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2026.02.05

「特別な道具」ではなく、 誰もが手に取れる1台に。
エレコムが挑むインクルーシブデザインの第一歩 (後編)

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「特別な道具」ではなく、
誰もが手に取れる1台に。
エレコムが挑む
インクルーシブデザインの第一歩
(後編)
「特別な道具」ではなく、誰もが手に取れる1台に。エレコムが挑むインクルーシブデザインの第一歩(後編) 「特別な道具」ではなく、誰もが手に取れる1台に。エレコムが挑むインクルーシブデザインの第一歩(後編)
Introduction

エレコムは、全ての方がより快適に、より便利にパソコンやスマートフォンを使うための周辺機器の開発に取り組む中で、2023年から「インクルーシブデザイン」を取り入れた開発をスタートしました。今回の製品では、視覚に障がいのある当事者の方々にもご協力いただき、ともに製品をつくり上げています。今回は、完成した「触覚フィードバック搭載モバイルバッテリー」を実際に使っていただきながら、エレコムで商品開発を担当した佐伯・古谷とともに開発の裏側についてお話をうかがいました。

「触覚フィードバック搭載 モバイルバッテリー」
製品の詳細はこちら

「『しろちゃん』モデルがあることが嬉しいんです」―
大阪府ITステーションのみなさんと振り返る開発の裏側

インクルーシブデザインを取り入れた製品を開発するにあたり、2023年10月、大阪府ITステーション様へエレコムのメンバーが初めて訪問。それ以降デジタルデバイスの利用方法に関するヒアリングや試作品のチェックなど、何度もお世話になりました。

左:大阪府ITステーション 福田様、中央:大阪府ITステーション 幸田様、右:大阪府ITステーション 伊原様

大阪府ITステーション

障がいのある方がICT技術を活用して、社会参加と自立の促進に貢献することを目的とし、2004年9月に開設されました。アクセシビリティ機能の講習など支援機器の利活用にかかる啓発や、コミュニケーション支援のためのICTサポートを行うとともに、就労支援相談や各種IT講習を実施するなど、障がいのある方の活動をサポートされています。

主な事業内容

障がい者ICT支援事業/障がい者就労支援IT講習/ITサポーター養成・派遣/情報発信/eラーニング講座 など

 まずは、完成したモバイルバッテリーを使ってみての感想を教えていただけますか。

幸田様: ケーブルを挿すと、振動がはっきり伝わってきますね。コンパクトで手になじみますし、ボタンやポートの位置も迷わず分かります。ボタン周りの突起も、指先で「ここだ」とすぐに分かる触り心地で、とても安心感があります。

挿す向きを気にせず使えるUSB-Aのケーブルも
実際に試していただく。

 ありがとうございます。幸田様は普段はITステーションでどんなお仕事をされているか、おうかがいできますでしょうか。

幸田様: 視覚障がいのある方向けの相談支援やIT講習が主な仕事です。視力が低下して間もない方は、耳から情報を得ることにまだ慣れていないので、その聞き取り方や操作の仕方から一緒に練習していきます。視覚障がい者はマウスを使わずキーボードだけでパソコンを操作しますから、そのキー操作もゼロからお伝えします。森ノ宮にある盲ろう者(視覚・聴覚に重複して障がいのある方)の支援センターでも、必要なサポートを行っています。

 佐伯さんは、最初にこちらでお話をうかがった時のことを覚えていますか。

佐伯: はい、すごく印象に残っています。視覚に障がいのある方がパソコンやスマートフォンを使われていること自体は知っていたのですが、「どんな場面で、どう使っているのか」は正直イメージしきれていませんでした。

最初にお話をうかがったとき、画面が見えない中でスマホを使って買い物もされていると聞いて、「ここまで使いこなしているんだ」と驚きました。同時に、当社製品に対する具体的な不便や要望も次々に挙がってきて......。モバイルバッテリーの残量が分かりにくいというお話も、そのとき初めて知った内容のひとつです。

 エレコムの製品開発の話を聞いた際に、期待したことや不安だったことはありましたか。

幸田様: できることなら、「障がい者のための特別な製品」というより、最初から「みんなのための製品」として作ってほしいという思いがありました。障がい者のための製品を作っていただけるのは本当にありがたいのですが、いかにも支援機器と分かる見た目だったり、逆にとってつけたような特別なデザインだったりすると、正直、日常で使うのは少し構えてしまうんです。

