有線LANの通信速度が遅くなる理由は?有線LANを使用するときに気を付けたいこと
有線LANは、LANケーブルがあれば、モデムからかなり離れた場所でもネットに接続することができます。また、障害物や周囲のノイズの影響を受けにくく、その点でもWi-Fi(無線LAN)に比べて有利です。インターネットのパワーユーザーの中には、有線LANの確実性を重視している方も少なくありません。
しかし、有線LANの接続でも注意しなければならない点があります。今回は、有線LANを使用・運用するときに気を付けたいことについてご紹介します。
有線LANの通信速度が遅くなる原因
Wi-Fi(無線LAN)に比べて通信速度が速く、接続が安定しているのが、有線LANのメリットです。しかし、さまざまな原因により、通信速度が遅くなってしまうこともあります。ここでは、有線LANの通信速度が遅くなる原因をいくつか見てみましょう。
LANケーブルが劣化する
有線LANは、ケーブルを物理的につなげて通信を行います。そのため、ケーブルが劣化することによって、通信速度が遅くなったり、通信ができなくなったりする場合があるのです。
LANケーブルの耐用年数は、一般的に20~30年といわれています。しかし、利用の仕方や設置環境によっては、数ヵ月や数年で劣化してしまう可能性もあります。
無理にねじ曲げたり、圧迫したり、引っ張ったり、絶え間なく振動が起こったりしている環境では、LANケーブルのダメージも大きく、劣化のスピードは速くなります。そのほか、次のような原因によってLANケーブルがダメージを受けることもありますので、注意が必要です。
- ・日光が直接あたる場所など高温の環境に置く
- ・紫外線などにさらされ続ける
- ・湿気によりカビが繁殖する
- ・ペットの歯や爪などによりLANケーブルが傷付く
- ・過電圧・過電流により電気的ダメージを受ける
- ・水分や油分、塩分、薬品などがケーブルの被膜内に浸透する
皮膜の中の導体がダメージを受ける
LANケーブルの内側には、複数の導体が通っています。導体がすべて断線すれば通信が止まりますが、1本切れただけなら、通信速度が低下するだけなので、ダメージに気付かないこともあるかもしれません。
また、LANケーブルの形状によっても、ダメージの受けやすさは変わります。断面が円形の「円筒タイプ」のケーブルは、表面を覆う皮膜が分厚くて硬いので、圧迫などのダメージに強い点が長所です。しかし、設置するときに壁の角などに沿わせて無理に曲げると、導体が断線するおそれがあります。
一方、薄く平たい「フラットタイプ」のケーブルは、軟らかく曲がりやすいので、壁に沿わせて設置しやすい点が長所です。その反面、皮膜が薄く、中を通っている導体が外的ダメージを受けやすいという弱点もあります。
ケーブルが長くなれば長くなるほど、物理的なダメージのリスクも高まりますので、定期的な点検やメンテナンスが必要です。
ケーブルの規格が古い
モデムやルーターが高性能でも、LANケーブルの性能が低いと、本来の通信速度が発揮できないことがあります。
LANケーブルは、製造年代や通信性能などによってカテゴリー分けされています。現在普及しているのは、「CAT5」「CAT5e」「CAT6」「CAT6A」「CAT7」「CAT8」などのタイプです。このうち「CAT5」は、100Mbpsの通信速度に対応しており、500~600Mbpsが基本となる現代のブロードバンド環境からすると、やや旧式といえます。この場合は、1Gbpsの通信速度に対応する「CAT5e」以上の規格のケーブルに取り替えるだけで、通信速度が一気に向上することが望めます。
ただし例外として、IEEE 802.3ab規格では、1000BASE-Tのイーサネットを適用範囲として、1Gbps通信を行う規格も定義されています。
抜き差しを頻繁に繰り返す
例えば、ノートパソコンにLANケーブルをつなげてネットを利用している場合、ノートパソコンを移動させる度にケーブルを抜き差しすることになるでしょう。ケーブルの抜き差しを頻繁に繰り返すと、先端のコネクター部分が欠けたり歪んだりしてしまい、接続できなくなってしまう場合があります。
接続台数が多すぎる
ネットワークの構築環境にもよりますが、ネットワーク内に多くの端末が接続れてれていたり大きなデータが通信されていたりすると通信速度が低下することがあります。
Wi-Fiルーターを中継器として使い、有線LANとWi-Fi(無線LAN)を併用する
有線LANは、デスクトップパソコンやインターネット対応のテレビ、Blu-rayレコーダーなどをつなげるのに適しています。一方で、スマホやタブレット、ポータブルゲーム機などをネットにつなげるときは、LANケーブルのコネクターの差し込み口がないので、有線接続ができません。
家庭でネットワーク環境を構築する際は、有線と無線の二者択一でなく、両者を併用することができます。機種にもよりますが、Wi-Fiルーターには有線ポートが1~4個ほどついています。このポートにLANケーブルを挿すことで、有線LANとしてパソコン等に接続することができます。
例えば、2階建ての家で、1階にデスクトップパソコンが置いてあり、2階ではスマホやゲーム機に接続したい場合、次のような構築にすると、どの部屋でも快適にネットに接続することができるでしょう。
1階:モデムにWi-Fiルーターを接続し、有線LANポートにLANケーブルを挿してデスクトップパソコンにつなぐ。
2階:Wi-Fiルーターを中継器として置き、スマホやゲーム機につなぐ。
このように、有線LANとWi-Fi(無線LAN)を併用することで、快適なネット環境が望めます。なお、「中継機能」を備えたWi-Fiルーターなら、ルーターを中継器として使うことができます。もしも、電波が届きにくい部屋がある場合は、Wi-Fiルーターをもう1台置いて中継器として使用することもできます。家の広さやネットに接続する端末の種類や数に合わせて、検討してみてはいかがでしょうか。