そんな願いを込めた
トラックボール
『IST(アイエスティー)』シリーズの
開発秘話
トラックボールの固定観念を変えたい
― 入社以来マウスの開発に多く携わってきたと思いますが、そんな中でトラックボールの新シリーズを立ち上げようと考えたのはなぜでしょうか。
古畑: 私が入社した2013年に初代EX-Gマウスが発売され、エレコムの定番になっていきました。その流れでトラックボールもEX-Gシリーズで展開し始めました。EX-Gは"握りの極み"というだけあって、握り心地の良さが売りのブランドです。
▲ (左から)初代EX-Gシリーズマウスとトラックボール
ただ、トラックボールは「握る」というより、どちらかというと「手を乗せて使う」方がスタンダードではないか、と感じていました。当時EX-Gのリニューアルに際して手首の負荷軽減の研究もしていたので、その要素も取り入れながら新しいトラックボールの形を作りたいと2020年秋頃にプロジェクトを立ち上げました。
親指操作のトラックボールの固定観念を変えられるように、新しい基準を作りたい。そんな思いが出発点でした。
「IST(アイエスティー)」という名前に込めた、"新しい基準"への決意
― 「新しい基準」とは?
古畑: 製品名の『IST(アイエスティー)』は、「Industry Standard of Trackballs」の頭文字です。トラックボール業界の新たなスタンダードとなることを目指して名付けました。
開発を始めた当時、トラックボールに求めることについてユーザーアンケートを実施したんです。大きく挙がった要素は2つで、「手のフィット感」と「ボールの滑らかさ」でした。
そこで、手が楽で乗せやすいフィット感と、滑らかさを極限まで追求したベアリング。この2つを両立する方針が固まっていきました。トラックボールは固定して使うことが多いので、角度がついていると疲れにくいですし、ボールが若干上向きの方が操作性も上がります。手首への負担を軽減する角度にもこだわって作り込んでいきました。
― 2023年11月の発売以降、IST PROの発売もありました。手応えはありましたか?
古畑: 親指タイプはトラックボールの入門として入りやすく、ユーザー数も多いです。そこで、エントリーモデルである通常版の『IST』より、多機能を求めるユーザーにも満足していただけるように、『IST PRO』を開発しました。
最初は「金額が高い」という声もありましたが、機能を見た上で「これだけ入っているなら納得」という反応が多かった印象です。トラックボールは人によって使い方がさまざま。理想の機能性を突き詰めようと思うと、「自分の欲しいものがないから自作するしかない」というユーザーも出てきます。でも、そういう方にも「これならある程度なんでもできるし、これがいい」と思っていただけるところまで持っていけたのかな、という手応えはあります。
IST PLUS:評価の高かった"核"はそのままに、要望を形に
― 今回リニューアルされた『IST PLUS』について、詳細を教えてください。
古畑: ベアリングの操作感や手の乗せ心地は高い評価をいただいていたので、その部分は変えずに、最大3台まで接続先を登録できるマルチペアリングと各ボタンの機能割り当てなどをマウス本体に保存できるオンボードメモリ機能を搭載しました。さらに、支持ユニットには360度自在に回転するボールで支持するボールローラーを追加しています。
静音スイッチについてもご要望が多かったので、今回採用しました。
▲ 特許出願中の独自構造
― リニューアルに際し、特にこだわった部分はありますか?
