法人ソリューション コラム
  • NAS・HDD・ストレージ
  • セキュリティ対策
  • 会社・オフィス
2026.09.15

中小企業のデータバックアップ入門:BCP対策の第一歩

この記事をSNSで共有しませんか?
中小企業のデータバックアップ入門 - NASやクラウドを活用したデータ保護のイメージ図

「バックアップ、ちゃんと取れていますか」と聞かれて即答できる中小企業は、意外と少ない。共有サーバーが一杯になると、誰かが「とりあえず外付けHDDにコピーしておいて」と言う。そのHDDが今どこにあって、いつのデータまで入っているのか――答えられる人がいない。これが多くの現場の実態ではないでしょうか。

データが消えるのは、火事や地震のときだけではない。HDDの寿命、ランサムウェア(=データを暗号化して人質に取るウイルス)、操作ミスによる削除、退職者のうっかり持ち出し――きっかけは日常に無数にある。そして失われた受発注データや顧客名簿は、お金を払えば買い戻せるものではありません

この記事では、バックアップをこれから整える担当者に向けて、次の3点を順に説明します。

  • バックアップとBCP(事業継続計画)がなぜつながるのか
  • 何を・どこに・どのくらいの頻度で残すか、という最小限の設計
  • 外付けHDD/NAS/クラウド、それぞれの向き不向きと選び方

バックアップは「IT作業」ではなく「事業を止めないための備え」

結論から言えば、バックアップはコスト削減でも単なるIT作業でもなく、会社が止まらないための保険です。BCP(事業継続計画=災害や事故が起きても事業を続ける計画)の、一番手前にある具体策がバックアップだと考えてください。

製造でも卸でも小売でも、いまの会社は受発注・在庫・請求・顧客情報をデータで動かしています。このデータが数日戻らないだけで、出荷が止まり、請求が遅れ、問い合わせに答えられなくなる。工場や倉庫が無事でも、データが消えれば事業は止まる。ここがピンと来るかどうかが分かれ目です。データの喪失は「不便」ではなく「事業リスク」――この認識からBCPは始まります。

「うちは小さいから狙われない」が一番危ない

大企業ばかり攻撃されると思われがちですが、実際は逆です。攻撃者は守りの手薄なところを狙う。セキュリティ専任者がいない中小企業のほうが、むしろ侵入されやすい。そして取引先の大企業から見れば、自社のサプライチェーン(取引網)に弱い環があることになる。「小さいから」は守られる理由にならず、狙われる理由になりつつあります

BCPの土台としてデータバックアップが位置づけられることを示す3層のピラミッド図

まず決めるのは「何を・どこに・どのくらいの頻度で」の3つだけ

バックアップ設計は複雑に考えがちですが、最初に決めるのは3つに絞れます。対象(何を)・保存先(どこに)・頻度(どのくらい)。これを紙1枚に書き出すところから始めてください。

バックアップ設計で決める3要素「何を・どこに・どのくらいの頻度で」の図

(1) 何を残すか ― 全部ではなく「消えたら困るもの」から

全ファイルを残そうとすると、容量も手間も膨らんで続きません。まず「これが消えたら明日の業務が止まる」データを洗い出します。

優先度 データの例 目安
最優先 受発注・請求・会計データ、顧客名簿、契約書 毎日残す
重要 設計データ、業務マニュアル、共有ドキュメント 毎日〜週次
後回し可 一時ファイル、再取得できる素材 残さない判断も可

「全部大事」と言いたくなりますが、優先度をつけないとバックアップは破綻します

(2) どこに残すか ― 1か所だけは危ない

保存先は後の章で詳しく扱いますが、原則は「元データと別の場所に、最低もう1つ」。同じPCの中に複製を置いても、そのPCが壊れれば両方消えます。物理的に分けるのが第一歩です。

(3) どのくらいの頻度で ― 「1日分の作業を失っても許せるか」で決める

頻度は「最悪、どこまでのデータ消失なら耐えられるか」から逆算します。1日分の入力をやり直せる規模なら日次で十分。1時間も止められない受注システムなら、より短い間隔やリアルタイム同期を検討します。この「どこまで戻ってよいか」の許容を、BCPの言葉でRPO(目標復旧時点)と呼びます。

外付けHDD・NAS・クラウド ― 3つの保存先をどう使い分けるか

結論を先に言うと、どれか1つを選ぶのではなく、性質の違う2つ以上を組み合わせるのが正解です。それぞれに得意・不得意があるからです。

保存先 強み 弱み 向いている用途
外付けHDD/SSD 安価・手軽・大容量 接続したままだとウイルスや盗難に弱い/世代管理が手作業 個人PCの補助、持ち出し用の複製
NAS 全社共有・自動バックアップ・冗長化が可能 初期設定が必要/本体が同じ場所だと災害に弱い 社内の共有データの中核
クラウド 遠隔地保管・災害に強い・自動化しやすい 月額費用/回線速度に依存/大容量は割高 遠隔地コピー、社外からのアクセス

