
ホテルWi-Fi導入レポート【望湖楼 様】
※無線アクセスポイントのことを「無線AP」と表記しています。
鳥取の「はわい温泉」で創業80年を超える歴史、
湖上に浮かぶ露天風呂を持つ旅館「望湖楼」
鳥取県の日本海近く、そのほぼ中央、東伯郡湯梨浜町にある湖が「東郷湖」である。東郷湖は周囲12キロほどの湖だが、湖岸や湖底から温泉が湧いている珍しい湖で、その湖畔にある温泉のひとつが「はわい温泉」である。1866年(慶応2年)に「幸助」という人物が湖底から湧き出たお湯を湖上まで上げ、樽を載せた船を湖上に浮かべて入浴できるようにしたのが始まりだ。
天候に左右されることから明治初期に一度廃れてしまうが、その後、湖畔の開発が進むと温泉街が形成されるようになり、現在では組合によって源泉が各施設に配湯されている。
「はわい温泉」は、「浅津温泉」など別の名でよばれていた時代もあったが、1978年に所在地の羽合町から名を取って「羽合温泉」となり、さらに1998年には「はわい温泉」とひらがな表記になった。現在は近隣町村と合併して湯梨浜町となっているが、羽合町時代の1996年11月には、アメリカのハワイ州ハワイ郡と姉妹都市提携をしている。
そしてこの「はわい温泉」に立つ温泉宿のひとつが今回、エレコムのホテル向けWi-Fiサービスを導入した「望湖楼」である。
望湖楼は1931年(昭和6年)に開業。80年以上の歴史を持つ、東郷湖に面して立地した全97室の旅館である。一番の自慢は、旅館前の湖上にある「湖上露天風呂」で、旅館とは朱色の橋で結ばれている。湖底などからくみ上げた源泉を使っており、湖の向こうに見える日の出、日の入りなど、湖上の風景を眺めながら掛け流しのお湯を楽しめる。今では湖上に新しく建築物を建てることができないこともあり、湖上露天風呂は温泉宿の豊富な日本国内においても非常に希少な存在となっている。料理は日本海に近い立地から新鮮な魚介や松葉ガニ、鳥取和牛など地元の食材が満喫できる。また、韓流ドラマ「アテナ」の日本ロケでは俳優・スタッフの宿泊地として利用され、漫画「名探偵コナン」の舞台としても登場している。
鉄道でも車でも利便性のよい関西の宿泊客が多いが、最近では中京地区の方も増えている。また、海外からの旅行者も増加傾向にあるそうだ。そこで海外からの宿泊客へのサービス向上のため2014年3月に、エレコム製の無線アクセスポイント(以下、無線AP)を使った客室での無料Wi-Fiサービスを開始した。今回は、望湖楼 総務部長 廣戸将共様にWi-Fiサービス導入および機器選定の経緯、導入後の状況などをお伺いした。
鳥取県も取り組む外国人観光客の誘致
補助金を活用してWi-Fiサービスの導入へ
海外からの宿泊客は、阪神淡路大震災で一時期減ったものの昔から一定の数があり、最近では2013年に始まった出雲大社 の本殿遷宮により大きく伸びた。韓国・台湾・香港を中心に毎月コンスタントに宿泊者がおり、25~30名ぐらいの団体ツアーで2泊するパターンが多く、大山、鳥取砂丘など周辺の観光地を訪れている。
昨年、日本への外国人旅行者が年間1300万人を超えた。「インバウンド(海外からの観光客)の方をもう少し伸ばすには、あとひとつ何をしたらいいのか。」(廣戸様)という思いが客室への無料Wi-Fiサービスの導入につながることになった。
今回の客室への導入前、望湖楼では1階のロビーでだけWi-Fiサービスを利用できた。数年前に韓流ドラマ「アテナ」の 俳優とスタッフが1か月ほど滞在していたときは、みんながロビーでインターネットをする光景が見られたが、一斉にWi-Fiを使うため無線LANの速度が低下する一幕もあったらしい。その後も外国人の方がロビーでタブレットを操作する様子を見ては、客室にWi-Fiサービスがあればロビーまで降りてきてもらわなくても、部屋でくつろぎながらインターネットを利用していただけるのに、と心苦しく思うことも多かったようだ。それからしばらくして、ようやくWi-Fiサービスの導入を決めたきっかけは何だったのであろう。「お客様から客室でインターネットが使えるようにして欲しいというご意見がますます大きくなる中、鳥取県にインバウンド促進のための補助金制度がある。
この制度は、外国人観光客の誘致につながるものに補助金を出すという制度で、Wi-Fi環境整備も補助の対象になっていた。こうしてようやく客室へのWi-Fiサービス提供が実現に向かって動き出した。
「任せて大丈夫」と思える業者に任せたい!
