若き挑戦者が未来に向けて動き出す
エレコムグループの新たなパーパス"Better being"とは
プロフィール
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棚橋 弘至
新日本プロレスリング株式会社第11代代表取締役社長
1976年11月13日 岐阜県大垣市生まれ
キャッチコピーは"100年に一人の逸材"エース"。立命館大学法学部在学時にレスリングを始め、卒業後の1999年に新日本プロレスへ入門、同年10月に真壁伸也(現・刀義)戦でデビュー。2003年に初代U-30無差別級王者となり、自身としての初のタイトル戴冠。2006年には、当時の団体最高峰王座となるIWGPヘビー級王座を初戴冠。以降、同王座を8度戴冠し、これは歴代最多戴冠記録となっている。2023年12月には、新日本プロレスリング株式会社の第11代代表取締役社長に就任。2026年1月4日での現役引退を発表。
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葉田 甲太
エレコム株式会社 ヘルスケア事業部 執行役員 部長 医師
日本医科大学医学部卒業。学生時代の2005年にカンボジアで小学校建設を実現し、その体験を綴った著書『僕たちは世界を変えることができない。』は映画化され、広く注目を集めた。2014年には、カンボジアで新生児を亡くした母親との出会いをきっかけにNPO法人を設立。以降、カンボジアやタンザニアで病院建設や新生児医療の支援に尽力している。著書は台湾・韓国でも翻訳され、累計10万部を超える。
現在はエレコム株式会社ヘルスケア事業部の執行役員として、医療とテクノロジーの融合による社会課題の解決に取り組む。インドの大手デジタルヘルス企業「MediBuddy(メディバディ)」との協業により、生活習慣病の予防や健康支援サービスの普及を推進。また、新生児蘇生シミュレーター「Saving baby」の開発と国内外での導入にも力を注ぐ。
血圧計、体組成計、リカバリーウェアなど、日々の健康管理に役立つ製品の開発も推し進め、「医療の届きづらい場所に、医療を届ける」ことをミッションに、より多くの人が健康にアクセスできる社会の実現を目指している。
エレコムグループと新日本プロレスに共通する
社会に向けた企業の在り方
葉田: 先日、実際に会場で試合を観戦させていただいたのですが、パワーとパワーがぶつかり合う姿に圧倒されました。試合が盛り上がるにつれて会場全体も熱気に包まれ、観ているだけで体が高揚しました。
棚橋: ありがとうございます。プロレスは選手はもちろんですが、観に来られたファンの方も選手のようにテンションがあがり、特に推しの選手などにいただく叱咤激励はとても励みになります。
葉田: 会場にいるだけで心も身体も元気にしてくれるスポーツだと思いました。そのパワーを肌身で感じ、この度新日本プロレス様との新たな取り組みに挑戦しようと思いました。
棚橋: 新日本プロレスに理解を示していただけたことに大変感謝しています。プロレス自体がまだまだマイナースポーツであるという意識があり、コアなファンの方以外にももっとプロレスの面白さや楽しさをアピールしていきたいと考えています。そのためにも、これまで接点のなかった方に向けてもっとつながっていきたいという気持ちがあり、私もエレコムグループとの取り組みを決意しました。
▲ 滋賀県長浜市包括連携協定
▲ 島根県隠岐郡海士町包括連携協定
棚橋: ところでエレコムは近年、包括連携協定をはじめとする地域の方々が安心して暮らせる取り組みに注力されていますね。それらはどういった取り組みなんでしょうか?
葉田: たとえば滋賀県長浜市の場合ですと、スポーツ健康増進策のインセンティブ製品としてエレコムの血圧計や体重計などを提供することで、市民の皆さんの健康づくりを支援したいと考え、取り組みを始めています。
棚橋: 単に製品を寄贈するのではなく、心と身体の健康増進を目的とした支援なんですね。
葉田: 最近では島根県隠岐郡海士町との包括連携協定も結びました。これは、離島である海士町が医療や福祉、教育の分野で専門人材の確保に苦慮している現状を知り、エレコムなら何らかの形で貢献できることがあるのではないかという想いから始めました。
棚橋: たくさんの支援を行っておられるのですね。僕はプロレス会場というのはパワースポットだと思っていて。応援することで気持ちが高揚し、応援された選手は力がみなぎるというエネルギーが行き交う世界だと思います。新日本プロレスはモノを売る企業ではないので、エレコムグループとは一見違うアプローチのように見えますが、より良き生活のために企業活動を行うということは共通したビジョンがあると思います。
目指す理想の前にはいつも高い壁が立ちはだかる。
「あきらめない」という強い意志で未来への道を切り開く。
葉田: 棚橋さんがプロレスを始めるきっかけについてお聞きしてもいいですか?
