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2026.02.09

"安心・安全"を当たり前にするために―ナトリウムイオンモバイルバッテリー開発者が語る、安全への挑戦(後編)

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"安心・安全"を
当たり前にするために―
ナトリウムイオンモバイルバッテリー
開発者が語る、
安全への挑戦(後編)

「モバイルバッテリーの戦国時代」を
読み解く "固体系"の行方

 ナトリウムイオンモバイルバッテリーは、市場を席巻していきそうですね。

田邉: ただ、リチウム、リン酸鉄、ナトリウムといった素材や、半固体電池にはそれぞれ強みと限界があります。ですから、どれかひとつに一気にシフトするより、用途に応じた最適解を並走させるかたちになると思います。最終的には、各素材の良さを高いレベルで両立させた理想像を目指す、というイメージです。

▲ナトリウムイオンモバイルバッテリーの筐体には、
再生プラスチックを使用。環境負荷の低減を目指した素材選び

 モバイルバッテリーの「ゴール」は、どこにあるのでしょうか?

田邉: 現在主流となっているバッテリーはいずれも液体電解質を使っています。今後は、液体電解質がゲル状となった半固体電池や、電解質がすべて固体になった全固体電池へと進化し、安全性と安定性がさらに向上する見込みです。

清水: 一般的なリチウムイオン電池で起こる熱暴走のリスクに対し、半個体電池は可燃性の電解液をゲル化することで、電池に含まれる可燃性の液体量を減らすことで発火リスクを低減できると期待されています。

電池業界では、全固体電池はまず自動車産業で先行して導入され、その後にモバイルタイプへ波及していく可能性が高いと見ています。普及する時期はテクノロジーとサプライの成熟度に左右される部分もあると思いますが。

 充電技術の未来について伺いたいです。パソコンやスマートフォンのバッテリー性能は年々向上し、「空間充電」の研究も進んでいます。20年、30年先、モバイルバッテリーはまだ私たちのそばにあると思いますか?

田邉: 電波を使って離れた場所にある機器に電力を供給する「空間充電」が実用化されれば、ケーブルで充電するという行為自体が減る可能性はあります。その意味で、市場は相対的に縮小すると見ています。

清水: とはいえすべてが無線化されるわけではないと思っています。たとえば基盤インフラ領域では、有線接続が合理的な選択となるケースもあります。発電所や定置型蓄電池のように、必要なときに必要な分だけ電力を届けるという設計が進み、その上でユーザーは充電を意識しない体験に近づいていく。私たちは、どこでも安全に電気が使える環境を、身近なモバイルバッテリーから一歩ずつ広げていきたいと考えています。

どこでも、安全に、電気が使える状態をつくる〜人の暮らしを"より豊かに" 〜

 エレコムグループのパーパス「Better being」は、開発の中でどのように意識していますか?

田邉: ここ数年、「モバイルバッテリーって危ないの?」という不安が一気に広がりました。生活に不可欠なものを怖がりながら使うのは健全ではありません。だからまず、皆さんが安心してモバイルバッテリーを使える日常を取り戻したいんです。もちろん、安全だけでなく、環境負荷や児童労働といった社会課題にも正面から向き合う。製品に関わる人すべてが"より良く"暮らせる世界を実現する。それが私たち開発者にとっての「Better being」です。

清水: これからは住宅・ビル・工場、発電所などに据え置き設置する蓄電システムにも本気で取り組みます。いまの暮らしは、どこにいても電気が必要ですよね。電気が人の生活をより豊かにしているからだと思います。だからこそ私たちは、「どこでも、安全に、電気が使える状態をつくる」ことを目標にしています。社会にある充電のストレスを減らし、必要なときに必要な分だけ、安全に電力が届けられる未来を、自分たちのプロダクトで前進させたい。そのための開発を、これからも地道に積み上げていきます。

 強い決意を感じる言葉ですね。なぜ、そう考えるようになったのでしょうか。

田邉: エレコムグループは、本当に多くの製品を世に出しています。開発のスピードは他のメーカーを圧倒していると思うんです。正直、「時間をかければもっと良くできるはず」と思いながら、今できるベストを尽くして発売することもあります。どこかに"負い目"を感じながらも、昨日より良い製品をいち早くユーザーに届けるため、製品開発をしています。最近ではプラスチックから紙へのパッケージの切り替えや、筐体への再生樹脂の活用など環境に配慮した開発を進めています。短期的にはコストが上がることもある。でも、そこで見て見ぬふりはしない。振り返ったときに「あのときやるべきことをやらなかった」とは、絶対に思いたくないからです。

清水: 安全で、環境にもやさしい。それがユーザーの満足にも、会社の信頼にもつながり、ちゃんとプラスになる。そんな良い循環をつくっていきたい。モバイルバッテリーのような身近な領域から、少しずつ世界をより良き方向へ。それが、私たちの役割だと思っています。

▲エレコムは、16年間にわたってモバイルバッテリーを販売。
12年連続で国内販売台数No.1を獲得している(※4)

  • 4 BCNランキング2014年1月~2025年12月のモバイルバッテリ・充電器部門での販売数量実績

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