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エレコムの数あるマウスの中でも定番製品として
ユーザーからの絶大な信頼を得てロングセールスを続ける[EX-G]。
そして、トラックボールという長らく進化を止めていた市場に
新規参入し業界を活性化させた二人の開発者。
彼らは何を考え、どう行動することによって「新たな必要性」という、 ユーザーの心をつかむプロダクトアウトに成功したのか。

逆転の発想から生まれた、
ユーザーにとって「最適」と呼べる製品。

ー 新製品の開発を行う際のスタートというのはどういうきっかけで始まるのでしょうか?
設計者:市場の動向や他社の新製品などを見ながら「こういう製品があったらいいのじゃないか?」というような雑談の中から生まれることも多いですね。
デザイナー:「こういうのが欲しいよね!」っていうところから始まることは確かに多いですね。そこから話を広げていってその方向が市場に受け入れられそうなのかどうかを検討していき、本格的な開発へと、繋がることもあります。
設計者:他にはSNSなどでユーザーの声をチェックすることも忘れません。使い勝手や機能など、意見の多いものを参考に新製品の開発にフィードバックさせることも重要です。
ー ユーザーの生の声という部分ではSNSは外せないですよね。
デザイナー:そうですね。その他だと販売サイトのレビューに寄せられる意見も大切です。
設計者:新しく開発する製品を、いかにユーザー受けする形へと仕上げていくかが僕たちに科せられた命題ですので、市場の動向は常に意識しながら開発にあたっています。
EX-G TRACK BALL MOUSE 開発者インタビュー
ー 現在、ロングヒットを続けている EX-G マウスですが、この製品を開発するにあたっての出発点とは?
デザイナー:そもそもはリーマンショックからの円安がきっかけでした。当時は輸入業が厳しい時代で、エレコムとしても円安対策としてなるべく原価をかけない製品を開発しなくてはならないという状況でした。その当時、エレコムで最も人気だったマウスがあるのですが、原価が高く売れても利益が出づらい製品でした。しかし、ユーザーからの人気の高い製品だったのでどこが人気の秘訣なのかということを探ったところ、たどり着いた答えが「握り心地」でした。そこで、競合他社も含め、握り心地が良いとされている製品をかき集めて検証していきました。しかし、どれも大げさな感じがして、しっくりこなかったんです。
ー しっくり来なかったとは?
デザイナー:自分の手に合うものがなかったんです。これでユーザーは本当に満足しているのかな?という疑問が浮かびました。それからは握り心地を向上させるためにどうしたら良いのかと悶々と考える日々が始まりました。
ー その答えは何から見つかったのですか?
デザイナー:とあるブランドの靴から発想を得ました。木型自体を足の形の凹凸に合わせて履き心地を追求した製品だったんですが、それをマウスに取り入れてみようということが EX-G マウスの出発点になりました。まずは、マウスを持つときに一番触れている部分となる親指と薬指の裏側の二本の指をマウスに重ねた時、手の平の骨格や筋肉の形状がどのようになっているんだろうということを研究し、医学書などな様々な資料を読み漁りました。
EX-G TRACK BALL MOUSE 開発者インタビュー
ー その研究の結果からEX-Gマウスの形状が生まれたんですね。
デザイナー:それはまだ先になります。なぜなら、手にフィットさせるだけだと、すごく気持ち悪い形になってしまうんです。簡単に言うと、四角の粘土を上からギュッと握った形が手の形になるわけなんですけど、その形のままだとすごく気持ちが悪いのと、工業製品として成立しないわけです。毎日使う物なので審美性が伴った製品にしなければならないわけです。
ー プロダクト製品としてのデザインと機能性の両立ですね。
設計者:握り心地にとことんこだわりつつも、いかに普通に見せるかということですね。
デザイナー:そうそう。結構、普通に仕上げることが難しかったですね。
ー ということは、完成形に至るまではかなり時間がかかりましたか?
デザイナー:ミリ単位で細かい調整を繰り返し、結果として1年以上の時間がかかりました。
設計者:モック(石膏型)を抱いて寝てましたもんね(笑)。
ー とはいえ、プロダクトデザインにまで落とし込んでいく中で、すべての人が満足する握り心地を実現するのは不可能かと思いますが。
デザイナー:そうですね。なので、全員の満足はあえて狙っていません。全員に当てはまる形にするとマウスとしての特徴がなくなってしまいます。
設計者:持ち方も色々あるとは思うんですけど、できるだけ広い範囲をカバーできるようにたくさんの方の意見を聞きながらこの形へと昇華していきました。
デザイナー:社員30名くらいにサンプルを使ってもらってヒアリングを行い、他社製品とも比較してもらいながらブラッシュアップを繰り返しました。
ー EX-Gは3サイズ展開ですが、各サイズにもこだわりがあるんですか?
設計者:単純に相似形で拡大縮小しているわけではなくて、サイズごとに形状を変えています。
ー そうなんですか!
設計者:ええ。手の大きさによって角度が変わるので、そこも計算して各サイズに応じた調整を行っています。
デザイナー:微妙に変えています。あとは重さも気にしていますね。
設計者:中の部品も抑えているのでその分軽くなっていますが、取り回しやすさを考えた重量にしています。機能性も必要最低限にとどめています。
ー その上でコストも削減している製品なんですよね?
デザイナー:そうですね。先ほどもお話しした円安対策という部分は命題だったのでいかにコスト削減をするかということに注力しました。まず、マウスを作る上で必要となるパーツの数を減らし、少ないパーツでも美しく、機能的に完成するように計算しました。次に塗装ですが、通常3回の塗装を行う工程を、1回で終わらせ、なおかつ美しくさせるための方法などを見つけ出していきました。そのようにして、これまで当たり前だった様々な工程を再度検討し直し、性能の向上も含め様々な調整を行っていきました。
ー その努力は実際の価格に反映できたのでしょうか?
デザイナー:かなり反映できましたね。
設計者:EX-Gが出るまでというのは、いかに豪華で機能性も高く、カラーバリエーションもたくさん、みたいなマウスが当たり前だったんです。でも、EX-Gが発売されてからは、コストを抑えて使い勝手がよくて良いモノという方向に業界自体がシフトしましたね。
ー つまりEX-Gの発売というのは市場が潜在的に求めていたタイミングと合致したということでしょうか?
設計者:リーマンショックによる影響は各社同じ状況ですので、本来は価格を上げなくてはならないというところを、エレコムはむしろ低価格で良い商品を出したということで他社と比べて価格差が大きく開きました。もちろん、景気が悪い中ではユーザーはそういう製品を求めているので売り場での状況は一変しました。
ー ということは、かなり売れましたか?
エレコムのマウスの売り上げの3割がこのEX-Gになりました。今ではエレコムの定番商品となっていますね。

