「これからのオフィスは全部Wi-Fiでいい」。そう言い切れたら話は早いですが、実際の現場では、無線にして後悔する場所と、有線のままで困らない場所がはっきり分かれます。
無線LANは便利です。配線がいらず、席を自由に動けるため、フリーアドレスやモバイルワークとも相性がいい一方で、有線LANには無線では代えにくい強みがあります。速度の安定と、止まりにくい信頼性です。
正解は「どちらか」ではなく「どこを有線にし、どこを無線にするか」。この線引きを間違えると、「重要な業務が無線で不安定」「自由に動きたい場所が有線で固定」という、ちぐはぐな環境ができあがります。
- 有線と無線、それぞれが本当に得意なこと・苦手なこと
- 「この場所・この用途は有線か無線か」を判断する基準
- 両方を組み合わせて、過不足のない環境を作る考え方
結論:「動くか・止まると困るか」で線を引く
先に判断の軸を示します。有線と無線の使い分けは、(1)その端末は動くか(移動するか)(2)止まると業務が止まるかという2つで決まります。
- 動かない × 止まると困る
サーバ、基幹業務の固定PC、複合機などは有線に寄せるのが基本です。
- 動く × 多少の不安定は許容できる
ノートPC、スマホ、来客端末などは無線が向いています。
速度の最大値だけ見れば無線も十分速くなりました。だが無線は電波である以上、周囲の混雑や障害物で揺らぎます。一方の有線は、ケーブルでつながっている限り、その揺らぎがほぼありません。「絶対に止めたくない・遅くしたくない」ものは有線に寄せる、というのが基本方針です。
無線のカタログ速度が有線に並んだとしても、それは最高条件での瞬間最大値にすぎません。実務で効くのは、最大値そのものよりも「いつ測っても同じ速度が出るか」という再現性です。
| 項目 | 有線LAN | 無線LAN |
|---|---|---|
| 速度の安定 | 揺らぎが少なく安定 | 環境で変動する |
| 信頼性 | 高い(物理接続) | 干渉・障害物に左右される |
| 配線の手間 | ケーブルが必要 | 不要 |
| 移動の自由 | 席に固定される | 自由に動ける |
| セキュリティ | 物理的に守りやすい | 設定で対策が必要 |
| 向く用途 | 基幹業務・サーバ・複合機 | ノートPC・スマホ・来客 |
現場で多い相談
入口で増えているのは「いっそ全部Wi-Fiにできないか」という相談です。ただ実際に詰めていくと、サーバ・基幹業務・複合機は有線に残す"混在"に落ち着くことがほとんどです。
ビル管理業のお客様では、全社員をノートPCにしてフリーアドレス化しWi-Fiを主役にしつつ、「地震などで通信障害が起きても顧客対応を止められない」という理由から、Wi-Fiと有線LANを併用し、固定電話回線も各部門に1回線ずつ残しました。
有線LANが勝る場面:安定と信頼が要るところ
有線LANの価値は、「速度が揺らがない」「めったに止まらない」という一点にあります。地味ですが、業務の根幹を支える場面では、この安定が決定的に効きます。
サーバ・NAS・基幹システム
社内のサーバや共有ストレージ(NAS)、基幹業務システムにつながる端末は、有線が基本です。大容量のデータをやりとりする・常時稼働する・止まると全員が困る場所では、無線の揺らぎは許容しにくくなります。
経理・設計など重い処理の固定デスク
大きなファイルを扱う設計部門、止められない経理処理、長時間の安定接続が要る業務。席を動かないなら、有線にしておくほうが安心です。
複合機・固定IP電話などの据え置き機器
動かない据え置き機器は、無線にする利点が薄いものです。むしろ無線にすると、電波の混雑要因を1つ増やすことになります。固定機器は有線に寄せておくと、無線の帯域を人の端末に回せます。

有線が効く製品選定のポイント
大容量データを扱う設計部門やサーバ・NAS周りは、有線化で転送の"待ち"や揺らぎが体感で安定します。エレコムのLANケーブルは、10ギガビット(10GBASE-T)対応のCat6Aを軸に、狭所配線向けのスリム、カーペット下などに這わせやすいフラット、抜き差しに強いツメ折れ防止、長距離向けの自作用長尺まで、設置環境に合わせて選べます。
末端をWi-Fi 6にしても、手前のスイッチやケーブルが旧世代だと頭打ちになるため、ギガ/10G対応でそろえるのが要点です。
無線LANが勝る場面:動きと自由が要るところ
無線LANの価値は、「配線から解放される」「自由に動ける」ことです。働き方が固定席から流動的に変わるほど、この自由度が効いてきます。
- ノートPC・スマホ・タブレット
持ち運ぶ前提の端末は、無線が当然の選択になります。会議室へ、別フロアへ、自席へ。移動しながら使う端末を有線でつなぐのは現実的ではありません。
- フリーアドレス・打ち合わせスペース
席が固定されないフリーアドレスや、人が入れ替わる打ち合わせスペースでは、有線の配線が邪魔になります。レイアウト変更のたびに配線を引き直す手間も省けます。
- 来客・共用エリア
来客にネットワークを提供するなら無線が基本です。ただし、来客用は業務用と必ず分ける必要があります。
無線を選ぶ場合の注意は、人数が増えたときの同時接続です。多人数のオフィスで無線を主役にするなら、同時接続に強いWi-Fi 6が有利になります。
無線のもう一つの利点は、レイアウト変更への強さです。組織変更や増員で席替えが起きても、無線なら机を動かしても端末はそのままつながります。固定的なオフィスより、変化を前提とした働き方にこそ無線は向いています。
フリーアドレス化での切り分け
フリーアドレス化の相談では、「人が持ち歩く端末(ノートPC・タブレット・スマホ)は無線、動かない固定機器(複合機・IP電話・サーバ)は有線」と切り分ける構成を基本に提案しています。
