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2026.02.25

デジタルのライフラインに、確信を。エレコムが半固体電池モバイルバッテリーで挑む「安全の再定義」

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デジタルのライフラインに、確信を。
エレコムが半固体電池モバイルバッテリーで挑む
「安全の再定義」
デジタルのライフラインに、確信を。エレコムが半固体電池モバイルバッテリーで挑む「安全の再定義」 デジタルのライフラインに、確信を。エレコムが半固体電池モバイルバッテリーで挑む「安全の再定義」
Introduction

より安全なモバイルバッテリーを、当たり前のものにしたい

私たちの日常に溶け込み、デジタルのライフラインとなったモバイルバッテリー。しかしそれは同時に、「いつ発火するか分からない」「いつ寿命が尽きるか見えない」という、不透明なリスクを抱えたデバイスでもあります。

2026年2月にエレコムが発表した「半固体電池モバイルバッテリー」は、バッテリーが宿命的に持つリスクを、現時点での最新技術を駆使して低減。さらに、持ち運びやすいサイズや十分な容量といった実用面においても、一つの"最適解"と言えるプロダクトに仕上げました。

なぜ、エレコムは今、この形に辿り着いたのでしょうか。本プロジェクトを牽引した4人のキーパーソン──田邉明寛、須賀唯、清水光則、藤田ひろむに話を聞きました。

「今できる最良」を届けるという誠意

エレコム大阪本社で取材に応じた田邊、須賀、清水(写真左より)

モバイルバッテリーという製品は、便利である一方で、常に物理的なリスクと隣り合わせにあります。エレコムはこれまで、2022年に「リン酸鉄リチウムイオンモバイルバッテリー」、2025年には世界初(※1)の「ナトリウムイオンモバイルバッテリー」を発表してきました。今回の「半固体電池モバイルバッテリー」は、その系譜に続く、安全への取り組みを象徴する重要な製品です。

「リスクを一日でも早く、一人分でも多く減らすこと。それがメーカーとしての使命です」

そう語るのは、商品開発部の須賀です。

▲ メーカーとしての使命を語る須賀

「近年、世界中でバッテリー事故が多発しています。 そうした現実を前にして、私たちがやるべきことは何かを考え抜きました」(須賀)

エレコムの開発チームは、市販品としての実用性を考慮し、現時点での最適解として「半固体電池」の採用に舵を切りました。

今回の製品の核となるのは、電池の心臓部である「セル」です。従来の液体電解液に代わり、ゲル状の半固体素材を用いた次世代のセルを採用。液漏れのリスクを低減し、内部ショート時の急激な熱暴走を物理的に抑制できるのが特長です。

しかし、その開発の道は平坦ではありませんでした。2025年の暮れ、いよいよ採用を決めた電池を過酷な「釘刺し試験」にかけた際、従来のリチウムイオン電池と安全性において明確な差が出ないという事態に直面したのです。

「少しでも早く市場に届けたい」という思いで開発を進めてきた中、商品企画を担当した田邉は「発売延期」という苦渋の決断を下しました。

「安全において圧倒的な優位性がないのであれば、新しい素材を使う意味がありません。実は、当初発売予定だったモデルがあったのですが、この電池のポテンシャルを最大限に引き出すために設計をすべてやり直しました。効率やスケジュールよりも、理想の安全性を優先する。この徹底した姿勢こそが、今回のプロダクトの土台となりました」(田邉)

▲ 製品を手に取り開発当時のことを振り返る田邉

現場の執念と、道具としての誠実さ

「ひたすら釘刺し試験を繰り返しました」と振り返る須賀は、工場で電池の挙動を、まるで生き物を観察するように凝視し続けました。

「半固体電池は、たとえ内部ショートが起きても、従来のリチウムイオン電池のような急激な反応を示しません。刺した後にゆっくりと電気が逃げていくイメージです。温度の上昇が非常に緩やかで、決定的な事故に至るまでの挙動が明らかに違います。その圧倒的な安定性を自分たちの目で確認できるまで、何度も試験を重ねました。今では、従来のリチウムイオン電池より間違いなく安全性が高いと、胸を張って言えます」(須賀)

現場で得た確信は、具体的な数値となって現れました。放電時の使用可能温度範囲は「-15℃〜45℃」へと拡大。例えば、真夏のキャンプ場など屋外の厳しい環境。これまでは熱によるダメージが懸念され、最悪の場合は故障の原因にもなり得ましたが、この製品はそうしたリスクを最小化してくれるのです。

また、デザイン面でもあるこだわりがありました。電池の劣化状態を知らせる独自機能「Health Monitor(ヘルスモニター)」の表示部について、田邉は語ります。