古畑: 今回、絶対に入れたかったのがオンボードメモリ機能です。実は、『IST PLUS』の一つ前に発表したトラックボール『HUGE PLUS』でも当初から搭載するつもりはなかったんです。ただ、『IST PRO』でのオンボードメモリ機能の評判を考慮して、途中で設計変更をした背景があります。その流れで『IST PLUS』にも搭載していくことになりました。『HUGE PLUS』のオンボードメモリ機能は、今夏の「エレコム マウスアシスタント」バージョンアップで対応予定です。
もう1つは、ベアリング支持より手頃な価格帯のモデルを用意すること。元々は人工ルビー支持のモデルを予定していましたが、ボールの滑らかさに課題を感じていて、別の構造ができないか開発を続けていました。今回ようやく形になったのが、ボールローラーモデル。当初は、既存モデルに後から付け替えられるよう部品としての発売を想定していましたが、今回開発が追いついたので「最初から乗せていこう」となり、発売に至りました。コストを抑えつつ、操作感も確保できた新しい支持ユニットになったと思っています。
― 開発の過程で、大変だったことや苦労したことがあれば教えてください。
古畑: ハード面でやりたいことを実現させるための、ソフト面の開発が大変でした。
『IST PRO』のプロジェクトが立ち上がったタイミングで「エレコム マウスアシスタント」についても本格的な開発がスタートしたのですが、開発人員を強化してこれまでやりきれなかったことができる体制になったことで、オンボードメモリ機能や『ELECOM Bridgeシリーズ』による1つのドングルで複数台の製品を使用できるブリッジ機能も、サポートを含めて実現できるようになりました。
― ISTシリーズの今後の展望があれば教えてください。
古畑: 次はまた、『IST PRO』をどうしていくかを考えていきたいですね。実際に使ってくださったお客さまから『IST PRO』にもいろいろなフィードバックが寄せられていますし、当時から比べると社内の開発レベルが上がっていて、技術的な進歩もあります。
そういった点をブラッシュアップして、エレコムのトラックボールのフラッグシップモデルとして、さらに技術を象徴する存在になれるといいなと考えています。
「Better being」と、長く使ってもらうための設計思想
― 「Better being」とHUGEに込められた思いでも、開発チームの姿勢が語られていました。古畑さんはどのようにお考えですか?
古畑: より良き改善をしていく姿勢は今までと同じですが、長く使える製品こそが業界標準のあるべき姿だと思うのでそういうところにも重きを置いていきたいという思いがあります。
今回のユニットを交換できる機能も、その思いから搭載されたものです。過去に社内から「滑りが悪く、使えない。」と相談を受けたトラックボールを見ると、人工ルビー部分が使い込みにより削れていて、本体は壊れていないのに使えなくなっているという事例がありました。例えばお持ちの製品がそのような状態になってしまったとしても、ユニット交換ができれば、引き続き使うことができるようになります。
ボールに関しても、「滑りにくくなった」と感じたユーザーが確認するFAQの閲覧数が月に数千件に達していました。こうしたお悩みに応えるため、メンテナンスキットが必要だと感じていました。発売に至るまで課題もありましたが、このたびようやく製品化が実現し、2026年9月の発売を予定しています。
メーカーとしてはもちろん新しいものを買ってほしい気持ちはあります。ただ、ユーザーは仕事道具として使っているので、「あまり変わってほしくない」「長く使いたい」という思いもあるはずです。だからこそ、サポート部品やアクセサリーも含めて、より「長く愛される製品」を開発していきたいと思っています。
▲ ユニット交換
▲ 9月発売予定のメンテナンスキット
長く使い続けられるような製品開発で、より多くの人の標準品をめざしていく、古畑率いる開発チームのものづくり。エレコムグループは、今まで、そしてこれからも、より良き製品・サービス・ソリューション、より良き社会、より良き会社を追求しつづけます。
開発者紹介
商品開発部 ペリフェラル課 課長 古畑義矢
2013年入社。2017年から現カテゴリーの開発に従事。好きなものはスノーボード。エレコムスノボ・スキー部の部長を務める。
製品情報
2026年7月現在
ベアリング支持
8+2(チルト)ボタン
乾電池式
Type-C™充電式
6台接続
Bluetooth®×2
無線2.4GHz×1
有線1.5m×1
カスタム接続×2
静音設計
オンボードメモリ
接続先切り替えダイヤル
保証期間2年
ベアリング支持
5ボタン
乾電池式
3台接続
Bluetooth®×2
無線2.4GHz×1
静音設計
オンボードメモリ
-
保証期間2年
ボールローラー支持
5ボタン
乾電池式
3台接続
Bluetooth®×2
無線2.4GHz×1
静音設計
オンボードメモリ
-
保証期間1年
ベアリング支持
5ボタン
乾電池式
1台接続
Bluetooth®
or 無線2.4GHz
or 有線1.5m
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-
保証期間1年
人工ルビー支持
5ボタン
乾電池式
1台接続
Bluetooth®
or 無線2.4GHz
or 有線1.5m
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保証期間1年
- ボールメンテナンスキット M-TAFD01今夏発売予定
- ELCOM Bridge E USBレシーバー単体 M-ER10GY今夏発売予定










