ホテルWi-Fi導入レポート

ホテルWi-Fi導入レポート【富士屋ホテル 様】
130年以上の伝統と歴史を守りながら 時代のニーズを取り込む「富士屋ホテル」エレコムの小型ルーターを使って、無料Wi-Fiサービスを全室に導入!

明治11年開業、日本発の本格的な西洋式リゾートホテル
皇室の方々や多くの著名人も宿泊する「富士屋ホテル」

古くは東海道の宿場町として栄え、明治以降は保養地、観光地として多くの人を集めてきた箱根で、箱根七湯のひとつ宮ノ下温泉にあるのが明治11年(1878年)7月に開業した「富士屋ホテル」である。日本初の西洋風建築を取り入れた本格的リゾートホテルで、東京や横浜に近く利便性がよいため開業当時から多くの来日外国人で賑わいをみせた。

富士屋ホテルの歴史を知ることができる
資料館もホテル内にある。

明治16年の「宮ノ下大火」の類焼によりホテルを焼失するなどの苦難を乗り越え、明治24年には、現在もホテルの顔となっている本館を竣工する。本館竣工の際には、火災の安全を考慮し、火力を使った自家発電(のちに水力発電に変更)による照明を導入するなど、常に時代の先を読み、新しいものを取り入れてきたホテルだ。その後、大正、昭和と激動の時代を経験し、戦後の一時期は連合国軍の施設として使われ、マッカーサーやアイゼンハワーも滞在。昭和29年8月に、ようやく一般営業を再開した。

本館をはじめとする多くの建築物が、文化庁の登録有形文化財や経済産業省の近代化産業遺産に登録されている。昭和天皇・皇后様をはじめとする皇族、海外からの国賓、さらにはチャップリンやヘレン・ケラー、ジョン・レノン一家といった多くの著名人が宿泊・滞在している。

現在では、箱根および周辺観光の宿泊地であるとともに、その時代ごとに西洋と日本の文化を融合させた歴史ある建築物を楽しむために多くの宿泊客が訪れている。宿泊以外にも、メインダイニングの格天井に描かれた絵画や彫刻を眺めながら伝統のフランス料理を堪能したり、本館ラウンジの四季折々の景色を眺めながらゆったりとティータイムを過ごすなど、ホテルの雰囲気を味わうことができる。

そんな伝統と歴史がある富士屋ホテルが、2014年春、全148室の客室にエレコムの小型ルーターを導入し、無料Wi-Fiサービスを開始した。今回は、富士屋ホテル 宿泊課 課長 折田道明様に、無料Wi-Fiサービス導入の経緯と、貴重な建築物を損なうことなく、どのように導入工事がおこなわれたかについてお話を伺った。

最初に導入したインターネットサービスは
テレビシステムの回線を使った有線LAN

インターネット接続サービスを最初に導入したのは2007年。有線LANで接続するシステムだった。ビジネスユースは少なく、当時はお客様からのインターネット接続のニーズは高くはなかったが、館内テレビシステムの改修に合わせてネットワークを整備しようという話が持ち上がったのがきっかけであった。「客室へのテレビ回線を使ってインターネットへ接続できるシステムがあるという情報を見つけ、業者を選定して導入しました。」(折田様)。システムとしては、大型テレビの裏側にあるテレビシステムの端末装置から、テレビ台の右サイドに設置した有線LAN用のモジュラージャックまでLANケーブルを延長したものだった。これにより全客室に有線LANによるインターネット接続サービスが提供されるようになった。利用者はパソコンの有線LANポートとLANケーブルでつなぐだけで自由に使うことができた。

やがてiPhoneやiPadの登場によりスマートフォンやタブレットといった手軽に使える情報端末が活躍する時代になると、これらの端末を所有する宿泊者から、客室でWi-Fiサービスが使えないかという問い合わせがフロントに来るようになった。問い合わせの頻度は徐々に増えていったが、その都度、客室の有線LANで接続していただくか、ロビーで有料のインターネットを利用していただくようお願いしていた。

そんな中、2014年に予約・宿泊管理のホテルシステムが更新時期を迎えることになり、2012年にその準備が始まった。新システムは時代に合わせてデータをクラウド化し、グループホテル全体でデータを共有管理するもので、クラウド化にふさわしいインフラとして光回線を導入することが計画された。このタイミングでインターネット接続サービスのWi-Fi化も検討がなされた。当初はそのひとつとして、複数ある建物を光回線で結んでエリアごとに無線APを配置し、パスワードのないフリースポットのような設備が提案されたが、光回線の敷設工事の費用があまりにも膨大だったので実現に至らなかった。

