
中継器モードのWi-Fiルーターを増設して無線LANの範囲を広げよう

Wi-Fiルーターの設置場所から遠い所で端末を使う場合、Wi-Fi接続が不安定になったり、接続できなかったりします。このような場合は、中継器モードにしたWi-Fiルーターを設置することで、回線の安定性が向上したり、使えなかった場所でつながったりするようになります。
ここでは、Wi-Fiルーターの中継器モードの使い方や注意点などについてご紹介しましょう。
Wi-Fiルーターでできることとは?

中継器モードについて解説する前に、まずはWi-Fiルーターとは何か、そしてWi-Fiルーターでできることについてご紹介しましょう。
Wi-Fiルーターはインターネット回線を無線に変換する機器
通常、インターネットプロバイダの回線は、有線の「アナログ信号」か「光信号」で自宅に引かれます。そこから、アナログ信号の場合は「モデム」、光信号の場合は「ONU」という機器に接続。あとは、この機器にLANケーブルを挿して、パソコンなどの端末とつなげば、インターネットが使えるようになります。なお、最近のインターネット回線は、ほとんどが光回線なので、モデムを利用している人は少ないかもしれません。
しかし、この状態だと、端末をモデムやONUと有線で物理的につなげ続けなければなりません。同じ部屋に端末がないと、部屋をまたいでケーブルを廊下に這わせることになりますので邪魔になりますし、見た目もスマートではありません。
そこで、これらの問題を解決するのが、Wi-Fiルーターなのです。
Wi-Fiルーターは、有線のインターネット回線を無線のインターネット回線に変換します。そして、無線LANを使って、複数の端末をインターネット回線につなげることができます。この2つの機能により、前述した問題を解決できるのです。
Wi-Fi環境を作るには、基本的にWi-Fiルーターを購入する必要がありますが、インターネットプロバイダから提供されるONUによっては、Wi-Fiルーターの機能を持つものもあります。

Wi-Fiルーターにある4つのモード
Wi-Fiルーターには、前述した標準的な機能以外に、別の使い方もできます。ここでは、Wi-Fiルーターに備わっている「ルーターモード」「アクセスポイントモード」「中継器モード」「子機モード」という4つのモードについてご紹介しましょう。
なお、モードの名称は、メーカーによって異なる場合があります。ここでは、エレコム製Wi-Fiルーターのモードに準拠しておりますので、名称の違いにご注意ください。