「本当はデザイン性を優先し、本体と同色のレンズにしたかったのです。白い筐体に白いレンズが並んでいる方が美しいですから。しかし、試作を重ねても、同色では光が埋もれてしまい、肝心の情報を瞬時に読み取ることが黒いレンズより難しかった。意匠の美しさか、それとも視認性か。究極の選択でしたが、最後は製品の見た目よりも、情報を確実にユーザーへ届けるという『道具としての正しさ』を選びました。どのような照明下でも最も見やすい黒いレンズを採用したのはそのためです」(田邉)

バッテリーに「消費期限」を

従来のリチウムイオン電池が約500回で寿命を迎えるのに対し、この半固体モデルは約4倍となる2,000回の驚異的なサイクル寿命を誇ります。しかし、商品開発部次長の清水は、単に長持ちすることを謳うだけでは不十分だと考えました。

「バッテリーは化学反応を利用している以上、どんなに長寿命設計であろうとも、いつか必ず寿命が来ます。明らかに膨らんだり発熱したりしてからでは遅いのです。バッテリーがいつまで安全に使えるのかを隠さずオープンにし、使用期限を過ぎたバッテリーを使い続けるリスクを未然に防ぐ。この透明性こそが、ユーザーを『急に壊れる不安』から解放する唯一の手段だと思っています」(清水)

▲ 「バッテリーには寿命があることをもっと多くの方に知っていただきたい」と語る清水

Health Monitorは、まさにこの「寿命の可視化」を担う機能。充放電サイクルに基づき、251回、501回とLEDの色が段階的に変化して、買い替え時を直感的に通知します。これに合わせて、取扱説明書にも「2年間が消費期限(※2)」という言葉を記載しました。

「バッテリーには寿命があることをしっかりお知らせしたい。ずっと使い続けるものではないという『啓発』です。寿命が来たら、適切に買い換えていただく。それが、私たちの誠実なメッセージです」(清水)

メーカーにとって、買い替えサイクルを遅らせる長寿命化や、劣化を自ら露呈させる機能は、ビジネスの定石には反しているかもしれません。しかし、そこにはユーザーの日常に寄り添うメーカーとしての、揺るぎない覚悟がありました。

バッテリー寿命が可視化されたHealth Monitor

約2,000回という長寿命化は、廃棄されるバッテリーの数を4分の1に減らせる可能性を秘めており、環境負荷低減の側面でも大きな意味を持ちます。ユーザーが性能やデザインで「これ、いいな」と無意識に選んだその先に、当然のように世界水準の安全性と環境性能が担保されている。これこそが、エレコムグループが目指す「Better being」の着地点なのです。

テクノロジーは、
生活を支える土台となるべき

「高度なテクノロジーを、いかに生活に実装していくか。それが私たちの喜びです」

中国・深圳からプロジェクトを支え続けた技術開発部の藤田は、そう語ります。

「我々は、単に新しい技術を採用することを目的とはしていません。電池が半固体になり、表示が進化する。そうした変化を"高嶺の花"にせず、適切なコストで誰もが享受できるようにすること。人々の生活を見えないところで支える、盤石な土台にすること。それが私たちの喜びです」(藤田)

▲ 中国・深圳からリモートで取材に参加した藤田

清水は、さらに先の未来を見据えます。

「正直に言えば、私自身、充電という行為自体がなくなるのが理想だと思っています。充電したいと思ってスマートフォンを使っている人はいない。いつか充電が不要になる未来が来るまで、今この瞬間をいかに不安のないものにするか。今回の製品はそうした未来へとつながる『かけ橋』になればいいなと思っています」(清水)

業界全体を見渡せば、いまだ安価な粗悪品が氾濫し、リサイクル体制も発展途上にあるのが現実です。だからこそエレコムは、経済産業省が主導する品質向上の取り組みにおいて、自社の管理体制を公開するなど、市場全体の健全化にも取り組んでいます。

製品を長く使ってもらうことで、廃棄そのものを減らしていく。再生プラスチックを採用し、FSC認証紙を用いたパッケージで届ける。これらはすべて、エレコムグループが掲げるパーパス「Better being」から派生した、未来への誠実さの証です。

取材の最後、須賀は開発者として、そして同じ社会に生きる一人の人間として、こう語りました。

「まずは、家にある使い古したモバイルバッテリーをチェックしてください。いつ購入したものか。膨らんだり、熱を持ったりしていないか。それが、ご自身や大切な人を不意の事故から守る第一歩になります。この製品を通じて、モバイルバッテリーに寿命があることを伝えたい。それが私たちの願いです」(須賀)

  • 1:ナトリウムイオン電池を採用したモバイルバッテリー(製品)/容量 9,000mAh ・ USBType-C対応(45W出力・30W入力) に関する市場調査「世界初」検証調査(㈱未来トレンド研究機構 調べ):2024年11月27日時点
  • 2:使用環境により異なります。

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