監視カメラを導入している企業から、「録画は残っているはずだったのに、事故から2週間後に確認しようとしたら上書きされて消えていた」という相談が入ることがあります。原因の多くは、カメラの性能ではなくストレージの容量設計にあります。何日分の映像を、何チャンネル分、どのくらいの画質で残すかを決めないまま録画装置を選ぶと、想定より早く上書きが始まります。
監視カメラの録画データは、解像度・フレームレート・圧縮方式・チャンネル数の掛け算で容量が決まります。この計算を後回しにすると、事故やクレーム対応で「肝心な日の映像だけがない」という事態を招きます。防犯目的だけでなく、来店客とのトラブル対応や労務管理の証跡としても録画データの保存期間は経営リスクに直結します。
この記事では、監視カメラの録画データ保存を検討している総務・情報システム担当者に向けて、次の3点を具体的な数値とともに整理します。
- 録画データの容量を自分で計算する方法と目安の数値
- 保存日数を決める際の考え方と、法令・業界慣行との関係
- 録画用ストレージに求められる構成とNASの選び方
録画データの容量は「ビットレート×時間×チャンネル数」で決まる
必要な容量は計算式で出せます。基本の式は次のとおりです。
1日あたりの容量(GB)= ビットレート(Mbps)÷ 8 × 86,400秒 ÷ 1,024
例えば200万画素(フルHD相当)のカメラをH.265圧縮、ビットレート4Mbpsで24時間録画する場合、1日あたり約42GBになります。これを30日保存・8チャンネルで計算すると、42GB×30日×8ch で約9.9TBが必要という計算になります。画質やチャンネル数を変えるとどう変わるか、目安を一覧にしました。
| 画素数・圧縮方式 | ビットレート目安 | 1日あたり容量(1ch) | 30日保存(1ch) |
|---|---|---|---|
| 130万画素・H.264 | 2Mbps | 約21GB | 約630GB |
| 200万画素・H.265 | 4Mbps | 約42GB | 約1.26TB |
| 500万画素・H.265 | 8Mbps | 約84GB | 約2.52TB |
ここに書いたビットレートはあくまで目安で、動きの多い映像(人通りの多い出入口など)は可変ビットレート方式により実際の数値が上振れすることがあります。見積もりの段階では、この表の数値に1〜2割ほど余裕を持たせておくと、上書きサイクルが想定より早まる事態を避けやすくなります。
チャンネル数が増えるほど必要容量は線形に増えます。8チャンネルで9.9TBなら、16チャンネルに増やせば単純計算で約19.8TBです。カメラの増設予定があるなら、最初から拡張余地のあるベイ数のNASを選んでおいたほうが、後からの入れ替えを避けられます。ベイ数と拡張性の選び方は、別記事「法人向けNASの選び方|容量・ベイ数・RAID・拡張性で決める5つの軸」で軸ごとに整理しています。機種選定の段階で、あわせて確認してください。
保存日数は「何のための録画か」で決める
保存日数を先に決めてから容量を逆算するのが正しい順番です。目的をあいまいにしたまま「とりあえず30日」で決めると、必要な場面で足りなくなったり、逆に過剰投資になったりします。
一般的な防犯目的(万引き対策、不審者対応など)であれば、2週間から30日程度の保存が実務上の目安として使われることが多くあります。トラブル発生からクレームや相談が寄せられるまでのタイムラグを考えると、2週間を下回ると「あの日の映像が欲しい」というタイミングに間に合わないことがあります。
一方で、労務管理や作業証跡として使う工場・倉庫のカメラでは、月次の棚卸しや監査サイクルに合わせて60日以上を求められるケースもあります。金融機関や医療機関など、業界団体のガイドラインや自治体の条例で最低保存期間が定められている業種も存在するため、該当する場合は自社の業界基準を先に確認したほうが確実です。ここは推測で決めないでください。法務・コンプライアンス部門と保存日数の要件をすり合わせてから、ストレージ容量を計算します。
保存日数を延ばせば、必要容量も比例して増えます。容量が不足してきた際にどう対応するか(ディスク追加か、機器そのものの世代交代か)は、判断を誤ると無停止での移行が難しくなります。この判断基準は別記事「NASの容量が足りなくなったら|拡張・移行・世代交代の判断」で扱っているので、増設計画を立てる段階で目を通しておくと後戻りが少なくなります。
録画用ストレージに求められる構成 ― 24時間書き込みに耐えられるか