小型ルーター20台での貸し出しサービスを開始
好評だったが、スタッフの日常業務の障害に

具体案が決まらない中、2013年7月にグループ全体でエレコムの小型ルーターを導入する動きがあり、富士屋ホテルでも貸出用に20台ほどの小型ルーターを用意することになった。この「貸し出しサービス」は、貸し出した小型ルーターを客室の有線LANのモジュラージャックにLANケーブルで接続してもらうことで、有線LANをWi-Fi化するというものだ。

「貸し出しサービス」が開始されると、海外からの宿泊客はもちろん国内の宿泊客からも利用希望が予想を超え、ほぼ毎日20台すべてが貸し出されるほどであった。しかし一方で、貸出機の設定や使い方がわからない宿泊客のために、ホテルスタッフが客室まで出向いて対応することが多くなった。富士屋ホテルはフロントのある本館を中心に、花御殿、西洋館、フォレスト館と客室が複数の建物に別れて存在する大型リゾートホテルである。問い合わせを受けるたびにスタッフがフロントと客室の長い距離を往復し、さらには不具合が生じた場合の対応にもスタッフを割かねばならず、日常業務に支障をきたすほどになった。「現場では、サービスを止めたいという声まで上がってしまいましたが、それでは本末転倒です。ならば全客室にあらかじめ設置しておくのが一番ではないかという話になりました。」(折田様)。こうしてエレコムの小型ルーターを全室に導入する話へとつながっていった。

伝統のあるホテルの雰囲気を壊さず
現場に応じた設置工事を実施

無料Wi-Fiサービスの導入にあたっては、有線LANの設備がすでに全客室にあるため、小型ルーターを設置するだけなら、ホテルの施設スタッフで作業することも可能であった。しかし「スタッフによる手作り感が出るよりも、プロに任せたほうが仕上がりが良いだろうと、工事も含めてエレコムさんに依頼することになりました。」(折田様)。エレコムでは、営業マンとWi-Fiサービス専門の担当者が折田様からの要望を聞き、現地調査をしたうえで、次のような点にこだわりながら設置工事を実施した。

ひとつはSSIDとパスワードの分かりやすさだ。工場出荷時のパスワードは13桁のランダムな英数字であるため、「貸し出しサービス」時代にお客様の入力ミスによるトラブルが頻繁に発生し、スタッフの負担となっていた。エレコムでは法人様向けのサービスとして、ご要望に応じたSSIDとパスワードをオリジナルで設定して出荷することが可能だ。今回は宿泊客に分かりやすいSSIDと、8桁のパスワードを客室ごとに設定した。

もうひとつは、配線処理の見栄えについてだ。客室がある建物の多くが登録有形文化財であり、壁などへの加工はできず、すでにテレビシステムの端末装置はテレビの裏側に、有線LANのモジュラージャックはテレビ台の右サイドに、目立たないように設置されていた。そこに小型ルーターを追加し、LANケーブルを接続し直したわけだが、ケーブル類はきれいにまとめ、清掃作業にも影響のないように仕上げた。

また今回は、小型ルーターとLANケーブルがテレビの裏側で露出した状態になるため、清掃時にコネクタが抜け落ちたり、いたずらでケーブルを抜かれたりしないように、「セキュリティロック付きLANケーブル」を採用した。これによりLANケーブルの抜け落ちはもちろん、小型ルーター本体もLANケーブルを抜いて持ち出すことができなくなる。エレコムでは壁面に固定する「盗難防止ホルダー」も用意しているが、今回のように施設への工事ができない場合は、「セキュリティロック付きのLANケーブル」は有効な手段である。

工事は午前11時から午後2時の間を基本とし、空いている客室については午前9時から午後5時の間で実施。ホテルの営業を制約することなく、全148室をわずか3日で完了した。

日進月歩のネットワークシステム
将来のインフラまで考えてエレコム製品を採用

全室に無料Wi-Fiサービスが導入されて現場にどのような変化があったのだろう。「『貸し出しサービス』の頃は、現場スタッフの日常業務に支障が出ているという話にプレッシャーを感じることもありましたが、全室導入後、そのような話はすっかりとなくなりました。」(折田様)と状況が良い方向に激変したようだ。