「EX-Gによって変化する市場。しかし、類似品にはない
本物の価値がオリジナルにはあった。」

EX-G TRACK BALL MOUSE 開発者インタビュー
ー EX-Gの発売以降、マウス市場に何か変化は起こりましたか?
設計者:似たような形、色、価格の他社製品がたくさん発売されました。
デザイナー:他社からすごい数のリリースが相次ぎましたね。
ー 焦りはありましたか?
デザイナー:いや、全然焦りませんでした。
設計者:私たちは確かなコンセプトを持って、時間をかけてこのマウスを完成させたという自負がありました。しかし、類似商品との違いを明確にするためにも「Ask Doctors」という第三者機関においての評価をしてもらうという流れにもなりました。
ー 「Ask Doctors」への評価というのは類似商品との差別化という点が大きかったのでしょうか?
デザイナー:それもありますね。
設計者:そうですね。他商品との差別化を図る目的ももちろんですが、手の骨格や筋肉などを研究して完成したデザインだったので、専門家による評価を受けてみたいという純粋な部分も大きかったです。
ー 評価はいかがでしたか?
設計者:高い評価を受けることができました。
デザイナー:類似商品と比べても明らかに差が出たので、簡単に真似できないんだなと改めて実感できました。
ー 今後のビジョンとして、EX-Gはまだまだ進化しますか?
デザイナー:難しい質問ですね。握り心地という点においては完成してしまっていると考えているので。
設計者:中身の話になるんですが、中で使用している基盤のサイズを最小のサイズに合わせました。これまでは3サイズ別々の基盤を採用していたのですが、基盤を全サイズ統一することで生産を一括で行えコストの削減につなげることができました。
デザイナー:何度も言いますが、形状自体は完成しているのでこれ以上は手を施しませんが、素材やコスト面で新しい技術を採用するなど、ローカルアップデートは続けていきます。
EX-G TRACK BALL MOUSE 開発者インタビュー

