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2026.07.16

仕事と暮らしを、なだらかにつなぐ"卵" 若手開発者が語る「めちゃくちゃ楽しかった」 4代目EGG MOUSE誕生秘話

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仕事と暮らしを、なだらかにつなぐ"卵"
若手開発者が語る
「めちゃくちゃ楽しかった」
4代目EGG MOUSE誕生秘話
仕事と暮らしを、なだらかにつなぐ 仕事と暮らしを、なだらかにつなぐ
Introduction

食事をする、談笑する、本を読む。そんな時間が流れるダイニングテーブルやリビングの片隅に、コロンとした"卵"が置いてある。それは、まるでかわいい雑貨のように、暮らしの風景に馴染んでいます。

2026年、エレコムグループ創立40周年の節目に登場する4代目の「EGG MOUSE(エッグマウス)」は、そんな不思議な佇まいを持つプロダクトです。

「エレコムって、実はいいプロダクトがすごくいっぱいあるのに、それが一般のユーザーに知られていない。僕自身も入社前は知らなかった。それがすごくもったいないなとずっと思っていたんです」

そう語るのは、デザインを担当した吉井樹(よしい・いつき)。エレコムの中にある「面白さ」と「誠実なものづくり」を、一つのプロダクトとして見える形にしたい----その動機が、このプロジェクトの起点となりました。

四角が当たり前だった時代に生まれた「必然の卵」

初代EGG MOUSEが生まれたのは1988年。マウスは四角い無機質なデザインのものが当たり前だった時代です。

「EGG MOUSEはエレコムとして初めてのマウス製品であり、金型を独自に作ってデザインした製品としても初めてでした。我が社らしいユニークなものづくりの原点ともいえる製品です」

そう語るのは、マウスやキーボードを手がけるチームを率いる、商品開発部I/Oデバイス課課長の古畑義矢(ふるはた・よしや)です。

当時、マウスはパソコンの付属品に過ぎず、どのメーカーの製品も無骨な「四角い箱」が当たり前でした。エレコムのデザイナーは、その常識に対して「人間の手で握るものなのだから、丸い方が握りやすいのでは」という、シンプルな問いを投げかけたのです。

「どこまでも『人が使う上での心地よさ』を突き詰めた結果として卵型になりました。奇をてらったのではなく、人を原点に置いたからこそ生まれた『必然の形』でした」(古畑)

製品企画を担当した古畑

初代EGG MOUSEを手がけたのは入社1年目の若手社員でした。若手の発想を受け止め、任せたことが、画期的な丸いマウスにつながったといいます。以来、EGG MOUSEは節目ごとに、その時代のエレコムの考え方や技術を映すように進化を重ね、創立40周年の今、歴史のバトンは再び若手開発者たちの手に託されたのです。

若き感性に託された、
原点回帰へのバトン

新型EGG MOUSEのデザインについて説明する吉井

4代目EGG MOUSEの開発を託されたのは、プロジェクトマネージャーの筒井舜平(つつい・しゅんぺい)と、デザイナーの吉井の若手コンビ。プロジェクト開始時、筒井は入社3年目、吉井は新入社員でした。

古畑は二人に任せた意図をこう語ります。

「EGG MOUSEはエレコムにとって特別なプロダクト。それをあえてエレコムに染まりきっていない若手に任せたら、どういうものを作るのか。そこの見えない部分に期待をしました。エレコムではここ数年、機能や価格を突き詰めた実用重視のものづくりをしてきました。だからこそ、感性に訴えるものづくりを改めてやりたい、という思いがあったのです」 (古畑)

狙いは、まさにこの「感性に訴えかけるものづくり」への原点回帰にありました。その期待は、吉井が入社以来抱いていたもどかしさとも重なります。社内には面白い発想を持つ人がいて、使いやすさを細部まで突き詰める姿勢もある。にもかかわらず、その魅力が世の中に十分に伝わっていない。だからこそ吉井は、EGG MOUSEをエレコムらしさを象徴するプロダクトとして捉え、そのデザインのあり方を考えたといいます。

「エレコムが40年間培ってきたものづくりの歴史を紐解くなかで、今回の開発は、会社のロゴマークをデザインするかのような特殊なアプローチが必要になると思いました。見た目を新しくするだけではなく、エレコムというブランドの思想そのものをプロダクトに込める。そこが、デザインの出発点になりました」(吉井)

