- 概要
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近年の医療業界では、技術発展と医療の質向上を目的として、「医療DX」が進められています。
医療DXはさまざまなデジタル技術を活用することで成り立っており、そのためにWi-Fiは不可欠なものとなりました。
ただし、Wi-Fiはどれでもよいというわけではなく、医療機関に適したものを選ぶ必要があります。 本記事では、医療機関におけるWi-Fiの用途や選定方法について解説します。
医療機関のWi-Fiに求められる要素
医療機関で使用するWi-Fiには、一般的なオフィスとは異なる特性が求められます。
患者・スタッフ双方の利便性と安全性を担保するため、設計段階から下記のような要件定義が必要です。
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セキュリティ
医療機関では電子カルテや医療機器の制御、患者情報の管理など、高度な個人情報を取り扱います。
そのため、第三者による不正アクセスや情報漏洩のリスクを防止する堅牢なセキュリティ体制が必須です。 -
ネットワークの安定性と可用性
医療機器や電子カルテシステムがWi-Fiを通じて連携している場合、通信の中断は診療に直結する障害となります。
通信速度だけでなく、冗長構成やバックアップ体制も重要な点です。 -
患者向けのWi-Fi
待ち時間中のストレス軽減や、訪問者との連絡手段としても機能するため、患者満足度の向上に寄与します。
ただし、業務用ネットワークと分離した構成とし、トラフィックの影響を最小限に抑える必要があります。
このように、医療機関におけるWi-Fi環境は「安全・安定・分離」の三点が特に重要です。
医療機関にWi-Fiを導入するメリット
こちらでは、医療機関にWi-Fiを導入するメリットをご紹介します。
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業務の効率化
看護師や医師が携帯端末を使って電子カルテや検査データを即時に確認できるようになります。
これにより、移動時間の短縮や情報の即時共有が可能となり、医療行為の質が向上します。 -
患者の利便性向上
院内に安定した無料 Wi-Fiがあれば、患者は待ち時間に予約確認やオンライン問診表の記入を済ませ、呼び出し状況システムなどもスムーズに利用できます。 また、医療機関サイトや院内ポータルサイトで治療に関する情報を調べ、不安や疑問をその場で解消しやすくなります。院内のWi-Fiは患者の利便性と安心感を高める効果が期待できます。
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コスト削減と環境負荷の軽減
電子化により印刷費用が削減され、用紙や保管スペースも不要となるほか、環境負荷の軽減と、業務のペーパーレス化によるサステナブルな経営にも貢献します。
また、紙媒体の場合は必要な情報を探す際にページをめくって確認しなければなりません。
先述の通り、電子化することによりキーワード検索などで必要な情報を探しやすくなります。 -
非常時の連絡体制の強化
災害や通信障害が発生した場合は、院内のWi-Fiを利用して非常用タブレットやIP電話を利用して職員間の連絡や患者誘導をおこなえます。 加えて電子カルテデータの保全や行政機関との情報共有も継続でき、災害などの非常時における体制の強化につながります。
このようにWi-Fi導入は、医療提供体制の品質向上に直結する重要な施策です。
Wi-Fi導入時の選定ポイント
医療機関でのWi-Fi導入においては、単に通信速度や料金だけでベンダーを選定すべきではありません。 以下の観点を踏まえて、適切な選定をおこなうことが求められます。
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セキュリティレベル
2025年現在、Wi-Fiのセキュリティ規格としてはWPA3が最新であり、通信の暗号化や不正アクセス防止に有効です。
医療機関には多くの個人情報が蓄積されているため、常に最新規格のセキュリティを用意する必要があります。 -
導入支援や運用保守の有無
医療機関では、IT専任の担当者が常駐していないケースも多いため、導入後のサポート体制が整っているベンダーが望ましいです。
トラブル発生時の迅速な対応や、定期的なセキュリティアップデートが重要です。 -
ネットワーク構成の柔軟性
業務用・来院者用のネットワークを物理的に分離する設計が可能であるか。
将来的な拡張性や施設内でのローミング性能も考慮するべきポイントです。最後に、医療機関向けの導入実績を持つ企業を選ぶことも、安心材料のひとつとなります。 実績のあるベンダーであれば、施設ごとの課題や構成に応じた提案が可能となるでしょう。
おわりに
本記事では、医療機関におけるWi-Fiの用途や選定方法について解説しました。
医療機関にWi-Fiを導入する際は、セキュリティやネットワークの安定性と可用性、患者向けのWi-Fiへの注意が必要です。
これらに注意して導入することで、業務の効率化や医療の質向上、設備としての信頼性向上といったメリットを得られます。
高レベルのセキュリティを備えたWi-Fiを導入して、患者や職員の満足度向上を図ってみてはいかがでしょうか。

