ストレージ

NAS導入のポイントとは?メリットから選び方まで解説します

執筆者BUSINESS SOLUTION WEB 編集部
2019.11.18

日常的に使用する計算ソフトのファイルやメールに加え、近年は取引先との契約書をデータで管理する企業も増えているなど、企業が保有するデータの種類と量がともに増えてきています。また、データ管理の重要性についても認知が進んでいます。顧客情報を自社で保有している場合、その情報が社外に流出してしまうと、損害賠償を請求されるといったリスクが生じるからです。

このように、増加するデータの保存先のニーズ拡大や機密性への認識が進むにつれて、安価に大容量のデータを保存・管理できる「NAS(ナス)」が普及してきました。NASは外付けの大容量ハードディスクとして使えるだけでなく、複数人でのデータのやり取りを手軽にでき、法人で利用されるケースが増えてきているのです。本稿では、NAS導入のメリットやデメリットに加え、機種の選び方についても解説します。

NASとは

NASとは

NASとは、「Network Attached Storage」の略称で、ネットワークに接続して利用するハードディスクを指します。ネットワークを経由することで、同時に複数台のPCからデータの共有・編集・保存が可能です。NASが接続されているネットワーク内でデータは共有されますが、アクセス権限を適切に設定しておけば、経営層しか閲覧できないフォルダや、個人専用フォルダの設定もできます。そういった利便性から、社内や部署ごと、多拠点オフィスにおける共有サーバとして採用されています。
また、NASは通常外部のネットワークに接続されていないため、不正アクセスの防止にもなります。さらに保存機能で作成されたデータは常にバックアップされるため、仮にPCが故障したとしてもデータへの影響が抑えられるので安心です。

NAS導入のメリット

NAS導入のメリット

データを保存・管理するのであればPCに内蔵されたHDDで十分なケースが多く、社内に共有するといった点では、メールやUSBといったツールでも行えます。このように「データ共有・保存・管理」というNASの基本的な機能は、ほかのソフトやツールで代替できる場合もありますが、NASを導入するメリットはどの点にあるのでしょうか。

複数台でデータの共有ができる

NASの大きな特徴は、複数台のPCをネットワークでつなぎ、データの共有ができる点です。

データを他の人に共有する場合、メールであれば共有したい相手に送信し、受け手はデータをダウンロードしなければなりません。もしくは、資料を印刷して共有する、というケースもあるでしょう。容量が重いデータであれば時間がかかりますし、毎回会議などで資料を印刷しているとコストもかかります。しかし、NASはネットワークに接続された複数のPCからアクセスできるため、NAS上の保存した場所を受け手に伝えるのみで、データの共有が完了します。効率化はもちろん、ペーパーレス化の一助にもなります。

多拠点オフィスも社内ネットワークで接続できるので、本社との連携や部署ごとにNASを導入して使い分けるなど応用の幅が広いのも特徴です。

また、容量面でもメリットがあります。NASは、HDDを増設しやすい仕様になっているため、NASに接続するPCが増えたり、空き容量が少なくなったりしても安心です。

フリーアドレスとの相性の良さ

無線LANが搭載されているNASを利用すれば、有線LANの配線を考慮する必要がなくなります。社内や部署の共有サーバに接続する際、有線LANでしか接続できない場合と比較すると、格段に効率的になります。

このため、無線LANが搭載されているNASは、昨今オフィスの働き方改革として注目を浴びている固定席を作らない「フリーアドレス」に適した共有ストレージと言えます。無線LANでNASに接続できれば、配線を気にすることなくネットワーク内にいる限り、社内のどこからでもNASを利用できるからです。

ただし、データの通信速度は有線LANの方が無線LANよりも速いため、容量の大きなファイルをやり取りする場合など、環境や状況によって有線と無線を使い分けられるとなおいいでしょう。

●フリーアドレスとは?メリット・デメリット、導入のステップを紹介

バックアップ先としても活用できる

NASはデータ共有用のストレージとして活用されますが、データバックアップ用としても利用できます。一方でクラウドストレージもバックアップ用ストレージとして利用できますが、NASと比較するとそれぞれに一長一短があります。

クラウドストレージはサービス事業者が管理しているため、企業が災害に遭った場合でもデータ消失のリスクは抑えられるものの、外部から不正侵入されるリスクを伴います。一方のNASは、原則的に外部ネットワークにつながっていないため、外的要因によるデータ消失のリスクは低いですが、物理的なディスクに保存しているため、経年劣化や衝撃による消失リスクを抱えています。以上のポイントを鑑みると、データバックアップをより確実に行う場合は、NASとクラウドストレージの両方を活用することで、さまざまなリスクに対応できるようになるでしょう。

