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株式会社ニプロンは兵庫県尼崎市に本社、工場を置くスイッチング電源の開発・製造・販売を行うメーカーである。設立以来40年以上の歴史を持ち、コンピュータ用電源メーカーとして国内で唯一の存在である。国内生産にこだわった製品は大手電機メーカーを始め、数多くのユーザーから高く評価されている。またPCパーツ市場向けにも製品を販売しており、やはり品質にこだわるコンシューマユーザーからも人気が高い。
同社の扱う電源はコンピュータ用から工場向け機械まで幅広いラインナップがある。中でもコンピュータ用の「ノンストップ電源」はオリジナル技術であり、バッテリーと組み合わせることにより停電からシステムを守る。ノンストップ電源の発売以来、安価な海外メーカー製電源に不安を感じていたコンピュータメーカーが次々に採用。その高い信頼性が広く知られるところとなった。また品質の高い電源が欲しいという要望に応える形で一般的なコンピュータ電源のラインナップも充実していった。 |
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ロジテックのWindows Storage Server 2008 R2搭載NAS「LSV-5S4CWシリーズ」は同社の電源を採用している。電源製造に対する取り組みとLSV-5S4CWシリーズ搭載電源の優位性について同社 執行役員 製造統括本部 部長 塚腰勝則氏、執行役員 研究開発部 部長 山本直樹氏、営業戦略室 室長 栄田祝彦氏、技術本部TTC開発課 課長 辰巳章氏、東部営業部 主事 福本博和氏にお話を伺った。
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「護る」をポリシーとした電源づくりの「夢とロマン」を持ち、武士(サムライ)の心を持った世界オンリーワン企業を目指している企業が“Nipron”です。 |
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Nipronが作りだすスイッチング電源は、すべての装置や機器を動かし、維持する、もっとも中枢的なユニット。どんな過酷な条件下でも絶対に機能停止しないパワフルな「心臓」でなくてはなりません。そんな製品イメージを具現化した、元気でパワフルなキャラクターです。知性も自慢の進化したゴリラです。
源さんも登場する
Nipronの情報誌“Nipron Wave”
Webページからダウンロード可能
https://www.nipron.co.jp/extra/nipronwave.html |

Nipronのユニークなマスコットキャラ“源さん” |

近年関心が高まっている環境問題。その根本とも言える問題が「電力」だ。太陽光発電など再生可能エネルギーの技術は進んでいるが、まだ既存の発電電力はまかなえ
ない。そこで注目されているのが「スマートグリッド」であ
る。ITを活用して電力網をインテリジェントに制御しようというものである。スマートグリッド実現にあたって、既存の電力と再生可能電力の双方を電力網に入力する必要がある。ニプロンは「ノンストップ電源」のノウハウを応用し、効率良く複数の電力を入力できる「プライマリー・リダンダント電源」を作り上げた。例えば昼間は太陽光発電を
優先し、夜間は既存の深夜電力に切り替える動作を容易に実現できるのだ。ニプロンではスマートグリッドをテーマにした展示会に出展し、大きな反響を得た。「初日の午前中から多くのお客様にご来場いただき、手応えを感じて
います」(福本氏)。
またエコロジーという観点から注目される技術に回生エネルギーの利用がある。ハイブリッドカーで有名な技術だが、工場内の昇降機やロボットなどの動作でも回生エネルギーが発生する。従来はこのエネルギーを熱として捨てていたが、ニプロンの電源はキャパシタや充電池に蓄え
ることで再利用を可能にしている。 |
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このような最新の取り組みにも対応できるニプロンの技術の基礎となっているのがノンストップ電源である。「独創的なアイデアで構成され、特許を取得している」(栄田氏)という「2Gate-2Engine方式」で、通常のAC入力と接続されたバッテリーのDC入力をシームレスに切り替えることができる回路だ。雷などでAC入力が停電しても、不足した電力をバッテリーからのDC入力が補い、機器への電力供給が絶たれることはない。役割としては無停電電源装置(UPS)と同じであるが、回路方式が異なる。このためノンストップ電源は「省スペース性・省エネルギー性・導入コストが優れている」(山本氏)。 |
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●ノンストップ電源の回路構成
AC入力側にトラブルが発生した場合、これを補完する形でバッテリ入力側から電力が供給されます。二次出力側は、無停止・無瞬断環境が提供され、システムにダメージを与えることなく、継続的な運用が保証されます。 |
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●水の流れに例えると