「対極にある製品への挑戦。
長らく流れが止まっていたトラックボール市場への参入。」

ー 続いて、トラックボールのお話に移ります。エレコムでは長らく発売していなかったトラックボールを開発するきっかけというのはどういう流れだったのでしょうか?
デザイナー:EX-Gマウスの発売を経て、次に何を開発するか悩んでいる最中でした。普遍的なマウスを作り上げることができて、次はその対極とも言えるコアユーザーに向けた製品を手がけてみたいという思いに掻き立てられたんですね。
設計者:であれば、トラックボールではないかと。そこで、EX-Gマウスにトラックボールを付ければ売れるんじゃないかという安直な発想でスタートしました。
ー お二人はそれまでトラックボールを使って作業されていたのですか?
デザイナー:いや、使ったことがなかったです。でも、この開発にあたり様々なトラックボールを使用しました。今ではトラックボールをメインに使用していますね。
設計者:僕は普段、開発中の製品を使うので限定的に何かを使うということはないんですけど、自宅などではトラックボールを使っています。
ー そうなんですね。
デザイナー:トラックボールは、特にクリエーターの方などにユーザーが多いんですが、慣れると作業効率が格段に上がるんです。カーソルの移動など、腕を動かすことなく一瞬なので。
設計者:トラックボールの方が圧倒的に作業スピードは上がりますね。
EX-G TRACK BALL MOUSE 開発者インタビュー
ー そんな根強い人気を持つトラックボールですが、実際に開発にあたって苦労された点は?
デザイナー:そもそも、トラックボールは競合もほとんどおらず、開発するということ自体がとてもハードルが高いんです。
設計者:トラックボールはあるメーカーのシェアが日本では高く、そこに対抗するつもりで開発を行いました。狙いとしては、市場そのままでシェアを少しでも取ることができればいいなという考えだったんですが、エレコムが参入したことで市場自体が伸びました。
ー 市場が伸びたんですか?
設計者:ええ、これまでトラックボールを使ったことがないユーザーを新たに獲得することができ、市場が広がりました。マウスで有名なエレコムが新製品を発売したことでトラックボールを初めて知った方もいるでしょうし、他メーカーの主力製品よりも安く売りだしたことも影響しているかと思います。
デザイナー:そもそも、新製品がほとんど発売されない市場なんです。
ー 定番製品しかなかったのですか?
設計者:そうですね。トラックボールを作っているメーカーが1年に1回くらい発売するような。
デザイナー:1年に1回出たら良いほうです。それくらい新製品が発売されない、なおかつ新しいメーカーが参入してくることなんて考えられない市場だったんです。ですので、エレコムがトラックボールの発売が決定した時には大騒ぎになり、通販サイトの予約が殺到しました。
ー トラックボールを長らく支持していたユーザーはこだわりが強そうですが、最初からその層には受け入れられたのでしょうか?
デザイナー:最初はかなり手厳しい意見を言われました(笑)。
設計者:感どころがすごくある製品なんです。ボールの回し感やホイールの倒れ具合、ボールとクリックボタンの距離などについてかなりシビアにダメ出しされました。
ー そういう色々な意見をどのように反映したのですか?
デザイナー:それらの意見を一つひとつ反映していきましたね。例えば、EX-Gトラックボールに関しても当初のデザインから現在のデザインはかなり変わっています。それこそ、ボタン間のアクセスのしやすさを追求して、配置や高さなどにかなり手を加えました。
設計者:とにかく便利にしたいという気持ちがありました。カーソルの速さを変えれるようにしたり、割り当てることができるボタン数も増やしたり。これまでの製品に求められていることをできるだけ反映していきました。
EX-G TRACK BALL MOUSE 開発者インタビュー
ー そうした中で第二弾となる「DEFT」の開発につながるんですね。
デザイナー:そうですね。大きな特徴と言えるのが人差し指でボールを操作するモデルで、このタイプ自体は他メーカーからも出ているのですが、手のひらにフィットするというのがこれまでのモデルになかったポイントです。
ー こちらの製品の反響はいかがでしたか?
デザイナー:これはとても反響がありましたし、今となっては「DEFT最強説」なんてネットで言われたりすることもあります。
設計者:このモデルは人差し指がボールの上に来るので、親指が左クリックになっています。これは最初慣れるまで時間を要しますが、慣れると抜群の操作性になると好評です。
ー このフォルムに至るまでもかなり時間がかかったんじゃないですか?
デザイナー:そうですね。最初は左右対称にしようとか、試行錯誤の連続でした。何度も石膏型を削っては壊してを繰り返してやっと完成した時はとても嬉しかったですね。それこそ、EX-Gの開発の時に情報を得た筋肉や骨格の形などはこのDEFTにも活かされています。