■ルーターモード
「ルーターモード」とは、Wi-Fiルーターのメイン機能である、有線のインターネット回線を無線に変換することと、その無線を使って複数の端末をインターネット回線につなげることができるモードです。一般的に製品の出荷状態では、このルーターモードになっていますので、ルーターとして使う場合は、このまま利用できます。
注意点としては、ONUにWi-Fiルーターの機能がついている場合です。この場合、ルーターモードのままONUに接続すると「二重ルーター」と呼ばれる状態になり、インターネット回線につながりにくくなってしまいます。基本的には、1つのONUに対して1つのWi-Fiルーターしか使えないので、ルーターモードのWi-Fiルーターは絶対につながないようにしましょう。
■アクセスポイントモード(ブリッジモード)
「アクセスポイントモード(ブリッジモード)」は、Wi-Fiルーター機能付きのONUに、Wi-Fiルーターを接続するためのモードです。メーカーによっては、ブリッジモードとも呼ばれます。このモードでWi-Fiルーターを接続した場合、ルーターとしての機能は使えなくなりますが、無線や有線の接続先としては使えます。
ONUにWi-Fiルーターの機能がついているのであれば、コスト的にもWi-Fiルーターを購入して接続する意味はなさそうに思えます。しかし、ONUのWi-Fiルーター機能が持つ端末の最大接続数で足りない場合もあるでしょう。そのようなケースでは、ONUに高性能なWi-Fiルーターを接続することで、必要な接続台数などを確保できるのです。
昨今は家電やゲーム機など、Wi-Fi対応の機器が増えています。さらには、リモートワークやオンライン授業などで、自宅のWi-Fi環境の向上に対するニーズは増加傾向にあります。アクセスポイントモードは、そのような課題を解決するために使用するモードなのです。
■中継器モード
「中継器モード」は、Wi-Fiルーター機能付きのONUと端末のあいだに距離がある所に設置し、Wi-Fiの電波を中継するモードです。これは、Wi-Fiルーター機能付きのONUに限らず、ルーターモードのWi-Fiルーターに中継器モードのWi-Fiルーターをつなぎ、Wi-Fiの利用範囲を広げることもできます。
Wi-Fiの電波は、壁などが障害物となって電波を遮断することもありますし、家電製品が影響することもあります。ですから、1つのWi-Fiルーターで、すべての部屋に電波を届かせることができるとは限らないのです。そのような場合に、この中継器モードを使うことで、Wi-Fiの利用範囲を広げるのです。
なお、中継器モードを使用しても、ルーターとしての機能はメインのWi-Fiルーターに依存します。ですから、端末を最大10台接続できるメインのWi-Fiルーターに、端末を最大8台接続できるWi-Fiルーターを中継器モードで接続してもつなげられるのは10台のままで18台接続できるわけではありませんのでご注意ください。
■子機モード
「子機モード」は、有線接続しかできない端末に無線機能を持たせることができるモードです。
例えば、テレビやブルーレイレコーダーなどに、有線のLANポートしかない場合、子機モードのWi-Fiルーターと有線LANで接続することで、無線機能が使えるようになるのです。
Wi-Fiルーターの中継器モードの使い方

Wi-Fiルーターに4つのモードがあることをご紹介しましたが、ここからは中継器モードを使う際の手順について見ていきましょう。
エレコムのWi-Fiルーター「WRC2533GS2」を例にご紹介しますが、ほかのWi-Fiルーターの場合でも、基本的な操作は同じです。
1. Wi-Fiルーターを中継器モードに変更
中継器モードに使うWi-Fiルーターの背面にある動作モード切り替えスイッチを、「中継器」に変更します。
2. ACアダプタのプラグを挿す
Wi-FiルーターにACアダプタをつなげて、コンセントに挿してください。
これまで使っていたWi-Fiルーターを中継器モードとして使用する場合は、一度ACアダプタのプラグを本体から抜いて挿し直します。
3. ランプを確認する
1~2分経つと、中継器モードに使うWi-Fiルーターの2.4GHz/5GHzランプが「消灯」し、POWERランプが黄色に「点灯」します。

4. WPSボタンを2~3秒間長押しする
中継器モードに使うWi-Fiルーター背面にあるWPSボタンを、2~3秒間長押しします。すると、WPSランプが赤色で「点滅」します。
5. 親機側のWPSボタンを押す
中継器モードに使うWi-Fiルーター背面にあるWPSボタンを押してから2分以内に、親機となるWi-Fiルーター背面にあるWPSボタンを押して、WPSランプを動作状態にします。

6. 中継器モード側のランプを確認する
親機の準備が終わったら、中継器モードに使うWi-Fiルーターのランプを確認します。親機との接続に成功していれば、WPSランプは「消灯」、2.4GHz/5GHzランプは接続している周波数帯の色で「点灯」、POWERランプが黄色で「点灯」しています。
Wi-Fiルーターを中継器モードに設定できないときの対処法

