
ARとは?VRやQRコードとの違い

「拡張現実」と呼ばれるARが注目を集めています。ARは、1965年には研究が始まっていた技術 で、ゲームアプリや広告などの一部の世界で使われている技術でした。しかし、2016年にARを採り入れたゲームが世界的なヒット となったことで、Apple やGoogle 、Facebook などが自社の製品やサービスに標準機能として組み込むことを発表するまでになっています。
ここでは、ARとはどのような技術で、実際にどのような分野で活用されているのか、そして今後の動向について、代表的な使用例も併せてご紹介します。また、VRやQRコードといった、ARと混同しやすい技術との違いについても見ていきましょう。
ARの基礎知識
まずは、ARの基本的な知識として活用事例や歴史をご紹介します。

ARとは?
ARは「Augmented Reality(オーグメンテッド・リアリティ)」の略で、日本語では「拡張現実」と訳されています。AR技術は、おもにコンピューターを用いて、「現実にデジタルな情報を追加して表示させることができる」ものとして浸透しています。
ARの活用事例
ARは、ゲームアプリや広告に活用できる身近な技術として登場しましたが、それ以外の分野にも活用領域は広がりを見せています。例えば、建築や土木、医療の現場では、作業に取り掛かる前にシミュレーションをすることで、失敗の回避に貢献するようになりました。
また、家具や家電などの小売分野でもARは導入されています。例えば、カメラで室内を映した画面に3Dデータの家具を重ねて表示させることで、「実際に部屋に置いた場合のサイズ感」や「家具のコーディネートはどうか」といったシミュレーションをすることもできるのです。
このように、AR技術はビジネスのみならず、私たちの暮らしを便利にしてくれる技術として進化を遂げています。ARを導入することで、業務の効率化や安全な作業、生活の利便性や購買意欲の向上などへのつながりが期待できるでしょう。
ARの歴史
AR技術が身近なものとなった背景としては、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスが広く浸透したことが挙げられます。現実世界にデジタル情報を追加することができるAR技術は、持ち歩きできるモバイルデバイスとの親和性が非常に高いのです。
身近なARコンテンツとしては、2016年にリリースされた「ポケモンGO」が代表的です。ほかにも、ニンテンドー3DSのARゲームや、大手企業によるAR広告の導入によって、より身近なコンテンツとして発展してきました。
タイプ別・ARの実現方法
ARの実現方法としては、「ロケーションベース(位置情報)AR」と「マーカー型AR」そして「マーカーレス型AR」の3タイプに分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。

・ロケーションベースAR
ロケーションベースARは、GPSなどから取得した位置情報に基づいて、ARで付加的な情報を表示させる方法です。位置情報と合わせて、磁気センサーによる方位や、加速度センサーによる視覚の角度などと紐付けて、情報を表示する場所が決められます。
ロケーションベースのメリットは、位置情報や方位・傾きといった要素が、現在のデバイスやプラットフォームで扱いやすいことでしょう。そのため、基本的なARであれば、ライブラリなど特別なものを用意しなくても実現可能です。
その一方で、主要な位置情報についてGPSに依存する割合が大きい点はデメリットになります。情報の表示位置の精度が若干低く、表示のずれなどが発生する可能性があるためです。
・マーカー型AR
マーカー型ARは、ARの付加情報を出現させるキーとなるマーカーを認識させて、付加情報の提示位置を特定する方法です。認識対象となるマーカーは、ある特定のパターンを持った図形(QRコードが代表的なもの)となります。
この方法でARを実現するには、マーカーの認識と、認識したマーカーに対して付加情報を提示する機能を持つライブラリやエンジンを利用することが一般的です。
マーカー型には、マーカーによって情報の「提示位置を正確に決められる」ことが最大のポイントです。つまり、意図した場所に意図したとおりのAR情報を表示できるのです。また、スムーズに利用できるOSS(オープンソースソフトウェア)のライブラリがあるため、開発が比較的容易な点もメリットといえるでしょう。
・マーカーレス型AR
マーカーレス型ARは、特定のマーカーを利用せずに、現実にある物や、現実世界そのものを空間的に認識することで付加情報の提示位置を特定し、表示させるものです。特定のマーカーなどが不要で、スペースや景観的な理由でマーカーを配置することが難しい場合でも、ピンポイントで付加情報を提示できるメリットがあります。
その一方で、空間や物体の認識をするための計算量が多くなり、ハードウェアに高い能力や精度が要求される点は、そう簡単にクリアできない問題です。空間認識や物体の認識などの専門知識が開発者に求められることから、3つの中で最も難度の高い方法となっています。
ARの今後の動向

Appleが2017年9月に公開した「iOS 11」によって、iPhoneとiPadが正式にAR機能に対応しました。これは、Appleが開発者会議で発表したソフトウェア技術「ARKit」の機能で、デバイスに特別なセンサーがなくても、アプリをAR対応にできるというものです。従来のAR機能から進化したARKitは、「現実世界と仮想世界の物の大きさを一致させる」「仮想的な物を地面や机などに『置く』ことができる」など、さらに現実に即したAR体験が可能になりました。また、Appleだけでなく、GoogleやFacebookなども、関連技術を持つ企業を買収したり、AR技術を利用したサービスを発表したりするなど、対応を強化しています。世界のIT業界を引っ張っている米国の大企業が、ARは今後より身近なものと考え、動き出しているのです。
さらに、イギリスの投資機関であるDigi-Capitalは、「全体的にVRからARへ投資対象が移行する傾向がある」と報告しています。米国や中国の有力なベンチャーキャピタルに対して行われた調査によると、VR/AR業界の発展のキーとなるのは「モバイルAR」であると考えられているとのこと。2020年頃までに、大きな転換期を迎えるとも見られています。
VRやQRコードとの違い
ARと混同されやすい技術として、「VR」や「QRコード」が挙げられます。これらの技術とARには、具体的にどのような違いがあるのかを確認しておきましょう。

・VRとの違い
ARが「拡張現実」である一方で、VRは「仮想現実」と呼ばれています。あくまで現実世界が主体となるARに対し、VRは現実世界とは異なる仮想世界に入り込むことが目的です。現実世界と組み合わせることができるARは、前述のようにゲームや広告だけではなく、医療現場や交通事故のシミュレーションなどにも役立っています。
また、VRは、ヘッドセットやリモコンといったデバイスが必要なのに対し、ARはスマートフォンやタブレットにアプリをインストールするだけで済む(利用可能になる)ものが多いことも特徴といえるでしょう。
・QRコードとの違い
QRコードの目的は「Webにリンクすること」であり、1つのコードでリンクできるのは1つのサイトだけです。また、ユーザーに情報を伝えるためのWebサイト(QRコードのリンク先)を制作し、公開しておく必要があります。
その点、現実世界とデジタル情報を重ね合わせるARは、ARアプリがあれば、目の前にある紙や物と融合させることによって、利用者にさまざまな情報を伝達することが可能です。イベントやお店にARマーカーを置いて直接足を運んでもらいたい場合や、広告などの印刷物の内容を読み込んでほしい場合には、QRコードよりもARのほうが向いています。
身近なARコンテンツにふれてみよう
ARはビジネスやエンターテイメントの領域だけではなく、今後は私たちの生活に役立つ、より身近なものとして発展していくことが予想されます。
スマートフォンやタブレットなど、元々所持しているデバイスを使って比較的手軽に体験できるので、興味のあるARコンテンツを探して体験してみることで、モバイルデバイスの新しい楽しみ方や、意外な利便性の発見につながるかもしれません。
※QRコードの商標はデンソーウェーブの登録商標です。