一方で、もう一人の開発担当・筒井の役割は、吉井が描いた"理想"を実際の製品として成立させること。見た目の新しさだけでなく、操作感、構造、コスト、量産性まで見通しながら、どこまで攻めて、どこで成立させるかを判断していく。それでも本人は、「開発中はとにかく夢中で、プレッシャーだと意識する余裕はなかった」と振り返ります。

若手の感性を信じて任せる古畑の視点、エレコムの魅力を形にしたい吉井の問題意識、そしてそれを製品として成立させていく筒井の開発力。三者の役割が重なり合うところから、4代目EGG MOUSEの開発は動き始めました。

仕事と暮らしの境界に「居場所」を作る設計思想

落ち着いたインテリアが並ぶ空間にも、
すんなり溶け込む新型EGG MOUSE

新型EGG MOUSEのコンセプトは「絵になる、まいにちを。」──この言葉には、マウスを単なる仕事道具ではなく暮らしの風景に自然になじみ、置いてある時間まで心地よく感じられる存在にしたい、という意味が込められています。

コロナ禍を経て、テレワークやハイブリッドワークが定着し、働く場所は大きく多様化しました。リビングやダイニングテーブルで仕事をすることも珍しくありません。デジタルデバイスは以前よりずっと暮らしの近くに入り込んでいます。

吉井自身、以前より仕事関係のツールやデバイスの「生活空間に突然入り込んでくる機械らしさ」に違和感を覚えていたといいます。

「自分なりにリラックスできる部屋を作っているときに、いかにも業務用の重厚なツールが目に飛び込んでくると、台無しというか......空間が重くなってしまうように感じていたんですよね」

そこで吉井は新しいEGG MOUSEを開発する上で、使っているときだけでなく「置いてある姿」も大事にしました。

「お花が飾ってあったり、果物があったりするような空間に、コロンと置いてあっても圧迫感がない。そんな存在にしたかったんです」

完成した試作機を自宅で使ったとき、吉井は手応えを感じたと語ります。

「主張するようなエッジのきいたデザインでは決してないんです。でも、ちゃんと暮らしの中に入っていけてるな、という感覚がありました」

マウスに"着せ替えできるカバー"をつけるという発想

暮らしに溶け込むデザインを追求する中で、吉井はEGG MOUSEというプロダクト名を体現するような継ぎ目の一切ない、卵のようになめらかな触り心地を実現したいと考えました。

「誰の手の中にもある触覚の記憶というか、すっと撫でたくなる感じや、指にふっと収まる感じを実現したかったんです」(吉井)

そうした理想を量産プロダクトとして形にすることは容易ではありません。通常のマウスは、複数の樹脂パーツで構成されています。クリックボタンと本体の間には隙間が必要で、成形時には金型の合わせ目 も残ります。こうした合わせ目が見えると、どうしても"オフィスツール"らしさが出てしまう。

行き詰まったとき、筒井が提案しました。

「じゃあ、カバーをつけちゃおうか」

吉井は、この一言がプロジェクトを大きく動かし始めたと証言します。

シリコーン製カバー「soft shell(ソフトシェル)」を本体にかぶせる。そうすることで、合わせ目のない外観を実現しながら、従来どおりのクリック感を残せる。さらに、カバーを着せ替えることで色を楽しめるだけでなく、摩耗したカバーを交換して本体を長く使い続ける余地も生まれます。

筒井には、以前から小さなアイデアの芽がありました。

「学生の頃から、マウスのパーツを付け替えて色を変えられたら面白いなと思っていたんです。クロックスのサンダルのように、少しカスタマイズできる感覚があったらいいなと」(筒井)

試行錯誤を繰り返す中で完成したシリコーンカバー

0.05ミリ単位で探った、
見た目と押し心地のバランス

それでもゴールまでの道のりは、トライ&エラーの連続でした。まず直面したのは「透け」の問題です。白いカバーをかぶせると、本体内部の線やボタンの影が透けて見えてしまう。かといって厚くすれば、今度はクリック感が損なわれます。

「0.4ミリだと透けてしまうと言われて、何度もデータを引き直しました。0.05ミリ幅で調整するような、細かいやり取りをずっと続けていました」(吉井)