「数々の開発を重ねた結果生まれた、
最高峰とも言える一台のトラックボール。」

ー そして、第三弾となるHUGEが発売となります。
デザイナー:これは「操球感」に最も力を入れた製品になります。製品サイズもさることながら、ボール自体もこれまでの製品よりも大きく、軽やかにボールを操ることができるように設計しています。また、トラックボールユーザーにとってボタン配置というのはとても重要で、ボールからスムーズにボタンへと指を移動できるかという点に重点を置いています。そのため、ボール周りにボタンを密集させ作業効率を高めるための配置を行いました。
ー 製品自体のデザインもすごく特徴的ですよね。
デザイナー:これはできるだけ真似しやすいデザインにしています。
開発者インタビュー
ー 真似しやすいというのはどういうことでしょうか?
デザイナー:つまり、記憶に残りやすいということです。丸や三角という単純な形を組み合わせてデザインしていて、見た瞬間にどこに指を置くであったり、どのボタンにはどのショートカットを割り当てれば良いかなどが直感的にわかるように設計しています。
設計者:このモデルの開発の頃から、アメリカやヨーロッパでもすでにリリースされた2製品の反響が出て来まして。でも、アメリカのレビューを見ているとどうしても「(サイズが)小さい」という意見が多かったんですね。そこで、あまり手の大きさを限定させず、大きいボールを扱いやすいサイズというのをコンセプトに開発したのがHUGEです。
ー 実際このモデルの海外での反響は?
デザイナー:実際、すごく売れているんです。それは本当に嬉しいですね。
ー このモデルの特筆すべきポイントの一つが人工ルビーですよね。
デザイナー:そうですね。この大きなボールは中に配置された3つの小さな人工ルビーで支えています。
設計者:人工ルビー自体はこれまでの製品にも採用していたんですが、ボールを操作する上で引っかかりを抑え、滑らかに回せるようにするかというのを突き詰めたところ人工ルビーの精度が重要であるということに辿り着きました。そこで人工ルビーを顕微鏡で撮影して、できるだけ表面が滑かなものを選定し直しました。
デザイナー:ボールの摩擦抵抗を抑えるためには人工ルビーがとても重要でした。
ー ボールの色もこれまでの黒から赤へと変わりましたよね。
設計者:これまではデザイン性の観点から選んでいたんですが、センサーとの相性を50個程の色違いのボールを作って計測してみたんです。すると、この赤が一番反応が良く、さらにこの奥にあるシルバーパウダー層の吹付け量によって反応が変わるということもわかりました。そこで、最も反応の良い密度を見つけ出し採用しました。
EX-G TRACK BALL MOUSE 開発者インタビュー
ー そして、低反発素材を貼り付けています。
設計者:これは大変でした。平面ではなく、この形状に綺麗に貼り付けることに難航しましたね。
デザイナー:トラックボールを使用する上では、クッションを敷いて使用するユーザーも多いので、使用感を高めるために採用しました。
ー たくさんのアイデアが詰まっていますね。トラックボールの今後が気になりますが。
デザイナー:このジャンルはまだまだできることがたくさんあると思います。使用したことがない人もたくさんいるジャンルですので、新しいユーザーに向けてのアプローチできる可能性を秘めていると考えています。
ー では、マウスに限らずお二人が開発にチャレンジしていきたいことは何でしょうか?
設計者:AIを使った製品でしょうか。
デザイナー:二人でもよく話をするんですが、人工知能の進化はすごいですよね。何かしら新しいテクノロジーを新しいデザインと融合させて開発することができれば楽しいですよね。
設計者:五感を使ったコントローラーとか。まだまだできることがあると思います。
マウスの選び方
トラックボールマウス