NASは「壊れても止まらない」設計ができる

NAS(ナス=ネットワークにつないで複数人で共有できる収納庫のような機器)の利点は、複数のディスクを束ねて使えること。RAID(レイド)という仕組みを使えば、ディスクが1台壊れてもデータが消えない構成にできます。たとえばRAID1(ミラーリング)は同じデータを2台に同時に書く方式で、片方が壊れてももう片方で動き続けます。

ただし誤解されやすい点を1つ。RAIDはバックアップではありません。 RAIDはディスク故障に備える仕組みであって、ファイルを誤って消したりランサムウェアに暗号化されたりすれば、両方のディスクに同じ被害が及びます。RAID付きNASを入れたから安心ではなく、そのデータをさらに別の場所へ複製してはじめてバックアップになります

クラウドは「遠くに置く1部」として効く

地震や火災でオフィスごと被災すれば、社内のHDDもNASもまとめて失われます。だからこそ、コピーの1つは地理的に離れた場所――クラウドや遠隔地に置く意味があります。全データを上げると費用がかさむので、最優先データだけクラウドへ、という使い分けが現実的です。

なお、この「複数箇所・複数媒体に分けて持つ」考え方を体系化したのが3-2-1ルールです。詳しくはランサムウェア対策の記事で扱いますが、入門段階では「元データのほかに、せめてもう2か所」を合言葉にしてください。

外付けHDD・NAS・クラウドの3つのバックアップ保存先の強み・弱み・用途を比較した図

「取って終わり」にしないための3つの落とし穴

バックアップは設計したら終わりではなく、むしろ運用でつまずくケースが大半です。よくある落とし穴を3つ挙げます。

  • 復旧テストをしていない

    取れていても、いざ戻そうとしたら壊れていた・手順がわからない――これが最悪です。半年に一度でいいので、実際に1ファイル戻す訓練をしてください。「戻せること」まで確認して、はじめてバックアップは完成します

  • 担当者しか手順を知らない

    設定した人が退職・休職すると誰も触れなくなる。保存先・パスワード・復旧方法を1枚の手順書にして共有しておくことが、BCPとして欠かせません。

  • つなぎっぱなしで被害が連鎖する

    常時接続の外付けHDDやNASは、ランサムウェアに感染するとバックアップごと暗号化されます。重要な世代は接続を切って保管する(オフライン保管)か、書き換え不可にしておく。この一手間が最後の砦を守ります。

エレコムのストレージ/NAS製品でできること

エレコムは、外付けHDD・SSDからネットワーク対応のNASまで、中小企業のバックアップに使えるストレージを幅広く扱っています。「まず1台から始めたい」「全社共有とバックアップをまとめたい」といった段階に応じて選べます。

取り扱い 外付けHDD/SSD、ポータブルストレージ、ネットワーク対応HDD(NAS)
容量帯 個人補助の小容量から、全社共有向けの大容量・複数ベイモデルまで
想定用途 PC単位の補助バックアップ、部門共有、全社データの中核保管、遠隔地コピーの起点
選定サポート 用途・データ量・予算からの製品選定のご相談に対応

容量や型番の最適解は用途で変わります。「自社の規模だとどの構成がよいか」は、扱うデータ量と運用体制を踏まえて選ぶのが確実です。

よくある質問

  • Q1. 外付けHDDにコピーしているだけでも、バックアップと言えますか。

    「もう1か所に複製がある」という点では第一歩です。ただし同じ場所に常時接続で1台だけ、という状態は、災害・盗難・ランサムウェアにまとめてやられます。最低でも「もう1か所(できれば遠隔地)」「世代管理(上書き前のデータも残す)」を足すと、ぐっと安心になります。

  • Q2. RAIDを組んだNASがあれば、別のバックアップは不要ですか。

    不要にはなりません。RAIDはディスク故障に強いですが、誤削除・ウイルス・本体ごとの災害には無力です。NASのデータを外付けHDDやクラウドへもう一度複製して、はじめてバックアップになります。

  • Q3. クラウドだけにすれば、社内に機器を置かなくて済みますか。

    理屈上は可能ですが、大容量データを毎回やり取りすると回線速度と費用がネックになります。日常使う共有データはNASなど手元に置き、最優先データの複製をクラウドへ――という併用が現実的です。

まとめ ― 完璧でなくていい、まず「もう1か所」から

  • バックアップはIT作業ではなく、事業を止めないBCPの第一歩。データが消えれば、工場が無事でも会社は止まる
  • 設計は「何を・どこに・どのくらいの頻度で」の3つから。全部ではなく「消えたら困るもの」を優先する
  • 保存先は性質の違う2つ以上を組み合わせるRAIDはバックアップではない、を忘れずに
  • 取って終わりにせず、復旧テスト・手順共有・オフライン保管で「戻せる状態」を保つ

最初から完璧な体制は要りません。まず重要データを「もう1か所」に残す。それだけで、最悪の事態の多くは防げます。自社の規模に合うストレージ選びから、気軽にご相談ください。

※法人様向け「導入ご相談 / 製品・サービスの販売」以外の
お問い合わせは、回答致しかねますのでご了承ください。

新着記事