Wi-Fiルーターを中継器モードに設定する際、WPSボタンがついていない場合や、WPSボタンを押してもうまく設定できないこともあるかと思います。そのような場合は、下記の方法を試してみてください。
1. Wi-FiルーターのLANポートとパソコンをLANケーブルで接続
中継器モードに使うWi-FiルーターのLANポートと所有しているパソコンのLANポートを、LANケーブルで接続します。
2. パソコンのIPアドレスを192.168.2.100に変更する
パソコンのIPアドレスを変更します。Windows 10であれば、下記の手順で行います。
画面左下にある「Windows」ロゴをクリックし、アプリ一覧から「Windows システム ツール」を開く
↓
「コントロール パネル」をクリックし、「ネットワークの状態とタスクの表示」をクリックする
↓
「アダプターの設定の変更」をクリックし、「イーサネット」をダブルクリックする
↓
「インターネット プロトコル バージョン 4(TCP/IPv4)」を選択し、「プロパティ」をクリックする
↓
「次の IP アドレスを使う」にチェックをつけ、下記の数字を入力後、「OK」をクリックする
IP アドレス | 192.168.2.100 |
---|---|
サブネット マスク | 255.255.255.0 |
デフォルト ゲートウェイ | 192.168.2.1 |
そのほかのOSをお使いの場合は、下記のページをご覧ください。
【ネットワーク】IPアドレスの固定方法/固定IPアドレスについて
3. パソコンのブラウザーから192.168.2.1にアクセスする
パソコンのブラウザーのアドレスバーに、「http://192.168.2.1」と入力します。
もし、ログイン画面が表示された場合は、中継器モードに使うWi-Fiルーターの底面に貼ってある暗号化キーラベルか、かんたんセットアップシート(初期値)に記載されているログインIDとパスワードを入力します。最後に「適用」をクリックすれば、設定画面が表示されます。

4. 設定画面で設定を行う
設定画面が表示されたら「Wi-Fi」をクリックし、Wi-Fi画面で「SSIDの選択」ボックスの横にある「検索」をクリックします。「接続機器の選択」画面が表示されるので、親機となるWi-Fiルーターの「選択」欄にチェックを入れ、「適用」をクリックします。
5. 「暗号化キー」を入力する
親機となるWi-FiルーターでSSIDが選択されているので、最後に「暗号化キー」を入力します。暗号化キーは、手順3で使用したものです。親機との接続認証中は、接続する帯域のランプが点滅しますので、認証が完了するまでしばらく待ちます。

6. 中継器モード側のSSIDを確認する
ランプの点滅が止まったら、中継器モード側のSSIDが親機と同じSSIDになっているかを確認します。同じSSIDになっていたら、設定完了です。
中継器モードを利用する場合の注意点

Wi-Fiルーターを中継器モードに設定した場合、下記の点に注意しましょう。
中継器モードのSSIDが、接続した親機のSSIDと同じになる
中継器モードに設定が完了すると、中継器モード側のWi-Fiルーターが接続した親機のSSIDに変更されます。
中継器モード側のWi-Fiルーターで使用していたSSIDは使用できなくなりますので、ご注意ください。
管理画面にアクセスする場合、LANケーブルを接続する位置が変わる
パソコンを使用して中継器モードに設定するときは、Wi-Fiルーターの「LANポート」にLANケーブルを挿しました。
中継器モードに設定した後に再び設定する場合は、「INTERNETポート」にLANケーブルを挿す必要があります。
メッシュWi-Fiを導入し、安定した通信環境を実現しよう

自宅のWi-Fi環境に、中継器モードのWi-Fiルーターを追加すれば、無線が届く範囲を広げることが可能です。しかし、Wi-Fiルーターを追加購入していくにも限界があります。そこでおすすめなのが、メッシュWi-Fiという仕組みです。
中継器を使ったWi-Fi環境では、多くの端末を接続するとメインルーターに負荷がかかって速度が低下しがちです。一方、メッシュWi-Fiは、電波や通信の状態が良いサテライトルーターを自動で検出して接続。メインルーターに負荷が集中せず、安定した通信環境を実現します。
家庭内の端末が増加傾向にある今、メッシュWi-Fiの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、メッシュWi-Fiについての詳細は、無線LANの基礎知識を解説したエレコムの下記のページをご覧ください。
メッシュ(Mesh)Wi-Fiって何?メリットと活用方法を紹介