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INTERVIEW
開発者インタビュー

“生活に寄り添うこと”を目指した
超軽量ランタン付ポータブルバッテリー

まるで、小さな電気炊飯器のようにも見えるこの製品。実は、MacBook Airの充電を約2回もできる ほどのパワーを秘めたポータブルバッテリーだ。しかも、フタにあたる部分には、ジャバラ式に畳まれたランタンが内蔵されており、停電発生時やキャンプサイト、家庭でも照明器具として活躍する。

これまでにない、ポータブルバッテリーのあり方を提案したこの製品は、クラウドファンディングのMakuakeに出品したところ初日で予定金額を突破し、その後も大変な勢いで売り上げを伸ばし続けている。

この製品がどのような発想で生まれ、どんなこだわりが込められているのか、開発担当者に話を聞いた。

USB Type-C給電対応パソコン65W入力以下)
INTERVIEW 01

小さく、軽く、
インテリアに馴染むデザイン

災害発生時の電源確保やアウトドアでの利用といった目的で、ポータブルバッテリーに注目が集まっている。ただ、少々値が張るうえ見た目がいかにも重厚で、普段使いには適さないものが多かった。長期間使わないと必然的に放電が進み、いざ使おうという時にバッテリーは空っぽというのもよくある失敗談だという。

今回、エレコムから誕生したランタン付ポータブルバッテリーの開発を担当したのは、岡田義紀(開発担当)と田邉明寛(企画・プロダクトデザイン担当)だ。二人はこれまでも、数々のポータブルバッテリーを開発してきた。岡田はこう振り返る。

岡田

従来のポータブルバッテリーは、高価でサイズ的にも大きなものでした。実際に必要とされる能力を満たすにはそうする必要があったのですが、今回は逆転の発想でもっと機能を絞っていいから、手ごろな価格で普段から使えるものができないかという思いでした。

開発 岡田 義紀(左) / 企画・プロダクトデザイン 田邉 明寛(右)
開発 岡田 義紀左)
企画・プロダクトデザイン 田邉 明寛右)

最も大きな特徴は、AC電源出力を無くしたところだ。多くの生活家電製品に電気を供給するAC出力端子は、ほとんどのポータブルバッテリーに搭載されてきた。しかし、充電の対象をノートパソコンやスマートフォンなどのUSB端子で給電ができる機器に絞った場合、このAC電源は必ずしも必須ではないのではないかと二人は考えたのだ。

岡田

AC電源の回路は、かなり大きくてスペースをとります。重量もあるうえ、必然的にコスト増につながります。今回はこれをなくしてしまうことで、より製品の目的をはっきりさせようとしました。

たしかに、AC電源がないと電気ポットでお湯は沸かせない。ただ、それはキャンプ用ストーブやカセットガスコンロでも可能だ。今回は、あくまでも普段使いに便利で、いざという時にも役に立つ、そして軽量・コンパクトで手ごろな製品というものをコンセプトにして開発は進められた。

INTERVIEW 02

停電時やキャンプでも活躍するランタン

企画・プロダクトデザインを担当した田邉はこう語る。

田邉

AC出力がない分、新たな付加価値としてランタンを付けました。普段は本体に内蔵されていて、使用時に上にジャバラを引き出すとランタンになるというものです。

必要な時に、上部のつまみを引き上げるとジャバラが伸びてランタンが現れる。便利な構造だが、開発にはさまざまな苦労もあったという。

岡田

特にジャバラの部分は、素材選びに苦労しました。硬いと割れやすくなりますし、やわらか過ぎると自立しない。理想とする硬さを実現するために、何度も試作を繰り返しました。

2種類の素材を微妙な配合で組み合わせることで、なんとか理想とするジャバラが完成した。テント内で安心して利用できるLED電球のランタンは、明るさが4段階から選べ、テントの中やベッドサイドなど、シーンに合わせてやさしい光を放ってくれる。

INTERVIEW 03

小さなボディにパワフルなバッテリー容量

全く新しいコンセプトのポータブルバッテリーだけに、本体のサイズ・重量とバッテリー容量との兼ね合いにも頭を悩ませたという。どんなサイズなら女性や子どもでも気軽に持ち運びできるか、またどのぐらいの容量があれば、被災時やキャンプサイトでも十分にニーズに応えられるのか。検討の結果、二人が出した最適解が54600mAhという容量だ。

田邉

十分に使えるバッテリー容量ながら、約1.7kgという軽さに抑えることができました。また、本製品に外付けできるソーラーバッテリーも用意していますので、アウトドアでも晴れた昼間に充電していただくことも可能です。

充電ポートは5つを装備。最大合計出力85Wまでの範囲内なら、5つのスマートフォンを同時に充電することもできる。

INTERVIEW 04

ソーラー充電器から給電も可能

先述したように、別売の105Wソーラー充電器を使うことで、電気を現地調達することもできる。よく晴れた日なら、バッテリーが空の状態から約7時間で満充電にすることが可能。キャンプサイトで活躍することはもちろん、災害発生時にも頼もしい存在となるだろう。Makuakeでは、ポータブルバッテリーとセットで販売され、大きな反響があったという。

INTERVIEW 05

どんなインテリアにも合う色を求めて

本体のカラーにも、開発者のこだわりが詰まっている。

田邉

黒だと、あまりにも重い印象になってしまいます。どんなインテリアにも合って、そこに馴染む色ということでいまのダークブルー系の色を採用しました。

ただ、さまざまなパーツを組み合わせてつくる製品だけに、部品同士の色合わせにも苦労があったという。

田邉

本体はプラスチック、裏面と出力端子のカバーはシリコンゴムなど異なる素材を使っています。これらの色を合わせることはかなり大変でした。成形前は正しい色に見えても、成形すると変わってしまう。それぞれの素材の特性を考えながら試作を重ね、ようやく統一感のある色が出せました。

INTERVIEW 06

通常の3倍かかった開発期間

新たなコンセプトのもと開発が始まったが、前例のない製品だけにさまざまな困難がつきまとったという。特に配慮したのが安全性だ。

田邉

持ち歩いて使うものだけに、落としても容易に壊れたりしないよう、躯体内に回路をどう固定するかが課題でした。また、キャンプサイトで使用することもありますから、防水性も持たせています。

安全性や防水性を担保するために何度も試作を繰り返し、通常の3倍以上の期間をかけて開発された本製品。自然災害への備えとしてはもちろん、テレワーク時の電源として、キャンプ場でのスマホの充電手段として、幅広いシーンで活躍してくれるのではないだろうか。

EPILOGUE
エピローグ

岡田

本製品の開発が始まったのが2019年の秋、コロナ禍が始まる少し前のことでした。中国における製造工場の選定からスタートしましたが、2020年に入るとすぐにコロナが広がり、中国へ渡航できなくなりました。まったく新しいパートナー工場とまったく新しい製品を開発するというのはとても大変で、エレコム流の開発手法を理解してもらうのにも時間がかかりました。

田邉

会社では岡田さんと席が近いため、気軽に話しかけて相談や検討ができたのですが、それもオンラインとなって少しやりにくかったですね。

しかし苦労の甲斐あって、理想とする製品が誕生した喜びが二人から伝わってくる。ユーザーの生活に寄り添い、暮しの質を高めてくれるポータブルバッテリー。スマートフォンがライフラインとして欠かせない現代だからこそ、毎日に快適さと安心をプラスしてくれる頼もしい製品だ。