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新卒採用情報

TDWプレミオ賞を狙え



島村 晃・石倉幹泰
星野惠美香・川嵜有加・矢代昇吾
狩谷祐一・阿萬知里

「TDW(東京デザイナーズウィーク)に出展してみないか?」

7人の社員の元に一通のメールが届いた。「TDW(東京デザイナーズウィーク)に出展してみないか?」。TDWとは、日本のデザインレベルの向上を目的として1997年から毎年開催されるデザインイベント。いくつかの部門があり、プロ・アマ関係なしにデザインを志す学生の作品展示、企業のアピールなどの場として活用され、都内のショップや特設会場で盛大に行われる。その中でエレコムが出展したのは、物品の輸送に使用されるコンテナの中を自由にデザインする「CONTAINER GROUND」。昨年は20万人もの観客を動員している。

2004年4月末、若き社員7名の挑戦は始まった。

このTDWにエレコムが出展を決めたのは、「知名度を上げる」という任務があったからだ。そのプロジェクトチームの一員に選ばれたのが、入社1年目、2年目の社員7人。部長からの突然のメールに一同は驚いた。狩谷、阿萬、矢代、星野、川嵜の新人5名は、まだ社内を歩くのにも緊張するような状態。石倉、島村の入社2年目の2人にも、まだ充分な経験があるとは言えなかった。けれど、誰一人断らなかった。「やります。」2004年4月末、かくして7名の挑戦は始まった。

酷評を越え、成功したプレゼンテーション

彼らに与えられた予算は1000万円、10月開催予定のイベントに向け、制作猶予は若干5ヶ月だった。しかも、5月末には社長へのプレゼンが予定されていた。ここで失敗すればこの企画自体が潰れる。とは言っても、議論を重ねても優良な案がすぐにまとまるはずもなかった。それでも社長へのプレゼンを週明けに控えた金曜日、どうにかして立てたプランを上司や先輩へ披露した。結果、惨敗。「完成度が低い」と酷評を受けた。
このまま終えるわけにはいかない。わずかな時間で大幅な修正を加え、それぞれが知恵を振り絞り、突っ走った。そして、迎えたプレゼン当日。エレコムの現状から知名度アップの必要性、その向上策について島村と石倉が熱く伝えた。漫才のようなコンビネーションも助け、社長も納得。無事承認を得ることができた。


●ファミレスにて会議中。
●「この7人で、必ず賞を取ってみせる」

プロジェクトが本格的に動き始めた。役割分担やスケジュール決め、そしてどんなデザインを施すか。通常通り仕事をする片手間で、すべきことは山のようにある。しかも、時間はない。最も苦戦を強いられたのは、やはり企画だった。「評価軸を立てなさい」という部長のアドバイスをもとに、持ち寄られるアイデアの全てに点数をつけていった。感動軸50点、驚き軸30点、といった具合に。時間を費やしながら、100から200出したであろうその内の、トップ10を選出した。当時1位のアイデアは実際に出展したものの前身とも言えたが、予算を見積もったところ5000万円。とても実現には踏み切れなかった。「休日にファミレスへ集合して、夜から朝まで意見を出し合ったりしました。」「疲れて機嫌が悪くなって、ケンカ腰で議論をしたこともあった。」「時間はないし、責任は重いし、もうどうしよう!って感じでしたね。」口々に語る様子は、今となれば楽しそうにも聞こえる。しかし、当時の彼らにそんな余裕は微塵もなかった。さらに議論を重ねた後、ついにプランが固まった。誰が言い出したのかも分からない状態。その場のノリか、直感か。「それでいこう!!」と盛り上がった。「エレコムを有名にする」「とにかく面白いものを作る」「必ず賞を取る」思いは一つになった。

●イベントの直前にやってきた台風

7月末、模型を作り部長にアイデアを説明した。NOという言葉を防ぐかのように7人が部長を囲んだが、「面白いけど何か物足りない…」と言われた。残すところ約2ヶ月。「足りない何か」を探し続けた。そしていよいよ、イベント開催。開催中に突然の台風が襲った。おかげで平日の夜や土曜日が中止になるなど、開催時間はかなり縮小された。他にも雨で足元が滑ったり、コンテナの中に浸水してきた。悲惨なコンテナの内部を社長に見られ、冷や汗を流す場面もあった。そんなハプニングを越えながら、本番を乗り切った。


●エレコムコンテナのエントランス。

●行列ができる大盛況となった。

●壁には一面のキーボードが・・・。
●大盛況!エレコムの「体験型」コンテナ

エレコムのコンテナは、外から見ると白で統一され、いたってシンプル。入り口でなにやら薄い紙を一枚渡され、訪れた観客はおそるおそる足を踏み入れる。中に入るとどこからかカタカタとキーボードを叩く音が鳴り、床から4本の光がスーッと浮かび上がる。観客は何かを探るような印象を受けたまま、そっと紙を光源にかざす。すると、その紙に文字が打ち込まれていく。打ち出されては変換され、まるでパソコンの画面を見ているかのような錯覚を覚える。その文章はユーモラスで、同じようにイラストレーター「ナカオテッペイ」氏の愉快なイラストも現れる。
この「体験型」コンテナは、7人がこだわった点だった。人はただ見ただけ、聞いただけでは忘れてしまう。そこで、紙を渡すことにした。紙を自らの手によって持ち、かざし、驚き、楽しむことで、記憶に留めてもらえるのではと考えたのだ。この試みは成功だった。観客はみるみるうちに増え、エレコムのコンテナの入り口から長蛇の列ができあがった。127台のコンテナの中でも、行列ができたブースは2、3箇所だったという。会場の人気アンケートでも多くの票を得た。「楽しかった!」「エレコムのことがまた好きになった」。これらの言葉が表すように、練りに練った企画は認められ、エレコムコンテナにはプレミオ賞が送られた。

●5ヶ月間にわたる挑戦を終えて

このプロジェクト成功を、7人はどのように捉えているのだろうか?「かなり大変だったけど楽しかった。」「開催日前日には『あかん、面白くない』と悲壮感が漂っていた。」「エレコムの名を背負っているので、責任感が重くのしかかっていた。」「イベント開始直後、いけると思った。」笑い声とともに、それぞれが今だから言える本音を語る。何よりもエンドユーザーと直接関わることができ、大勢から「ありがとう」と言われたことを喜んだ。そして最後に、彼らは言った。「エレコムはこんなにすごいこと、面白いことをさせてもらえる会社だということを、後輩たちに知ってほしい。」この2004年の物語は、エレコムが持つ情熱のほんの一部分に過ぎない。

●ナカオテッペイ氏のイラスト。

●入口で渡された薄い紙に映像が映る。

●TDWコンテナ展示場。

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