棚橋: 高校時代はプロ野球選手になりたくて野球を頑張っていました。レフトで7番のレギュラーでした。大学時代も必死に練習と筋トレを行って体力づくりに励んでいました。しかし、プロの道は険しく高い壁でした。悔しいけど何か違う夢を探そうと考えたときに、昔から好きなプロレスが良いなと思いました。ただ、新日本の入門テストも3回目でようやく合格をしたのですが。
葉田: 入門するだけでも大変ですね。入門後、印象に残っていることはありますか?
棚橋: そうですね。新日本プロレスに入団した当時は、山本小鉄さんという鬼コーチがいて礼節を厳しく教え込まれました。プロレスラーというのは、見た目も大きくて怖い印象を持たれるものなんだから、言葉遣いや態度は一般の方よりもより丁寧にしろと毎日言われました。
葉田: 格闘家の方は特に礼節を重んじる印象があったのですが、そういう教えがしっかりと受け継がれているからなんですね。一方で、絶対にギブアップしないプロレスという競技からは「あきらめない」という意志を感じます。
棚橋: 確かに「あきらめない」というのはプロレスの中でとても重要なテーマだと思います。
葉田: 私も「あきらめない」という言葉を大切にしてきました。2014年、カンボジアで生後22日目の赤ちゃんを亡くして泣いているお母さんに出会いました。彼女の涙を見て、「幸せは人それぞれだけど、不幸は誰の目にも映りやすい」と感じ、赤ちゃんを亡くして幸せになれる人はいないと思ったんです。それ以来、その涙を少しでも減らしたいと思い、あきらめずに活動を続けています。
▲ 新生児蘇生トレーニングデバイス 「Saving baby」
棚橋: そのようなご経験を経て、新生児蘇生トレーニングデバイス「Saving baby」を開発されたんですね?
葉田: 大変なこともいろいろとありましたが、あきらめずにチャレンジし続けたことでたくさんの協力者も集まり、開発することができました。
棚橋: 赤ちゃんを亡くされたお母さんの姿を見て、実際に行動に移せるのはすごいですね。
葉田: 「お前がやっても世界は変わらない」と言われるかもしれない。そんなことは自分自身でもよく分かっています。でも、目の前の人なら救えるかもしれない。だから、あきらめたくないんだと思います。
棚橋: 世界に困っている人がいるという現状を目にしたとき胸は痛みますが、実際に行動に移して形にすることができる人は限られていると思います。
葉田: 次のフェーズとして、より多くの人の役に立ちたい、幸せになるためのお手伝いをしたいと考えるようになりました。個人での活動には限界があり、もっと大きな枠組みで社会の構造を変えるようなダイナミックな動きが必要だと考え、エレコムグループのヘルスケア事業部でビジネスを通して社会に貢献する道を選択しました。
棚橋: 葉田さんの「あきらめない」精神は素晴らしいですね。プロレスでも自分自身が限界だと思っていたポイントを超えていく瞬間がいくつもあります。そして、レジェンドたちの試合を見て育った選手たちは自分の試合で限界を超えて頑張ってくれる。頑張った先にこそ心から感動を与える試合ができるという流れが私たちにはあると思っています。
葉田: 「あきらめない」という精神が脈々と受け継がれているからこそ、観客に興奮と感動を与えているんですね。医療でも国際協力でも上には上がいます。私よりもっと素晴らしい活動をされてきた先人からたくさんの影響を受けながら自分なりのやり方を追求してきました。
棚橋: 新日本プロレスも偉大な先輩たちが築き上げてきたベースの上で今があります。観てくださるファンの方をがっかりさせないように、一人ひとりが高い目標を持って日々精進しています。
子どもたちの未来のため、
日本を越えて世界とつながり新たなビジネスの枠組みを作り上げていく。
棚橋: 新日本プロレスは社会貢献活動の一環として、児童養護施設への訪問などを行っています。
葉田: プロレスラーと触れ合う機会なんて少ないですもんね。やはり喜ばれますか?