その結果、エレコムからの提案を採用
客室への無料Wi-Fiサービスの導入が決まり、ではどの業者に依頼するかが次の問題となった。地元で付き合いのある電話 関係の施工業者に尋ねたところ難色を示されたので、大手通信会社や取り引きのあるコンサルタント会社に相談。そこで紹介されたのがエレコムだ。「実際の現場担当さんの説明がわかりやすく、わからない点も親身に対応してもらえました。」(廣戸様)と初めの印象を語る。
エレコムが現場を見て提案したのは、無線APを共用部に配置し、2~4部屋で1台の無線APを共有する「無線アクセスポ イントプラン」だ。客室に既設のLAN配線がなかったので、廊下の天井などに設置した無線APで複数の部屋をカバーしたほうが工事代が安くなるというメリットがあるからだ。また、設置する機器が少なくて済み、客室にも入らないのでメンテナンスにも対応しやすい。さらに、無線APを天井内やバックヤードに設置できるため、お客様の目に触れることがなく、いたずらの心配もない。
他にもいくつかの業者にも相談されており相見積となったが、「エレコムの担当者さんが説明も丁寧で、質問にも待つことなく、きちんと回答をいただけました。お話をしていて一番お任せできると感じました。金額的なことも大事ですが、後々のメンテナンスや何かあったときに相談できるほうが安心。工事はしたがあとは知りませんでは困りますので、エレコムに決めました。」(廣戸様)と高い評価を得て、エレコムの提案が採用されることになった。
廊下の点検口近くに無線APを設置。
PoE接続のためAC電源はない。
施設の既存設備や状況に合わせて
2つの基本プランから最適プランをご提案
エレコムでは、2種類の基本プランを用意している。ひとつは、すでに各客室に有線LANポートが設置されている場合にお勧めする「小型ルータプラン」だ。客室まで敷設されているLANケーブルに小型の無線ルータを追加するだけなので、既存設備を有効利用できるうえ、配線工事が不要なので最小限の工事代で済ませることができる。
もうひとつは、既存の有線LAN配線が客室になく、LAN配線をゼロから敷設する必要がある場合にお勧めする「無線アクセスポイントプラン」で、望湖楼ではこちらのプランを導入している。無線APは、廊下やバックヤードなど共用部に設置し、複数の客室で共有する。客室までLANケーブルを敷設する必要がないので、配線工事代を抑えることができる。
また、今回現場で採用している無線APは、最新の無線LAN規格である「IEEE802.11ac」をはじめ、一般で使用されるすべての規格に対応している。しかも、過酷な現場での使用にも耐えられる法人向けの高性能モデルだ。耐熱50℃仕様なので、廊下や天井に露出することなく、天井裏など熱のこもりがちな場所にも設置しやすい設計になっている。また、保証期間が標準で3年というのもうれしい。通信速度も11acで最大867Mbps(理論値)という余裕の通信速度だ。
「PoE給電(※)」にも対応し、PoE対応スイッチングハブからLANケーブルを利用して無線APに電源を供給することができる。これにより無線APを設置する場所にAC電源がなくても、新たに電源工事をする必要がなくなる。また「PoEパススルー機能(※)」により、PoE給電を受けた無線APがさらに先にある無線APにも給電できるため、電源工事とともにLANケーブルの敷設工事の節約にもなる。さらには、「WDS機能」の搭載により、無線AP同士をWi-Fiでつなぐことも可能だ。これらの機能を現場の状況に合わせて利用することで、配線工事代を最小限に抑えることができる。
セキュリティ面では、「STAセパレータ機能」を搭載し、お客様同士で通信ができないようになっている。暗号化のためのSSIDやパスワードは、旅館側で管理しやすいよう希望の内容にカスタマイズしてから設置するので、旅館側で変更してもらう必要はない。
今回もPoE給電をはじめ、これらの機能をうまく使うことで、スムーズな施工と、安定した電波環境を実現している。(※印の機能については、ページ下部で説明しています。)
工事も非常にスムーズに
導入後の「評価がない」ことこそが評価
工事は2014年の3月に実施された。宿泊客がいなくなる午前10時~午後3時の間で作業できるよう、旅館側でもエレコムから提出された工程表に配慮した部屋割りをしていただくなどして工事は順調に進み、無線AP27台とスイッチングハブなどの関連機器の配線と設置工事をわずか3日で済ませることができた。広さのある特別室など、一部の電波が届きにくいところでは、無線APの電波が十分に届くように設置場所を調整するなどしてデッドポイントを解消した。これより広い客室でも場所を選ばすWi-Fiを楽しむことができている。導入から1年弱だが、さしたるトラブルやお客様からのクレームもなく順調に運用されている。