その点、今回のモバイルバッテリーは、誰が持っていても自然で違和感のないデザインに仕上げていただけたと感じているので、そこがいちばん嬉しいところですね。白いモデルに「しろちゃん」の顔が入っているのも、個人的にはすごく気に入っています。

エレコム製品にたびたび登場する、人気キャラクター「しろちゃん」

佐伯: しろちゃんを入れるかどうかは、実はかなり迷いました。最初におうかがいしたときから、幸田さんが身の回りのものをピンクでそろえていたり、持ち物の見た目にもこだわっていらっしゃるのを拝見していて。「かわいい要素を入れたいな」とずっと考えていたんです。

幸田様: 「見えないから模様はいらないよね」と切り捨てるのではなく、あえてつけようと思ってくださったことが、何より嬉しかったです。

 ヒアリングのあと、試作品を何度かご覧いただきました。その際、印象に残っていることはありますか。

幸田様: 最初に「残量が分かるモバイルバッテリーが欲しい」とお願いしたとき、「それならできるかも!」とすぐに言ってくださったのが印象的でした。ただ、心のどこかで「本当に実現するのかな......?」という気持ちもあって。企業さんからヒアリングを受ける機会はよくあるのですが、「参考にさせていただきます」で終わってしまうことも少なくありません。後日たくさんの試作品を持ってきてくださったときは、「本当に進んでいるんだ」と思いましたし、みなさんが「触って感じる」ということをすごく勉強して作ってくださったんだなという印象を受けて、私自身ハッとしました。

スマートフォンと試作品を合わせて触れてみて、使い心地を検証していただいた

 ITステーションのみなさまは、どのように感じておられましたか。

福田様: 私たちも正直、最初は「本当に製品になるのかな?」という半信半疑な気持ちはありました。でも、試作品を何度か見せていただいたあと、「ここから先は発売予定の製品の機密情報になりますので」と、書面での取り交わしの話になって。「これはエレコムさん、本気やぞ」と、幸田と顔を見合わせたのを覚えています(笑)。そこからは、期待のほうが大きくなっていきましたね。

伊原様: みなさんが何度も足を運んでいただいている姿を見ていて、スムーズに作られている印象があったので、発売まで2年かかったというのが意外に感じました。ただ、先ほど安全性の試験をかなりしっかり行ったとうかがって、時間がかかったのも納得です。最近はモバイルバッテリーの発火事故も増えていますから。あと、10,000mAhなのに思ったより小さいですし、価格も抑えられていて買いやすいですよね。

古谷: そう言っていただけて、ほっとしました。お時間はいただいてしまいましたが、その分「安心して長く使ってもらえるものにしたい」という思いは込められたかなと思います。

 ありがとうございます。いただいた声を励みに、今後もより良い製品開発をめざしていきます。

「ゲーム機も充電できる容量で、使いやすい設計になっている」
~神戸アイライト協会様

神戸アイライト協会様とのご縁も、視覚障がいのある方へのヒアリングから始まりました。神戸とその周辺地域から多くの方が集うこの場所で、日常生活の中で感じているお困りごとや「こんな製品があったらいいのに」という声をうかがうことができました。

左:神戸アイライト協会 浅沼様、中央:神戸アイライト協会 熊澤様、右:神戸アイライト協会 飯山様

神戸アイライト協会

活動内容

視覚障がいの方を対象にした支援を行う認定NPO法人です。視覚障がい者の地域センター的機能の充実、優秀なガイドヘルパーの育成とネットワーキングの充実、訪問リハビリテーションの確立、神戸地区に(訪問)歩行訓練士の複数配置を目的に掲げ、幅広い活動を行っています。

主な事業内容

相談(医療・福祉機関との連携)/訪問サポート(白杖歩行指導等)/就労継続支援B型・地域活動支援センターなど通所施設の運営/視覚障がい者ガイドヘルパー養成・音声パソコン講習/イベント開催 など

 完成した製品がこちらになります。ぜひ、開封から試してみていただけますか。

熊澤様: なるほど、このミシン目からペリペリっと開けられるのは便利ですね。開け口が下側にあるのは最初少し迷いましたが......今は視覚障がい者もSNSなどで情報を得ている人が多いので、事前に口コミで「ここから開けるよ」と広まっていれば、スムーズに使えそうです。ほかの製品にも、この開け口が広がるといいですね。

古谷: 今回の取り組みがうまくいけば、ぜひ他の製品にも展開していきたいです。

熊澤様: 外箱を開けるとすぐ中の台紙に触れられて、自然と指を差し込んで取り出せる形になっているのもありがたいですね。箱は開いたけれど、そのあと中身をどう取り出したらいいのか分からない、ということがよくあるので。実際の製品のほうも......10,000mAhだと、スマホはもちろんですが、Nintendo Switch™の充電もできそうですね。

初見の状態で、パッケージを開けて商品を取り出していただいた

 Nintendo Switch™ですか。普段からゲームをよくされているんですか?