棚橋: はい。児童養護施設の子どもたちはプロレスラーがやってくるだけでみんな喜んで集まってきてくれます。子どもを持ち上げるなどしてあげるだけで目をキラキラと輝かせてはしゃいでくれる姿を見ると嬉しくなりますね。
葉田: プロレスというスポーツ自体が人を元気にして、選手と触れ合うことで子どもたちに笑顔があふれる。子どもたちに夢を与え続けてきた新日本プロレスとして、これまでやってこられたことを世界に広げていくことが大切になりますよね。
棚橋: そうですね。世界に関してはアジア進出というのが一歩目になっています。ただ、そのためには僕が新日本プロレスの代表取締役社長としてこれから自分自身がどうしていくか、どのようなビジョンで団体を導いていくのかという部分をしっかり持たなくてはいけないと考えています。自分が20代、30代にやってきたことを今の若い選手に強いるのは違うと思っています。時代によって環境や考え方は変わりますし、それこそ今の時代にアジャストしたやり方が絶対あるはずだと思って日々模索しています。
葉田: エレコムグループはASEANへの製品展開を本格的に始めていて、2025年5月にマレーシアで現地法人を立ち上げました。EC事業での販売を軸に展開し、空港での専門店や現地の量販店などでの取り扱いにもどんどん力を入れています。海外でのシェアを獲得するというのは日本企業としての課題ではありますが、単純に海外の売上を伸ばすだけではいけないと思っています。
棚橋: それはどういうことですか?
葉田: 利益を社会に循環させ、その国にとって必要な貢献を同時に行うことで、会社や製品の信頼性につながると考えています。
棚橋: つまり、より良き製品を届け便利にすると共に、インフラなどの公共的な課題を解決するための支援につなげていくということですね。
葉田: まさにそのとおりです。たとえばインドでは、日本と比べて医師の数が非常に少なく、人口1万人あたり8人しかいないと言われており、医療現場は常に人手不足。だから病院に行かなくてもスマートフォンやネットを使って診療が受けられる「遠隔医療サービス」がかなり普及しています。しかも、この分野の市場は2025年には日本円で約8,500億円になるという予測もあります。そのような背景があり、インドで急増している糖尿病をはじめとした生活習慣病に対応するため、現地の「メディバディ」というヘルスケア企業と2023年から協業し実証調査を始めました。「メディバディ」はオンライン診療から薬の配送、在宅検査、メンタルヘルスの相談、手術のサポートまで幅広い医療サービスを提供しています。提携している医師は12万5千人以上、病院や薬局、検査センターも何千とあり、まさにインド全土をカバーする大規模なネットワークを持っています。そこでエレコムは、BluetoothやWi-Fi機能をもった体重計や血圧計といったヘルスケア機器を活用して、利用者の健康データをメディバディのアプリに自動で記録できるようにしました。この仕組みを使って、個人の体調や生活習慣に合わせた予防プログラムをインドで展開しようとしています。この取り組みが「医療と生活をつなぐ橋渡し」になると信じています。
▲ 「メディバディ」と2023年から協業
▲ Wi-Fi機能をもった体重計・Bluetooth対応の血圧計
棚橋: 企業活動と社会貢献の両輪で世界へと進出するモデルケースのようなお話ですね。
プロレスと社会の関わりは僕自身もよく考えるテーマです。僕は子どもたちにプロレスを通じて伝えたいことがあるんです。それは、あきらめずに立ち上がっていく姿を通して、自分の置かれている状況から逃げずに頑張るというマインドです。苦しいときこそ頑張ることで人生は新しい展開につながると思うんです。
葉田: 子どもたちに高い技術を目の前で見せてくれて夢を与えてくれる。その感動はずっと残り続けると思います。それは「いつか自分もそんな存在になりたい」という希望に変わる。その気持ちを一人でも多くの子どもたちに伝えるためにスポーツへの支援を行いたいと考えています。プロレスをはじめとするたくさんのアスリートはそういう力を持った存在だと思っています。
棚橋: そうであれば嬉しいです。これから先、プロレスは社会にとって必要な職業になっていくと信じていますから。そして、国内外含めてたくさんのビジョンを描いていきたいと思っています。
葉田: エレコムグループもこれから海外に進出しますから、新日本プロレスとの協業で新しい展開をたくさん考えていけます。
棚橋: 新しい展開にはとても期待が持てますね。これからもプロレスを通じてたくさんの想いを届けることができると嬉しいです。
より良き未来をつくる"Better being"
エレコムグループは、時代の変化を見極め、柔軟に対応しながら、その先の未来へと進み続けます。"Better being"というパーパスのもと、多岐にわたる取り組みに力を注ぎます。新日本プロレスとのコラボレーションはその実現を象徴するひとつの取り組みです。
エレコムグループは、今まで、そしてこれからも、「Better being」をパーパスとし、
より良き製品・サービス・ソリューション、より良き社会を追求し続けます。