また、NASにバックアップを残しておけば、PC買い替えのときのデータの引っ越しも簡単になります。PCのハードとしての寿命は数年であり、いつ壊れてしまうか正確にはわからないため、常にバックアップは用意しておきましょう。

●NASとクラウドストレージを徹底比較。法人利用で重視すべきポイント
●【中小企業向け】確実なデータバックアップ方法とその必要性とは

NAS導入のデメリット

NAS導入のデメリット
NASは手軽なデータ共有やバックアップが可能なストレージですが、導入にあたっていくつかのデメリットも存在します。その中から代表的なものをご紹介します。

導入時の設定が大変

NASを導入して運用するにあたって、「初期設定の難しさ」は、ネットワークやシステムに疎い担当者にとって高いハードルとなります。PCと接続するだけではなく、NASを組み込んだネットワークの構築や権限設定などの作業が必要だからです。また、適切な設定ができなかったり、不具合が生じたりする場合は、原因を自分で突き止めて対応しなければなりません。

さらに、NASに搭載されているOSによっては、ファイルを開けない可能性もあるため、事前の確認が必要となります。

HDDの破損でデータ消滅の危険性も

NASは物理的なディスクで構成されている精密機器であるため、衝撃などで機器が破損した場合の、データ消失のリスクは避けられません。こうしたリスクを分散させるために、データを複数のHDDに保存する「RAID機能」があります。RAIDには、「RAID 0(ストライピング)」、「RAID 1(ミラーリング)」、「RAID 5」、「RAID 6」といった、さまざまなモードがあり、それぞれ冗長性や記憶容量の特徴が異なるため、自社の状況に適した方式を選択しましょう。

NASの選び方

NASの選び方

ここまでご紹介してきたNASのメリットやデメリットを踏まえて、どのようなNASを選択すればいいのかを解説します。

記憶容量やCPU、OSなどのスペックで選ぶ

NASには大きく分けて、家庭用と法人用があります。法人用は、家庭用と比較して記憶容量の大きさや動作の快適さ、セキュリティの高さで勝っている機種がほとんどです。

家庭用と法人用では、NASの利用頻度や同時アクセス数が圧倒的に異なります。法人利用では、1台のNASに多くの同時アクセスを受ける場合があるため、NASの中核部品であり処理速度を表す「CPU」には、高い性能が求められます。法人利用では、処理の高速化に重点をおいたCPU搭載のNASを選ぶといいでしょう。また、NASは通常のHDDとは違い、OSを搭載しています。主にLinuxとWindows Storage Server搭載の2種が挙げられますが、最適なOS搭載のNASは利用人数・用途によって異なるため、事前に比較検討しましょう。

RAID構成で選ぶ

NASをバックアップ用のストレージとして活用する際は、RAID構成も重要なポイントです。

「RAID 0(ストライピング)」は、データを複数のハードディスクに分散して保存する方式で、アクセス速度が速く、データ使用効率がいいという特徴があります。「RAID 1(ミラーリング)」は、2台のハードディスクを並列に接続し、双方に同じデータを保存する方式で、1つのハードディスクに障害が発生した場合でも、もう1つのハードディスクからデータの復旧が可能です。

「RAID 0」と「RAID 1」の特徴を併せ持つのが、「RAID 5」です。高速化を図りながらエラーを修復するためのパリティ・データを分散して記録します。「RAID 6」は、4台以上のハードディスクで構成されており、2台のハードディスクに障害が発生してもデータの復旧が可能です。

家庭では「RAID 0(ストライピング)」を利用することが多く、法人では安全性がより高い「RAID 5」や 「RAID 6」を利用する傾向にありますが、安全性の高さに応じて価格も上がるため、自社のデータ管理にかけられる予算に見合ったRAID構成を選択しましょう。

まとめ〜NASの特徴を理解した上で、機種を選択する〜

近年、各企業が顧客情報をデータとして保有するようになりましたが、社内の不手際や外部からのサイバー攻撃による情報流出のニュースが後を絶ちません。その点NASは、複数のPC間でのデータ管理と共有の手軽さに加え、社内ネットワーク内でのバックアップ用ストレージとしても活用できるため、普及が進んでいます。

しかし、NASには物理的な破損や、社内からの情報流出が防げないといったリスクも存在します。NASを導入する際は、従業員に情報流出の危険性を知ってもらったり、来訪者用のネットワークを作ったりするなどの対策も必要になるでしょう。

NASのメリットとデメリットを踏まえた上で、自社に最適なRAID構成や機種を選択することが重要です。

小さく始める・働き方改革のすすめ