Better being Stories
Better being
葉田順治会長が
新パーパスに込めた思い
Better being 葉田順治会長が新パーパスに込めた思い Better being 葉田順治会長が新パーパスに込めた思い
Introduction
2024年5月。エレコムグループは、パーパス「Better being」を制定しました。
「Better being」は、葉田順治取締役会長にとっても、過去、現在、未来における自身のパーパス。
その姿勢は、会社経営のみならず、かねてから力を入れている社会貢献活動にも反映されています。
なぜ、今「Better being」をパーパスとしたのか。どのような形で「Better being」を実践していこうとしているのか。フリーアナウンサーの平井理央さんをインタビュアーに迎え、葉田会長が語ります。
エレコムグループ パーパス
better being
エレコムグループは、今まで、そしてこれからも、
より良き製品・サービス・ソリューション、より良き会社、
より良き社会を追求しつづけます。
より良き技術・品質を追求して、世界の人たちを幸せにし、社会を良くする。
より良き地球環境や地域社会を目指し、持続可能な社会や環境に貢献する。
今ここにとどまらず、より良き未来へ動きつづける。
"Better being" は、私たちエレコムグループの存在意義です。

〈取材場所:レクトーレ葉山 湘南国際村〉

より良き社会を創っていく会社でありたい

平井: 「Better being」の核となる考え方について教えてください。

葉田: これはエレコムグループの新しいパーパスですが、その概念自体は1986年の創業以来、ずっと当社にあったものなんですね。自分がエレコムグループを経営する上で、もっとも大切にしてきたことは「利益」ではなく、「より良き社会を創っていく」「より良き会社を創っていく」ということ。その先に利益は生まれてくるものであって、先に来るものではない。このエレコムグループの本質的な姿勢を、世間の皆様、社員たちに共有したいと考え、改めてパーパスとして定めた形です。

平井: 創業以来、大切にしていた考えを、なぜこのタイミングで共有されようと思われたのでしょうか。新パーパス設定のきっかけなどがあれば、教えていただきたいです。

葉田: 昨今、世の中は国際化も含めて大きく変化し、同時にエレコムグループは海外においても急速に事業を拡大しつつあります。我が社が世の中にどう見られるのかを考えた時に、やはりもっとも大切にしている「より良きものにしていきたい」という思想を言葉にした方がいい、というのがひとつあります。

葉田: あとは、社員たちへのメッセージ。私たちの会社は、生まれて40年にも満たない若い会社ですが、M&Aを推し進めた結果として従業員は2,000人を超え、企業文化はいい意味で言えば多様なものとなり、悪く言えば本来大切にしていた思想がボヤけてしまった部分もあります。そこでエレコムグループが持つ「本質」をシンプルな言葉に込めて、社員たちに浸透させようとしているのです。

平井: 全社員の拠り所となる、北極星のようなものが必要だと考えたということですね。

葉田: その通りです。正直言って、20年ほど前までのエレコムは、いわゆる「トップダウン」の会社でした。効率よく成長するためには、それが最適な手法でもありましたし、実際に機能しました。

しかし、今は違う。これからのエレコムグループ社員は、 一人ひとりがより主体的に物事を捉え、考え、行動していかなければ成長はしていかないと考えています。ですから、「Better being」というパーパスそのものの捉え方も、社員一人ひとりにとっては違うかもしれない。あえて、そこに"余白"を作ること、解釈の幅を持たせることも重要だと思っていて、それを事細かく規定すると本質から外れていってしまう。ですから、社員には、その言葉が持つ「本質」を自分なりに見つけて、それぞれの「Better being」を実践してくれたらと考えます。

激しい闘志を秘めたBetter being

平井: 先程お話に上がりましたが、エレコムグループは創業今年で38年と"若い会社"とも言えます。それがここまでのグループを形成するまでに至ったわけで、そこには会長ご自身が、常にアグレッシブな姿勢で経営に臨まれてきたからなのではないかと拝察しております。

葉田: 確かに今まで無茶なこともしてきました(笑)。その昔、日本のパソコンや周辺機器って、本当に格好が悪かったから、「エレコムが常識を変えるんや‼」って息巻いて、世界的なインダストリアルデザイナーであるハルトムット・エスリンガーさんに、少々強引にコンタクトをとって、仕事を依頼したんです。当時は年間売上20億円ぐらいの日本の無名の会社ですよ。それが、Apple IIcをはじめとする初期のアップル製品のデザインを担当したエスリンガーさんに仕事をお願いするなんて、無茶もいいところ。

でも、そういうことの積み重ねの先にしか、より良き製品を生み出すことはできません。振り返れば、デザインに限らず、常にギリギリのところで勝負してきたように思います。それもこれも、より良きものを作りたい、世の中を良くしたいという一心からなんです。

平井: Better beingはまさに会長の行動原理そのものということですね。言葉としては一見穏やかなものに見えますが、実践されている会長のご様子からはもっとアグレッシブなものを感じます。

葉田: そうかもしれません。私は、一事が万事そんな感じです。椅子に座って考え込むくらいなら、実際に身体を動かして汗をかいた方がいいと考えます。もし平井さんが、「Better being」という言葉にそんな泥臭さを感じ取ってくれたら、それはその通りですね(笑)。

今日来ていただいたエレコムグループの研修特化型施設「レクトーレ葉山 湘南国際村」にも「Better being」の精神が反映されています。少しでもいい空間を作って、一人でも多くの人に喜んでもらおうという気持ちから、先頭に立って建物のリノベーションを続け、庭園づくりなどにも取り組んでいます。もっとも私はそういうものを学術的に学んだ経験はありませんが、「より良き自分になりたい」「より良きものを作りたい」という思いから、日々勉強をしています。その思いを動機とした積み重ねがあればこそ、いい形の実践が生まれるのだと思います。

児童養護施設「東紀州こどもの園」を作ったきっかけ

平井: エレコムグループは社会貢献活動にも熱心に取り組まれています。社会におけるエレコムグループの役割とは、どんなものだと感じられていますか?