導入以降、宿泊客はロビーまで出なくても自分の客室でWi-Fiサービスを自由に利用できるようになった。果たして、お客様からは良い評価は得られるようになったのだろうか。「逆にお客様からWi-Fiの件での反応はありません。お客様からすれば客室で自由にWi-Fiが使えることは、自宅でWi-Fiを利用するのと同じで当たり前のことのようです。」「導入前は、海外のお客様から部屋でWi-Fiが使えないのかと尋ねられたら、申し訳ありませんがロビーでお願いしますとしかお応えできませんでしたが、今はそれがなくなりました。」(廣戸様)。Wi-Fiに関して評価も問い合わせもないことが、客室にWi-Fiサービスを導入してお客様から評価を得た結果ということなのだ。
広範囲に電波が届く法人向け無線AP で
複数の客室をカバー
客室に既存の有線LAN 設備がなく、LAN 配線から新規で工事する場合にお勧め!
望湖楼様の導入ポイント
導入前の問題点
- ● 客室に有線LAN 設備はなかった
- ● できれば客室や廊下に機器を露出させたくない
- ● 特別室など大きな客室に電波が届くか心配
エレコムの法人用無線APを導入!
- ● 複数の客室で無線APを共有し、配線工事を簡略化
- ● 耐熱50℃で電波も強い無線APを天井内に設置
- ● 客室の広さに合わせて、無線APの位置を調整
エレコムのPoE対応無線APを使用したイメージ

高性能無線AP で2~4 室をカバー、特別室には無線AP の位置調整で対応


廊下の天井内や配膳室などに設置した無線APで2~4室をカバー。新たに客室までLAN配線をせず、最小限の配線工事で客室のWi-Fi化を実現できます。


特別室は面積が広く廊下から遠い場所もある。無線APを特別室の近くに設置することで、客室の奥でもデッドポイントができないように調整している。
PoE給電とPoEパススルー機能

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PoE給電
無線APの周辺にAC電源がなくても、PoE給電が可能なスイッチングハブと組み合わせることで、LANケーブルを使って給電できます。電源工事が不要なうえ、電源の位置にとらわれることなく電波状態が最良な場所に設置できます。
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PoEパススルー
PoE給電を受けた本製品から、さらに別の本製品にPoE給電できる機能です。電源工事が不要なうえ、LANケーブルの配線も節約できます。
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法人ニーズにマッチする
高品質・高性能な無線アクセスポイント法人向けPoE無線アクセスポイントWAB-S1167-PS
- ●11ac/n/a/g/b 規格、有線LANギガビット対応の高性能モデル
- ●耐熱50℃、3 年保証、保守サービスなど法人現場に最適
- ●PoE 給電/PoE パススルー/WDSなど状況に合わせた設置が可能
- ●マルチSSID/セパレータ/802.1X 認証などセキュリティも万全
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セキュリティケース付き!
露出設置時のイタズラ防止にも役立つ
超高速モデル11ac 対応法人向けPoE 無線アクセスポイントWAB-I1750-PS
- ●セキュリティカバーを標準で装備し、露出分に設置したときのイタズラを防止可能
- ●11ac 使用時は、最大1300Mbpsの超高速モデル
製品比較
WAB-I1750-PS WAB-S1167-PS 最大通信速度(11ac:理論値) 1300Mbps 867Mbps 接続推奨台数※ 50 台以下 25 台以下 ※推奨接続台数を超えた場合、パフォーマンスに負荷がかかり、速度の低下の可能性がございます。
- 山陰・はわい温泉 政府登録国際観光旅館 望湖楼
- 創業:昭和6 年 / 所在地:鳥取県東伯郡湯梨浜町はわい温泉
- 鳥取県の「東郷湖」の湖畔「はわい温泉」に立つ創業80年を超える客室数全97室の老舗旅館。湖底の源泉を使った湖上露天風呂は、全国でも非常に珍しい施設である。
今回、取材に応じていただいた
望湖楼 総務部長
廣戸将共様。