一方で、無線化=配線ゼロではありません。APを置く天井・壁まで給電を兼ねたケーブルを通す工事は残ります。工場でiPad運用のために無線APを入れたお客様では、実機を持ち込んで測りながら機種・台数・設置場所を決めて解消した例もあります。
使い分けの判断基準:環境別の早見表
ここまでを、オフィスの場所・用途ごとに落とし込みます。多くのオフィスは「有線と無線の混在」が正解です。どちらか一方に寄せるのではなく、適材適所で組みます。
| 場所・用途 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| サーバ室・NAS | 有線 | 大容量・常時稼働・止められない |
| 経理・設計など固定デスクの基幹業務 | 有線 | 安定が最優先・席を動かない |
| 複合機・固定IP電話 | 有線 | 据え置き・無線の混雑要因を減らす |
| 一般社員のノートPC | 無線(必要時に有線も) | 移動する・席替えに強い |
| フリーアドレス席 | 無線 | 配線レイアウトに縛られない |
| 会議室・打ち合わせ | 無線(重要会議は有線併用) | 人が入れ替わる |
| 来客・共用エリア | 無線(業務用と分離) | 配線不要・分離が前提 |
「無線だけど安定させたい」場所への打ち手
会議室のように「人が動くから無線にしたいが、Web会議は安定させたい」という場所もあります。こうした場所では、無線を基本にしつつ、登壇者や重要会議向けに有線の差込口を1〜2口残しておくと両立できます。

設置の前提として、無線APも結局はスイッチから有線で給電・接続されます。つまり「無線中心」のオフィスでも、土台の有線(スイッチ・ケーブル・配線)は必ず必要です。無線か有線かは「末端をどちらにするか」の話であって、有線インフラが消えるわけではありません。
混在構成の導入例
ビル管理業のお客様では「人の端末は無線・緊急時に備えて有線も併用」というハイブリッド構成を採用しました。回復期リハビリ病院では、電子カルテ(HIS)系を外部につながらない有線の院内専用ネットワークとして分離しつつ、インターネットが要る業務系や患者向けの無料Wi-Fiは無線で提供する、という用途別の切り分けを設計しました。
エレコムの法人向け有線・無線製品
エレコムは、ネットワーク機器メーカーとして、有線LAN(スイッチ・LANケーブル)と無線LAN(アクセスポイント)の両方を取りそろえています。「どこを有線・どこを無線にすべきか」という切り分けの相談から、必要な機器の選定までを一体で支援します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有線製品 | L2/L3スイッチ/PoE対応スイッチ/各カテゴリのLANケーブル |
| 無線製品 | 法人向け無線アクセスポイント |
| 支援範囲 | 有線・無線の切り分けと機器選定の相談、グループ会社と連携した電波調査・設計・施工・保守 |
有線では法人向けEHBスイッチ(L2アンマネージからVLAN・QoS対応のL2 Webスマート、PoE+給電・耐熱50℃・3年保証)やCat6A等のLANケーブル各種、無線ではWi-Fi 6のWABシリーズから現行Wi-Fi 7「WAB-BE」までを取りそろえています。
さらに、大規模な全体設計・施工・運用保守は、グループ会社のgroxiと連携して電波調査から一括対応が可能です。導入実績は、オフィス移転にあわせたフロア刷新、工場・倉庫、病院、学校まで幅広くあります。
よくある質問
- Q1. 無線LANの速度が上がった今でも、有線は必要ですか。
必要です。無線の最大速度は確かに向上しましたが、無線は電波である以上、混雑や障害物で揺らぎます。「絶対に止めたくない・遅くしたくない」サーバや基幹業務は有線に寄せるのが堅実です。
- Q2. フリーアドレスにしたら、有線の差込口は全部撤去していいですか。
全撤去はおすすめしません。安定が要る作業や重要なオンライン会議のために、共用エリアに有線の差込口を数口残しておくと安心です。
- Q3. 有線と無線、どちらがセキュリティ的に安全ですか。
物理的に線でつながる有線は、外部から電波を拾われる心配がない分、守りやすい面があります。無線は便利ですが、暗号化や来客分離などの設定をきちんと行う必要があります。
実際によく聞かれる相談
「LANケーブルは結局どのカテゴリを買えばいいのか。Cat6で足りるのか、10Gを見込むならCat6Aにすべきか」という質問はよくいただきます。もう一つ多いのが、「島(席)で有線の差込口が足りないので、市販のハブを足してもいいか」という相談です。管理外のハブを勝手に増設すると、ケーブルの挿し間違いでループ障害が起きることがあるため、ループ防止機能付きのスイッチで計画的に増設するのが安全です。
まとめ:正解は「混在」、軸は「動くか・止まると困るか」
有線か無線かは、二者択一ではありません。動くか・止まると困るかで線を引き、適材適所で混在させる。これが過不足のないオフィスの作り方です。
- 判断軸は「動くか」「止まると困るか」の2つ
- 安定・信頼が要る固定機器は有線(サーバ・基幹業務・複合機)
- 移動・自由が要る端末は無線(ノートPC・スマホ・来客)
- 多くのオフィスは混在が正解。無線中心でも土台の有線インフラは必須
まずは自社の端末を「動く/動かない」「止まると困る/困りにくい」で仕分けてみてください。その仕分けが、有線・無線の最適な配分を教えてくれます。切り分けに迷ったら、両方を扱うメーカーに相談するのが近道です。