葉田: 社会をより良き方向に変えていくため、自分たちのできることから少しずつでも社会貢献活動に取り組んでいくことですね。直近では、私の故郷である三重県熊野市に、児童養護施設「東紀州こどもの園」を作りました。

平井: 取材前に「東紀州こどもの園」の写真を見せていただきましたが、木の曲線を活かした素晴らしい建物でした。世界的な建築家である隈研吾(くま・けんご)さんが設計されたそうですね。

葉田: 私は、経済的・社会的に恵まれない環境の子どもを支援するための財団を個人で設立しており、児童養護施設で育ったことに負い目を感じて生きている施設出身者が多いことを知っていたので、とにかく子どもたちが育ったことに「誇り」を持てる施設を作りたいと考えました。だからこそ、隈研吾さんに設計をお願いし、また建材や作り手も地域性にこだわりました。地元の山からスギやヒノキといった紀州材を伐り、地元の工場で製材して、地元の大工さんに作ってもらったのですが、関わったすべての方々の思いが一体となって、非常にいい施設が完成したように思います。人の善意って凄いもんだなと感激しました。

平井: 社会貢献活動をするにあたって、児童福祉施設を選ばれたのは、どのような思いからなのでしょうか?

葉田: 熊野市の児童家庭支援センターを訪問した際、子どもたちがのびのびと育っているイメージのあるいわゆる田舎にも、児童虐待があることに衝撃を受けたのがきっかけでした。そうそう平井さんは、乳児院に行かれたことはありますか? 保護者との生活が困難な乳児を保護・養育する施設なのですが、実際に足を運べば人生観が変わると思います。生後一週間くらいの赤ちゃんが連れてこられて、3歳ぐらいまで過ごしているんです。その後、里親がいなかったら18歳まで児童養護施設で育つ。彼らには頼るべき家庭がないんですよ。どう思われますか? 私は、そういう現実を目の当たりにして、やはり心が痛んだ。

葉田: 今日本では、毎日500人の児童が虐待されていると言われています。その現実を、少しでも何とかして変えたいと思ったんです。もちろん全員を救うことはできないかもしれませんが、せめて自分のできる限りのことはしていきたい。そこで私は、2017年に公益財団法人葉田財団を立ち上げ、児童養護施設への寄付活動、卒園者支援を目的とした奨学金制度、精神面をサポートするメンタリング活動などに着手しました。「東紀州こどもの園」も、個人として同じ趣旨で作った施設です。

そうそう、この「レクトーレ葉山 湘南国際村」も、社会貢献に活用しているんですよ。地域の児童養護施設で暮らす子どもたちを招待していこうと考えています。これからも葉山町の一帯に、子どもが遊べる場所をどんどん作っていこうと思っています。ゆくゆくは葉山にも児童養護施設を作ろうとも考えています。

「レクトーレ葉山 湘南国際村」から見える葉山の海。天気のいい日中には、海の向こうに富士山が見える

平井: 社会貢献活動をする上で大切にしていることはありますか?

葉田: これはビジネスにおいても言えることなのですが、「実際に手を動かす」に尽きますね。ごちゃごちゃ言わんと実践するしかない。「何とかしなくてはいけない」と言葉で言うのは簡単です。しかし実際に行動を起こしている人が、どれだけいるでしょうか。

とにかく実際の行動、それもユニークな行動を起こすことが重要です。「東紀州こどもの園」にしても、ただ建てるのではなく、隈研吾さんに設計を依頼することによって、とてもいい施設が完成したし、世間からの注目を集めることができました。つまり児童福祉に関する問題が存在することを、広く社会に周知することもできたわけです。今、SDGsだ課題解決だと、多くの方はおっしゃるけれども、それで行動が伴っていなければ意味がない。動かなければ、問題は問題のままだし、社会はBetterにはなっていかないと思います。

思い悩んでいるだけでは、何一つ進まない

平井: お話を伺っていて、会社経営においても、社会貢献活動においても核となっているのが「Better being」であることが伝わってきました。新しいパーパスとして今後、社員の皆さんが「Better being」を実践しつづけることで、未来のエレコムグループがどうなることを願っていらっしゃいますか?

葉田: 先程の繰り返しにはなりますが、上の言いなりになって動くのではなく、あくまで能動的に、新しいことに挑戦できる「個」の集団になってもらいたい。新しいことにチャレンジするにあたって「失敗したらどうしよう」と考えてしまうのは当たり前です。ですが頭の中で思い悩んでいるだけでは、物事は何一つ進まない。とにかく実践することです。

その結果として、エレコムから新しい価値が創造されていくと思うんです。それは新製品かもしれないし、新しいサービスかもしれない。より力を入れていくアメリカでの市場開拓にもつながるかもしれないし、広く社会貢献という目に見えない形で発揮されることだってあるでしょう。とにかく何か新しいことにチャレンジしてもらいたい。そして実践する際、その源泉となる「社会をより良くしたい」というスピリットこそが重要だと考えています。

平井理央さん
インタビュアー

平井理央さん

ひらい・りお。フリーアナウンサー。1982年11月15日生まれ、東京都出身。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。2006年より、スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックなど国際大会の現地中継等、スポーツ報道に携わる。2012年に同局を退社し、フリーアナウンサーに転向。以降、ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティ、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活躍中。

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