熊澤様: ゲームは、私にとって生きがいと言っていいくらい大きな存在です。Nintendo Switch™やPlayStation®でも、ソフトを選べば視力に頼らずプレイできるものがあるんですよ。まだプレイ人口は多くありませんが......。だから今回、モバイルバッテリーを開発されると聞いたときは、スマートフォンやノートパソコンに加えて、「Nintendo Switch™を持ち運ぶときにも使えるかな」という点がとても気になっていました。

古谷: 最大出力は20Wなので、完全にバッテリー切れの状態からフル充電までは難しいかもしれませんが、「少し足りない」ときに補う用途なら十分に使っていただけると思います。

 エレコムのメンバーがヒアリングや試作品で何度かおうかがいしましたが、どのような印象でしたか。

熊澤様: とても温かい社風の会社さんだなと感じました。いろいろな企業の方とお会いする機会がありますが、エレコムのみなさんとは、こちらも肩の力をほどよく抜いて、ラフに本音を話せたように思います。

佐伯: そう言っていただけると、とても嬉しいです。私たちもこうした取り組みは初めてで、身近に視覚障がいのある方がいたわけでもなく、最初は「何をどうおうかがいすればいいか」「失礼にならないか」と、実はかなり緊張していました。

熊澤様: 確かに、人によっては障がいに触れられたくなかったり、特別扱いされたくないという方もいらっしゃいますが、誰と話すときにも共通するコミュニケーションの難しさのようにも思われます。

佐伯: おっしゃる通りだと思います。誰にでも「言われたくないこと」「踏み込んでほしくないこと」はありますし、お互いを思いやりながら話すという点では、特別な違いはないのかもしれません。そう実感できたのも、大きな学びでした。

熊澤様: 神戸アイライト協会にも、さまざまな視覚障がい者の方が来所されますが、一人ひとり性格も考え方も、趣味も違います。視覚障がいは、あくまでその人を形づくる要素の一つに過ぎないと日々感じます。そうした中で今回、私たちが意見を話しやすい空気をつくってくださったのはありがたかったです。

実際の使用シーンについても話がふくらむ

 神戸アイライト協会のお二人からご覧になって、エレコムのメンバーの様子はいかがでしたか。

飯山様: 前回来所されたときに試作品を初めて触らせていただき、「本当に形になっていくんだ」と実感しました。機能的でスタイリッシュで、さりげなく配慮が行き届いている製品になっていると感じます。

浅沼様: こうして完成品を手に取ることができて嬉しいです。ボタンも押しやすく、それでいて誤作動はしにくい――ちょうどそのバランスになっているのがいいですね。

佐伯: ボタンの周りに点字をつけるかどうかは、最後まで悩んだポイントでした。

熊澤様: あれば便利な場面もあると思いますが、視覚障がい者でも点字を読めない人は多いんです。そのためだけにコストが上がってしまうのであれば、むしろシンプルで、誰にとっても買いやすい価格に抑えていただけるほうが、当事者としてはありがたい部分もありますね。

 今後のエレコム製品に、期待されていることはありますか。

熊澤様: モバイルバッテリーに関して言うと、容量やワット数がもう少し大きいモデルがあると、さらにうれしいですね。日頃からパソコン周辺機器はエレコムさんの製品をよく使っていまして、キーボードも視覚障がいがある人でも使いやすいものが多いんですね。ですので、個人的にはいつかエレコム製のパソコンが出てきてくれたら......と密かに期待しています。ハードルは高いかもしれませんが、実現したらとても面白いと思います。

 夢は大きく、頑張ります......!本日はありがとうございました。

インクルーシブデザインの取り組みは、まだまだ始まったばかり。エレコムグループは、今まで、そしてこれからも、より良き製品・サービス・ソリューション、より良き社会、より良き会社を追求しつづけます。

  • Nintendo Switch™、Nintendo Switch™(有機ELモデル)、Nintendo Switch lite™は任天堂株式会社の登録商標です。
  • PlayStation®、PS3®、PS4®、PS5™は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの商標または登録商標です。

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