気候変動対応
エレコムグループは2022年4月に、TCFD提言※への賛同を表明しました。気候変動がエレコムグループの持続的成長に大きな影響を及ぼす重要課題のひとつであると位置づけ、気候変動が事業に与えるリスク・機会を分析し、経営戦略やリスクマネジメントに反映することにより、脱炭素社会とともに持続的成長を目指しています。また、エレコムグループは2023年に「2030年度にCO₂排出量(Scope1+Scope2)を2020年度対比50%削減する。サプライチェーンでのCO₂削減に取り組むとともに事業活動を通じて、世界が目標とする2050年カーボンニュートラルの実現を目指す。」の目標を掲げ、脱炭素社会の実現に向け取り組んでいます。
さらに、2024年には新たにパーパスを策定しました。「Better being」の理念に基づき、より良き製品、より良きサービス、より良き会社、より良き社会を追求し、世の中の大きな課題である気候変動への対応をより強く取り組んでいきます。
※TCFDは、金融システムの安定化をはかる国際機関である金融安定理事会によって2015年に設立されたタスクフォース。気候変動に起因する自社の事業リスクと事業機会が財務上に与える影響を把握・開示することにより、脱炭素社会への移行を推進することによる金融市場の安定化を提言している。
ガバナンス
エレコムグループは、パーパスを基盤として、よりよい地球環境の実現への持続的貢献を目指しています。気候変動関連を含めたサステナビリティ課題に対処するため、2021年にサステナビリティ委員会を立ち上げ、代表取締役社長が委員長を務め、気候変動リスクを監督しています。サステナビリティ委員会は毎月開催され、気候変動をはじめ、さまざまな要因による持続的な事業活動を阻害するリスクの洗い出し、またそこから生まれる新たなビジネス機会の提言、マテリアリティやKPIなどの重要事項の決定やその進捗確認、対策を立案しています。取締役会は半期に1回もしくは随時に、サステナビリティ委員会から気候変動を含むサステナビリティ活動に関する報告を受け、指示・助言を行い、活動を監視・監督しています。
戦略
エレコムグループは製造設備を持たないため、自社におけるCO₂排出は限定的です。その一方で、製造委託先や輸送時の排出が大きくなる傾向があり、気候変動関連課題がグループの中長期的な事業リスク・機会に与える影響は決して少なくないと認識しています。「環境方針」のもと気候変動関連課題への取り組みを進める中、2022年に公表されたIPCC第6次報告書、またIEAネットゼロシナリオをもとにシナリオを想定し、重要リスク・機会を特定し、その対応策について検討しました。
- 炭素税や国境炭素調整税の導入など法規制や脱炭素施策の施行が、これまでの想定よりも厳しく、かつ前倒しで進行する。
- 脱炭素化への行動強化のもと、社会や顧客における製品やサービスに対する低炭素化指向が一層高まる。
- 過去のNDCs※の甘さから一次的に目標をオーバーシュートすることによる、台風や集中豪雨などの自然災害の増加がより顕著にみられる。
- 戦争や紛争に伴い、気候変動対策への合意形成の停滞やNDCsの達成が遅れ、気温上昇が想定通りに抑えられない。
- 合意形成の停滞やNDCsの達成の遅れにより、エネルギー価格の上昇がみられる。
- 結果として台風や集中豪雨などの自然災害が広域で多発し、慢性的な気温上昇に伴い熱中症や蚊媒介感染症がより広範囲で多発している。
※NDCs:国が決定する貢献。パリ協定批准国が、それぞれに提出した温室効果ガスの排出削減目標。
エレコムグループの強みは、市場の需要やトレンドに対して迅速に対応する製品開発力と調達能力、またその製品をタイムリーにお客様のもとに届ける営業機動力と物流能力を持った強固なサプライチェーンだといえます。シナリオ分析の結果、気候変動ならびにそれに対する規制強化対応は、永年培ったこれらの強みを損なう可能性があることがわかりました。一方、気候変動に対して積極的に緩和・適応することは、お客様の脱炭素化を支援する製品やソリューションの提供や、グループのコスト削減の機会を生み出すこともわかりました。
◆シナリオの世界観
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◆リスクと機会
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リスクに基づいた財務影響