カバーのフィット感も難題でした。本体と同じサイズで作ると、装着時にズレが生じる。そこで、カバーの内側をわずかに小さくし、本体をぎゅっと包み込む設計にしました。その比率が「99.5%」です。

「サイズ、素材そのものの硬さ、そして厚み......いくつものパターンを試して、見た目とボタンの押し心地の両方を満たすところを探っていきました」(筒井)
もう一つの課題が価格です。古畑は5,000円以内に収めることにこだわりました。ギフトやちょっとしたプレゼントとしても手に取りやすい価格にしたかったからです。

しかしながら基板を2枚必要とする初期設計では、どうしても5,000円の壁を超えてしまう。そこで若手コンビは基本的な使い勝手を守りながら、基板を1枚に収める構造へと見直すことで、最終的に税込4,980円という価格に着地させました。

10年ごとにリニューアルされてきたEGG MOUSE。

「めちゃくちゃ楽しかった」
2年間が紡ぐ、ものづくりの循環

「2年間、ずっと...。本当にずっと、めちゃくちゃ楽しかったです」

開発期間を振り返り、吉井はそう漏らします。今回、吉井はデザインだけでなく、コンセプト、製品デザイン、販促物、パッケージまでトータルで任されました。やるべき作業の量は多い。クオリティも落とせない。時間も限られている。それでも、大変さも含めての楽しさだったといいます。

「すべてを任せてもらえたので、すごくやりがいがありました。『楽』な楽しさではなく、目標に向かって一緒に作っていく楽しさでした」(吉井)

筒井もまた、困難な構造を考えること自体が好きだったことに改めて気づいたといいます。

「そういう性格なんですかね。大変ではあったけど、なんか、すごく楽しくやっていられました。昨日も吉井と一緒に飲みながら、『楽しかったね』と話していたくらいです」(筒井)

挑戦的なプロダクト開発は、売上だけでは測れない価値を会社に残します。古畑自身も、学生時代にエレコムのユニークな製品を見て「面白いことをやっている会社だ」と感じたことが、入社のきっかけだったと話します。今から10年前に3代目EGG MOUSEを手がけた上司も、過去のEGG MOUSEを見て入社した一人だといいます。

「今いるメンバーは、そういうユニークさに惹かれて集まってきた部分があります」(古畑)

面白いことを本気でやった記憶は、製品の販売期間を超えて、会社の中に残っていく。EGG MOUSEの歴史には、そんなものづくりの循環も刻まれています。

暮らしに寄り添う道具が、次の作り手を呼び込む

エレコムグループは「Better being」というパーパスを掲げています。より良き未来のための、より良き製品・サービスを届けること。それは、ただ新しい製品を開発することでも、便利な機能を増やすことでもありません。使う人の毎日に、少しでも心地よい状態を作ること。仕事と暮らしがなだらかにつながる時代に、道具が空間を邪魔せず、手に取るたびに少し気分を整えてくれること。プロダクトを通して、そうした小さな心地よさを提供することもまた、Better beingの一つのかたちです。

今回のプロダクト開発におけるBetter beingは、完成したEGG MOUSEだけに宿っているわけではありません。吉井が抱いていた「エレコムの面白さが、まだ十分に伝わっていない」という違和感を、会社がものづくりの起点として受け止めたこと。筒井が学生時代から温めていた「マウスも着せ替えられたら面白い」という小さな発想を、シリコーンカバーという構造にまで磨き上げたこと。そして古畑たちが、若手の感性を尊重しながら、製品として成立する形へ導いたこと。そのプロセス自体にも、エレコムグループらしいBetter beingへの挑戦がありました。

作り手が繰り返し「楽しかった」と口にするほど夢中で追求したのは、暮らしの中で無理なく使えて、手に取るたびに少しの満足感が残ること。暮らしと仕事の境界線が溶け合う現代における、デバイスの新しいあり方でした。

ダイニングテーブルの片隅で、コロンと静かに佇む4代目のEGG MOUSE。誰かの毎日に小さな心地よさを届けるその挑戦は、同時に、次の作り手を惹きつける入口にもなっていくはずです。10年後、"5代目"を手がけるのは、このマウスを見てエレコムに惹かれた誰かなのかもしれません。暮らしに寄り添う道具を作る挑戦は、こうしてまた次の未来へと受け継がれていきます。

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