Vol.04 eスポーツで賞金を得るにはプロライセンスが必要!?
エレコム製品購入ガイドeスポーツの基礎知識

eスポーツで賞金を得るにはプロライセンスが必要!?

eスポーツイメージ

2018年2月1日、いくつかに分かれて活動していた日本のeスポーツ関連団体のうち3つが統合して「日本eスポーツ連合(JeSU)」が成立。これに、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、日本オンラインゲーム協会(JOGA)、日本アミューズメントマシン協会(JAMMA)、デジタルメディア協会(AMD)が協力することが発表されました。

海外に比べて立ち遅れていた国内のeスポーツ振興を図るとともに、競技大会の普及、選手の育成などを組織的にバックアップする体制ができたことになります。また、これまでは「スポンサーによる支援」や「大会での賞金」を得ることが、プロゲーマーとして認められる(事実上の)条件でしたが、今後はJeSUによって「プロライセンス」の発行が行われることになります。

日本のゲームメーカーの大半はCESA、JOGA、JAMMAのいずれか、もしくは複数に所属していることから、JeSUが発行するプロライセンスには大きな意味があります。そして、ライセンスを持つプロゲーマーが参加するゲーム大会には、国内ではあまり例のなかった高額の賞金設定が可能になるという判断もありました。

日本で高額賞金のゲーム大会が開催されなかった理由

海外で開催されるeスポーツの大会では、賞金総額が数十億円というものを筆頭に、優勝賞金が億や千万円単位であることが通常です。それだけの賞金を設定できる理由としては、世界的に知られる巨大な会社が冠スポンサーとして協賛していたり、決して安くない大会会場の入場チケットが万の単位ではけていたり、ネット配信の視聴者による課金が大きいことが挙げられます。一方、日本ではそこまで大きな企業がeスポーツに資金を投下してきませんでしたし、数万人を集めるようなイベントは年に数回しか開催できず、ネットで観戦する人々は増えているものの大きな課金は望めない状況でした。

また、ゲームで生計を立てていない一般人(プロゲーマーではない人)が、高額な賞金を手にすることが「景品表示法に抵触するのでは?」という問題も抱えていました。このため、国内で開催されるゲーム大会の優勝賞金は、とてもそれだけで生活していくのは難しいレベルの額にしか設定されず、プロゲーマーが生まれにくい環境であったといえるでしょう。JeSUのプロライセンス発行は、こうした国内事情を一新する可能性を秘めています。

JeSUが考えるプロゲーマーの姿

  • ・JeSUが公開したプロゲーマーの定義に誓約している
  • ・JeSU公認大会に参加し、公認タイトルの競技で優秀な成績を収める
  • ・JeSUが指定する講習(eラーニング)を受ける

このうち、プロゲーマーの定義として「プロとしての自覚」「スポーツマンシップ」「技術の向上」、そして「eスポーツ発展への寄与」が示されています。同時に、プロチームへのライセンス発行についても、「法人格がある」「IPホルダーが実力を認めている(ゲームメーカーが過去の大会等での実績を認めている)」上で、JeSUの承認が必要としました。また、チーム内にプロライセンスの所有者が1人以上いる場合は、公認大会にチームとして出場することを認めることも発表(そのチームが賞金を得た場合はプロライセンス所持者にのみ授与される)。今後、国内で開催されるJeSU公認大会は、これらのルールに則って出場の可否が判断され、結果に合わせてライセンスの発行が行われることになります。

さらに、これまで事実上のプロゲーマーとして活動してきた選手に対しては、「大会での実績」「IPホルダーの承諾」などを条件としつつも、公認=プロライセンス発行に準ずる形にするとしています。国内外の大会で実績を残し、スポンサーがついている(事実上の)プロゲーマーにも、JeSU公認大会に参加できる道を用意したといえるでしょう。

プロライセンス発行、そしてアジア大会に参戦

JeSUは、2018年2月に開催されたゲームの祭典「闘会議2018」で、さっそく公認大会を開催。次の6タイトルで優秀な成績を収めたプレイヤーに対して、それぞれプロライセンスを発行しました。

  • ・ウイニングイレブン 2018
  • ・コール オブ デューティ ワールドウォーII
  • ・ストリートファイターV アーケードエディション
  • ・鉄拳7
  • ・パズル&ドラゴンズ
  • ・モンスターストライク

その後、「ぷよぷよ」と「レインボーシックス シージ」もライセンス認定タイトルに加わり、2018年8月末現在、8タイトルについてJeSU認定プロゲーマーが生まれる可能性があります。

2018年8月から9月にかけ、インドネシアで開催されたアジア競技大会では、eスポーツが公開競技として採用されました。JeSUはこの大会に「ウイニングイレブン 2018」と「ハースストーン」の代表選手3名を派遣するなど、プロライセンス発行者として大きな役割を果たしています。

JeSUが認めるプロゲーマーがすべてではない

eスポーツイメージ

JeSUの発足により、日本国内でも高額賞金の大会が開催される可能性が生まれ、プロライセンス発行はこれまで不確かだったプロゲーマーに一定の地位を与えることになりました。また、広報活動によってeスポーツに関する報道が増えたことで、一般の認知度アップという効果も認められます。

一方で、JeSUに参加しなかったeスポーツの団体も多く、それぞれが独自に選手を集めて大会やリーグ戦を実施し、海外の大会に派遣している状況に変わりはありません。また、すでに個人の実力でスポンサーを獲得し、海外リーグなどに参戦しているプロゲーマーも多数存在しています。そのような団体や個人にとって、まるで国内のプロライセンスがJeSU発行のものだけのように人々の目に映るのは、望ましい状況とはいえないことも確かです。

JeSUの幹部が参加した討論番組でも、プロゲーマーの定義について、またライセンスについて明確な答えが出なかったように、「何をもってプロゲーマーとするか」「ライセンス発行を受けなければプロではないのか」といった課題は残されています。また、海外で圧倒的な支持を受けている「Dota 2」「リーグ・オブ・レジェンド」「オーバーウォッチ」といったタイトル群が、JeSUの認定タイトルから外れているなど、世界的に活躍するプロゲーマーを目指す人にとっては不十分といえるでしょう。

世界から何歩も遅れて、ようやくスタートしたという感もある日本のeスポーツですが、できるだけ早い段階で諸問題を解決し、選手が世界標準で戦える日が来るでしょうか。JeSUをはじめ、eスポーツに関わる団体の動きに注目が集まります。