすなどの交流も広がっています。会話をすることで障害者の心のケアにもつながっています。」と、この施設に通う障害者の方の支援にも役立っている。そして今年の5月、「みやこワーク・ステーション」では、このシステムの目的である「健康管理支援」が役立つ大きな出来事があった。高血圧の持病を持つ男性職員が自身の体調の異変を感じ、システムで血圧を計ったところ、非常に高かったため、病院へ向かおうとしていたところ、心筋梗塞で容体が急変、救急車で運ばれたのち、ドクターヘリで盛岡市内の病院に移送され、無事一命を取り止めることができたのだ。この出来事は、地域の誰もがいつでも自由に利用できる健康管理支援システムという「メディックケアステーション」の目的が見事に活かされたケースだ。そしてこのようなシステムが地域に広がれば、より多くの人の命が救われるのではなかろうか。現在、「メディックケアステーション」は、他の被災地において病院を中心とした仮設住宅住民の健康見守り活動支援のための導入準備が進んでいる。また、将来的には、より幅広い人に利用してもらうために、体組成計のデータ取得など多様なデバイスに対応したり、小型化やスマートフォンとの連携により、端末を家庭に持ち込んで気軽に測定できるようにすることが計画されている。さらには、地域の集会所や学校などにシステムを設置することで人が集まり、新たなコミュニティが形成されるため、人々の心のケアへの寄与も期待されている。
遠隔健康管理支援端末「メディックケアステーション」導入のメリット
- 「利用者の健康意識の向上」
- 「住民の健康増進」
- 「医療健康データ蓄積による診察支援」
本件は、株式会社KDDI 研究所、岩手県立大学、有限会社ホロニック・システムズによる共同推進事業です。
株式会社KDDI研究所
http://www.kddilabs.jp/
設立:1998年4月 所在地:埼玉県
1953年に国際電信電話株式会社の研究部として発足、その後2001年に株式会社KDDI研究所として新たにスタートする。固
定通信と移動通信、さらには放送との連携を考えるなど、幅広いテーマで世界トップレベルの情報通信技術の研究開発を進めるなど、さまざまな取り組みをしている。 みやこワーク・ステーション
http://www.iwate-selp.net/068/index2.html
設立:2008年4月 所在地:宮古市田老字西向山
社会福祉法人 翔友が運営する就労継続支援事業所。地域に根ざしたあたたかい施設を目指している。社会参加へつながる作業訓練により、働く喜びや自立へとつながることを目的とする。互いの障害状況を理解しながら明るく生きがいを持って通える施設作りを進め、障害者がひとりでも日常生活を送れるような援助を行っている。
 今回、取材に応じていただいた、左から株式会社KDDI研究所 健康・医療 ICTグループ 阿部幹雄研究主査、株式会社KDDI研究所 営業企画グループ 山中厚子課長、社会福祉法人 翔友 就労継続支援B 型事業所みやこワーク・ステーション 施設長兼サービス管理責任者 及川耕一氏。
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カスタムコントローラ導入レポート 株式会社KDDI研究所 様 |
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