AC入力は「常用タンク」、バッテリ入力は「非常用タンク」に例えることができます。常に圧力の高いタンクから水が供給されることで、二次側はいつでも一定の水位に保つことができ、安定した水の供給が保証されます。 |
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ニプロンの「電源とは機器を護るもの」という企業ポリシーは2Gate-2Engine方式以外にも随所に反映されている。機器に悪影響を与えるノイズを出さないことや感電など人体にも危険が及ばないよう細心の注意が払われる。人体への影響の低さは医療用規格IEC60601-1を取得した製品が、各種医療機器の電源として採用されていることからも証明されている。電源の寿命にもこだわる。海外製品だと当初は問題なく稼働するが、経年劣化によってわずか2、3年で障害が発生するものが少なくない。ニプロンは7年、10年という設計基準で開発を行っている。個体の寿命だけでなく、製品としての寿命にもこだわる。長期にわたって製造を行い、安定供給に努めている。機器の心臓部である電源だから妥協はできない。例えば工場で使われている制御用のパソコンが電源トラブルで止まってしまえば、工場の機能全体に大きな損害を与えることになる。壊れないことは大前提だが、万が一故障した場合にも発煙、発火を起こさず「静かに壊れることが求められる」(栄田氏)。例えばクリーンルームの工場内で発煙が起こった場合、生産品に有害な物質がばらまかれてしまうことになるからである。ニプロンの電源は万一の故障時にも配慮された設計になっている。ニプロンのこだわりは生産工場にも現れていた。生産に使われる機械は「社員自身でオーバーホールができるほど知り尽くしています」(塚腰氏)ということだ。さらに生産工程の随所に人手によるチェックや処理が入り、量産品ながら手作りに近い丁寧さを感じた。 |
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LSV-5S4CWシリーズはニプロン製電源を搭載している。そのこだわりから生み出された高い信頼性を評価して選定された。クライアントPCとは違い、NASは基本的に電源を落とさずに使用するものである。24時間使用するため電源内部は熱が発生し、部品の寿命に影響を与える。特に電解コンデンサは10度上がれば寿命が半分になるという。そこでニプロンでは「熱源となる部品の配置や空気の流路、冷却ファンの強さなど全て計測しながら」(山本氏)設計している。ロジテックNASに電源を供給するにあたって、海外メーカー製の電源装置の検証を行っていただいた。外観では違いが分からなくても、内部の部品や回路を見れば差は歴然としているそうだ。海外製電源は使われているパーツの配置がバラバラで振動や衝撃により、故障を起こしやすい作りになっているという。導入時には差がなくても稼働時間が長くなるほど差が現れる。ニプロンが算出した推定寿命によるとLSV-5S4CWシリーズの電源が約10.8年に対し、海外製電源は約3.7年と3倍近い差が出たという。海外製電源は電力供給の安定性にも問題があり、電源投入時にニプロン製電源の4倍という大きな電流が流れたり、稼働中に出力電圧の基準を大きく下回ることがあったという。このため同じ電源ラインに接続されている機器の障害を誘発する可能性もあるとのことだ。またLSV-5S4CWシリーズの電源は省エネにも優れており、待機時の消費電力が「通常の電源に比べて1/5程度」(辰巳氏)となっている。NASは使用状況によって待機時間が長くなることもある。そんなときでも無駄なエネルギー消費を抑えられるのだ。 |
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左:海外メーカー製電源
右:Nipron製電源"PCFX-220P-X2S" |
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重要なデータを扱うためのNASだからこそ、信頼の置けるパーツを使用した製品を選ぶことが大切だ。LSV-5S4CWシリーズが採用したニプロン製電源は、まさにメイドインジャパンを体現するこだわりの製品である。ニプロン製の電源によりLSV-5S4CWシリーズは高機能なソフトウェアに見合う信頼性の高いハードウェアを持ったNASに仕上がったのである。 |
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株式会社ニプロン
https://www.nipron.co.jp/
設立:1981年7月(創業1968年1月)
代表取締役社長:酒井 節雄
兵庫県尼崎市に本社、工場を置き、スイッチング電源の開発・製造・販売を行う国内唯一のコンピュータ用電源メーカー。スイッチング電源およびオリジナル技術であるコンピュータ用の「ノンストップ電源」を始め、幅広いラインナップの電源を扱っており、品質にこだ
わる数多くのユーザーから高く評価されている。 |
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(写真左から)今回取材にご協力いただいた株式会社ニプロン 執行役員 製造統括本部 部長 塚腰勝則氏
執行役員 研究開発部 部長 山本直樹氏、営業戦略室 室長 栄田祝彦氏、技術本部TTC開発課 課長 辰巳章氏
東部営業部 主事 福本博和氏
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