今回の無料Wi-Fiサービスの導入案件には、エレコムを含め3社ほどの候補があったとのことだが、では、その中からエレコム製品の採用が決まったのはどのような理由だったのだろう。

ひとつは費用面である。既存の有線LAN設備を使えることもあり、前述の光回線を新たに敷設してエリアごとに無線APを設置するシステムに比べて、見積金額が約1/6だった。近い将来、テレビシステムを含め大規模な改修も検討されており、今回はなるべく費用をかけずに導入したいという希望とも一致した。

もうひとつの大きな理由は、無線LANに関する実績だ。エレコムは周辺機器を扱い始めて25年以上、PC向けのネットワーク機器においては他の周辺機器メーカーが扱い始めたWindows 95登場よりもさらに早く、MS-DOS時代から20年以上の実績とノウハウの蓄積がある。無線LANは日進月歩で技術の進む世界なので、エレコムであれば、この先も継続的なインフラ作りができると判断されたのだ。

富士屋ホテルといえば、その歴史ばかりに目が向きがちだが、常にお客様が快適に利用できるインフラ作りを考え、新しい設備を取り入れようとしている。今回のWi-Fiシステム導入においても「上層部から導入が遅すぎる、急ぐようとお叱りを受けました。」「最近は意外と高齢のお客様からもWi-Fiサービスについて尋ねられることがあります。歴史と伝統を守るだけでなく、時代のニーズを敏感に読み取って変わってきたことが、今に繋がっているのかも知れません。」(折田様)と話す。歴史と伝統だけではなく、今の時代を見極めるホテルの姿勢こそが、これからも多くの宿泊客を魅了していくのかも知れない。

登録有形文化財、近代化産業遺産の建造物に傷を付けず、
既存設備を活かしながら低コストでWi-Fiサービスを導入!

富士屋ホテル様の場合

導入前の問題点

  • 近い将来、設備の全面改装を予定しており導入コストを抑えたい。
  • 複数の客室をカバーする大型無線APは幹線工事費が高すぎる。
  • 貸出機を導入したがフロントスタッフの負担になっている。

エレコムの小型ルーター導入により問題解決

  • 小型ルーターにより既存設備を活かし導入コストを大幅削減。
  • 導入費用を抑えることができ、全室導入を実現。
  • 全室導入により、フロントスタッフの負担が激減。
  • エレコム製アクセサリーにより、建物を傷付けず設置できた。
既存設備により、客室内のわずかな工事でWi-Fiを導入

既存の館内TV 施設の端末と有線LANモジュールの間に、エレコム製小型ルーターを取り付けただけで工事完了。天井や壁などを開けることなく、簡単な工事で高速なWi-Fiサービスが全室に導入された。

※館内図は工事内容を分かりやすくするために作成したイメージ図です。実際の館内配置とは関係ありません。

伝統と歴史ある客室に、工事による手を加えず小型ルーターを設置!

花御殿 スイート ~菊~

花御殿で最も荘厳な雰囲気を持つ特別室。 大きな窓からは本館・西洋館と宮ノ下の町並みが望める。部屋の中には至る所に彫刻が施されており、重厚な造りの格天井と細部まで造り込まれた彫刻をじっくりと楽しむことができる。各国の著名人の方々から愛され続けてきた部屋でもある。部屋のお風呂には宮ノ下の天然温泉を引いる。

部屋の角に置かれたテレビ。テレビの背面に目立たないように設置された館内TV端末と小型ルーター。テレビの右サイドにあるのは有線LANのモジュラージャック。

本館 スーペリアルツインチャップリンルーム

富士屋ホテルの歴史を感じる広々とした部屋。 大きな窓からは、気持ち良い光が差し込む。部屋のお風呂には宮ノ下の天然温泉を引いている。写真の部屋はかつてチャーリー・チャップリンも宿泊しており、それをイメージするかのように、壁には帽子とステッキの飾りがある。

こちらもテレビに隠れるように設置されている。清掃時にケーブルが抜けないようロック式コネクタを採用。小型ルーターにロックできるので、いたずら防止やルーターの盗難防止にも役立つ。

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富士屋ホテル株式会社
創業:明治11 年7月15日 / 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下
中核となる富士屋ホテルは、明治11 年(1878 年)7月15日に開業。富士屋ホテル以外にも箱根・富士山周辺を中心に複数のホテル、さらにレストランやゴルフ場、各種施設を運営している。

今回、取材に応じていただいた
富士屋ホテル 宿泊課
課長 折田道明様。