エレコムグループにおけるScope1・2に該当するCO₂排出量の70%以上は電気の使用によるもので、グループにおけるCO₂削減の取り組みは、再生可能エネルギーの調達が重要と考えています。このような状況のもと、財務に与える影響については炭素税の導入と再生可能エネルギーに由来する電気料金の変動が2030年に向けた指標のひとつであると考え、その影響を定量的に試算しました。なお、製造委託先国の炭素税は、調達コストにも少なからず影響すると予想されますが、この試算には含めていません。
◆移行が予定通り進んだ場合とそうで無い場合の2つのケースについて、財務への影響を定量的に試算(2030年時点)
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【前提条件】
・国内グループ会社Scope1・2
・2030年時点のScope1・2CO₂排出削減量(2020年度:2,785t-CO₂対比)の変動 50%~0%
・2030年時点の再エネ由来電力の使用比率(2020年度:4,492,924kWh)の変動 50%~0%
・購入電力の排出量は、電力排出係数の変動を考慮
2020年電事連電力排出係数:0.441kg-CO₂/kWh
2030年電事連電力排出係数目標:0.37kg-CO₂/kWh
・炭素税は2020年から2030年の変動(予想)を考慮
2020年の炭素税:289円/t-CO₂
2030年の炭素税予想:19,538円/t-CO₂
気候変動リスク管理
気候変動に伴うリスクには、政策や規制の強化に伴う事業活動の制限やコストの増加、ステークホルダーの意識の変化、技術の進展などに起因するものと、気象災害の激甚化や気温上昇などにみられる異常気象の慢性化など気候変動に起因するものが考えられます。
エレコムグループは、気候変動に伴うさまざまなリスク要因について部門を横断し、収集しています。具体的には、サステナビリティ委員会の環境対策WGが関連部門と議論のうえ、重要な気候変動関連リスクを特定し、それぞれの影響度を大・中・小の3段階で評価します。そして、それらが現れる時期を短期・中期・長期の視点で分析したうえで、取り組み方針や対応策を検討します。
取締役会は、半期に1回もしくは随時、サステナビリティ委員会より課題提示や報告を受け、適宜議論し、グループ全体の経営リスクの1つとして執行状況を監督しています。
指標・目標
エレコムグループは、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に抑える目標の達成に向け、管理指標として2023年3月期に中長期的なCO₂排出量削減目標を設定しました。
◆2030年度にCO₂排出量(Scope1+Scope2)を2020年度対比50%削減する。
◆サプライチェーンでのCO₂削減に取り組むとともに事業活動を通じて、世界が目標とする2050年カーボンニュートラルの実現を目指す。
2023年度は、電力使用量が多く、かつ自社所有である事業施設について優先的に再生可能エネルギーへの切り替えを進めました。該当する事業施設における電力使用量は国内グループ会社全体の約25%におよび、削減効果も大きいことから、前年度末から電力事業者と準備を進め、4月より使用電力を再生可能エネルギーへ変更しました。結果として、兵庫物流センターのLED化と人感センサーの導入効果も相まってScope1・2のCO₂排出量を18.4%(2020年度⽐)削減することができました。2024年度は2020年度比24%削減を目指し取り組んでいます。
エレコムグループの電気・ガス・ガソリンの消費量ならびにCO₂排出量
2023年度は、異常気象の影響から11月まで気温の高い状況が続き、各施設で空調設備の利用が多く、例年と比べ電力使用が多い月も見られました。
しかし、再生可能エネルギーの導入や省エネ効果などにより、Scope1・2のCO₂排出量は前年度に対し629t-CO₂減少し、エレコムグループ目標である2030年度に50%削減(2020年度比)に対して36%の進捗となりました。
一方、事業拠点単位でみると、移転・人員増などによる延床面積の増加および新たな機材や機器の導入に伴い、電力使用量が増加している事業拠点も見られることから、拠点ごとに最適なCO₂排出量削減方法を検討し、引き続き取り組んでいきます。
また、2023年度には、エレコム単体における2021~2023年度のScope3を算定しました。算定によりScope3が事業全体のCO₂排出量の約99%を占め、その約92%がカテゴリ1(購入した製品・サービスの製造過程で排出されるCO₂)だと分かりました。今後、Scope3削減に取り組まなければ、世界が目標とするカーボンニュートラルは達成できません。エレコムグループは事業が及ぼすサプライチェーンにおける環境負荷を考慮し、サプライヤーや委託業者とのCO₂削減に向けた協働や、将来的にはLCAの取り組みにも挑戦し、製品の環境負荷軽減を進めていきます。