監視カメラの録画は、一般的なオフィス用途のファイル共有とは負荷特性がまったく異なります。24時間365日、複数チャンネル分の映像が同時に書き込まれ続ける点が最大の違いです。
一般のPC用HDDは、1日数時間の稼働を前提に設計されている製品が多く、これを監視カメラ用途に転用すると、連続書き込みの負荷で想定より早く故障率が上がることがあります。録画用途では、24時間連続稼働・常時書き込みを想定して設計されたHDDを搭載できる機器を選ぶのが基本です。
もう一点見落とされがちなのが、録画データそのものの保護です。RAID構成を組んでいれば、ディスク1台が故障しても録画を止めずに済む可能性が高まります。ただしRAIDは「壊れたディスクの交換中もデータが読める」仕組みであって、誤って録画設定を消してしまった場合や、ランサムウェアで暗号化された場合には無力です。録画データも、業務データと同じくバックアップ設計の対象です。RAID構成ごとの耐障害性の違いは「RAIDはバックアップではない|構成別の耐障害性と必要な二重化」、バックアップの基本設計は「ランサムウェアに備えるバックアップ設計|3-2-1ルールの実装手順」で詳しく扱っているので、録画専用機だからと後回しにせず一度目を通しておくと良いでしょう。
選定時の確認項目をまとめます。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 対応チャンネル数 | 現在のカメラ台数に加え、増設予定を含めた台数 |
| ベイ数・拡張性 | 保存日数を延ばす際にディスクを追加できるか |
| HDDの想定稼働時間 | 24時間連続書き込みに対応した設計か |
| RAID構成 | ディスク故障時に録画を継続できるか |
| バックアップ体制 | 録画データ自体の二重化・世代管理があるか |
エレコムのNAS・ストレージ関連製品・サービス
エレコムは、法人向けにQNAP社製NASを取り扱っています。QNAP製NASの一部モデルには映像監視向けの機能を搭載したものがあり、複数チャンネルのカメラ映像をNAS上で一元管理する構成を組めます。録画専用機(NVR)を別に置かず、ファイルサーバーと録画ストレージを1台に集約したいという要望にも対応しやすくなっています。
具体的な対応チャンネル数や搭載可能なライセンス数、保守内容は機種によって異なります。詳細は製品ページでご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品カテゴリ | QNAP法人向けNAS(映像監視対応モデルを含む) |
| 対応範囲 | 複数チャンネルの監視カメラ映像の録画・保存・管理 |
| 関連サービス | 法人向けQNAP保守サービス |
よくある質問
Q1. クラウドに直接録画を保存すればNASは不要ではないですか。
クラウド保存にも選択肢はありますが、常時録画をそのままクラウドへ送り続けると、回線帯域とクラウド利用料の両方が膨らみやすくなります。多くの現場では、まずNASなどのオンプレミス機器に録画し、重要なイベント映像や一部の期間分だけをクラウドへ二次保存するハイブリッド構成が現実的な落としどころになっています。社外からのアクセスや遠隔地保管をどこまで組み合わせるかは、別記事「社外からNASへ安全にアクセスする方法|VPNとクラウド接続の比較」も参考にしてください。
Q2. 容量が足りなくなったら、録画を止めずにディスクを増やせますか。
機種とRAID構成によります。対応機種であれば、稼働させたままディスクを追加してボリュームを拡張できる場合があります。ただし構成によっては一度停止が必要になることもあるため、導入時点で「無停止拡張に対応した構成か」を確認しておくことをおすすめします。
まとめ ― 保存日数を先に決め、容量は逆算する
監視カメラの録画データ保存は、行き当たりばったりで機器を選ぶと、必要なときに映像が残っていないという事態を招きます。判断の流れは次の3つです。
- 容量は「ビットレート×時間×チャンネル数」の計算式で先に見積もります
- 保存日数は防犯・労務・監査など「何のための録画か」を先に決めてから逆算します
- 24時間連続書き込みに耐える構成と、録画データ自体のバックアップ体制を両方確認します
カメラの台数や画質を変える予定があるなら、その分の余裕を最初のストレージ選定に織り込んでおいたほうが、後からの入れ替え作業を減らせます。具体的な機種構成や拡張プランで迷う場合は、早めに相談してみてください。

