「RAID5だから、ディスクが一台壊れても大丈夫」----NASを選ぶときによく耳にする理屈です。半分は正しく、半分は誤解。RAIDが守ってくれるのは、あくまで「ディスク一台が物理的に壊れた瞬間」の話であって、データそのものを失う原因はそれ以外にいくらでもあります。誤って削除した、上書きしてしまった、ランサムウェアに暗号化された、火災でNASごと焼失した----こうした場面では、RAIDの構成がどれだけ堅牢でも意味を持ちません。全ディスクに同じデータが同時に反映される仕組みだからこそ、誤操作や暗号化もまた全ディスクに同時に反映されてしまいます。
RAIDと「バックアップ」は、そもそも目的が違う機能です。RAIDは「壊れても止まらない」ための可用性の仕組みであり、バックアップは「消えても戻せる」ための保全の仕組みです。この二つを混同したまま構成を決めると、実際に事故が起きたときに「RAIDを組んでいたのに復旧できない」という事態に陥ります。
この記事では、RAID構成ごとの耐障害性の違いを整理したうえで、RAIDだけでは足りない理由と、実務でどう二重化を設計すればよいかを解説します。
- RAIDの各構成(0/1/5/6/10)が、それぞれ何台の故障まで耐えられるか
- 「RAID5で一台までなら安心」が危うい理由
- RAIDとバックアップを役割分担させる具体的な設計の考え方
RAIDが守るのは「ディスク一台の物理故障」まで
RAIDが対処できるのは、構成したディスクのうち一部が物理的に故障した場合の「継続稼働」だけです。データを複数のディスクに分散・複製して書き込むことで、一台が壊れても残りのディスクから元のデータを再構成し、サービスを止めずに動かし続けられます。これがRAIDの本質であり、唯一の役割でもあります。
裏を返せば、書き込まれる内容そのものが誤っていた場合、RAIDはそれをそのまま複数のディスクに反映してしまいます。重要なフォルダを誤って削除すれば、その削除は各ディスクに即座に反映されます。ランサムウェアがファイルを暗号化すれば、暗号化された内容がRAID構成の全ディスクに書き込まれます。RAIDは「正しいデータを壊れにくく保存する仕組み」であって、「間違った操作からデータを守る仕組み」ではありません。この違いを理解しないまま導入すると、「RAIDを組んでいるから安心」という誤った安心感だけが残ることになります。
構成別に見る耐障害性 ― RAID0/1/5/6/10の違い
RAIDにはいくつかの構成(レベル)があり、耐えられる故障台数と使える容量はレベルごとに異なります。まず全体像を整理します。
| RAIDレベル | 最小ディスク数 | 実効容量の目安 | 同時に耐えられる故障台数 | 主な弱点 |
|---|---|---|---|---|
| RAID0 | 2台 | ディスク台数分(縮小なし) | 0台(1台でも壊れると全損) | 冗長性が一切ない |
| RAID1 | 2台 | 1台分 | 1台 | 容量効率が低い(50%) |
| RAID5 | 3台以上 | (台数-1)台分 | 1台 | リビルド中の追加故障に弱い |
| RAID6 | 4台以上 | (台数-2)台分 | 2台 | 書き込み性能がRAID5より低下しやすい |
| RAID10 | 4台以上(偶数) | 台数の半分 | 構成により1台〜複数台 | 容量効率が50%にとどまる |
RAID0は冗長性がなく速度優先の構成で、業務データの保存には向きません。RAID5は容量効率と冗長性のバランスが良く中小企業のファイルサーバー用途で広く使われてきましたが、後述するリビルドのリスクを抱えます。RAID6は2台同時故障まで耐えられるため大容量・多台数構成で選ばれることが増え、RAID10は速度と冗長性を両立する一方、容量効率で劣ります。
どのベイ数・RAID構成を選ぶかは、導入時点の重要な判断になります。この選び方の軸は、別記事「法人向けNASの選び方|容量・ベイ数・RAID・拡張性で決める5つの軸」で詳しく扱っていますので、機種選定の段階であればあわせて確認してください。
「RAID5なら一台までは安心」が危うい理由 ― リビルドという弱点
RAID5・RAID6の耐障害性は、故障したディスクを交換したあとの「リビルド(再構築)」が正常に完了して初めて成立します。この再構築中は、残りのすべてのディスクを総なめするように読み込んでパリティからデータを再計算するため、平常時より強い負荷がかかり続けます。ディスク一台あたりの容量が大きくなるほど、リビルドにかかる時間は長くなります。数テラバイト級のディスクであれば、構成や台数にもよりますが、数時間から半日以上に及ぶこともめずらしくありません。
問題は、このリビルド中に別のディスクで読み取りエラーや故障が起きた場合です。RAID5では残りの冗長性がゼロになり、再構築そのものが完了できなくなります。とくに同一ロット・同時期に購入したディスクは劣化の進み方も似通う傾向があるため、一台が寿命を迎えた時点で他のディスクも同様に寿命へ近づいている可能性があります。台数が多い構成やディスク容量が大きい構成ほど、リビルド中の「無防備な時間」が長くなり、その間にもう一台が壊れるリスクが相対的に高まります。これがRAID6や、ホットスペア(予備ディスク)の併用が検討される理由です。
RAIDとバックアップを役割分担させる ― 二重化の考え方
RAIDとバックアップは、どちらか一方を選ぶものではありません。役割の異なる二つの仕組みとして併用します。RAIDは「ハードウェア故障が起きても業務を止めない」ための可用性対策であり、バックアップは「誤削除・暗号化・災害でデータそのものを失った」場合に別の場所・別の時点のコピーから復元するための保全対策です。片方だけでは、守れる事故は半分にとどまります。
具体的には、NAS本体はRAID5またはRAID6で構成しつつ、日次・週次でバックアップを別のディスクやクラウドストレージへ複製する、という二段構えが最低限の設計になります。バックアップの取り方そのものについては、離れた場所への保管や媒体の分散まで踏み込んだ「3-2-1ルール」という考え方が広く使われています。実装の手順は別記事「ランサムウェアに備えるバックアップ設計|3-2-1ルールの実装手順」で具体的に解説していますので、あわせて確認してください。
また、誤削除やファイルの上書きといった軽微な事故には、バックアップより手軽に復旧できる「スナップショット」という機能も有効です。スナップショットとバックアップは似ているようで用途が異なり、それぞれの使い分けは「スナップショットとバックアップの違い|誤削除と障害への使い分け」で整理しています。加えて、RAID構成を組んでいても、ディスクの異常検知や故障時の迅速な部品交換といった保守体制がなければ、リビルドの成功率自体が下がります。保守の必要性については「NASの保守はなぜ必要か|故障時に業務を止めないための備え」で扱っています。
エレコムのNAS・ストレージ関連製品・サービス
エレコムは、法人向けにQNAP社製NASの取り扱いおよび保守サービスを提供しています。RAID構成の選定からディスク容量の設計、導入後の保守まで、規模や用途に応じた相談が可能です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品カテゴリ | QNAP NAS(法人向けモデル) |
| 対応範囲 | RAID構成・ベイ数の選定相談、導入設計、保守サービス |
| 保守サービス | 障害時のディスク交換・リビルド支援を含む法人向け保守プラン(詳細は要問い合わせ) |
具体的な機種のRAID対応レベルや最大ベイ数は製品によって異なるため、断定的な数値はここでは記載しません。詳細は製品ページで確認してください。
よくある質問
Q1. RAID6を組んでいれば、バックアップは不要ですか。
不要にはなりません。RAID6は同時に2台までのディスク故障に耐えられる構成ですが、誤削除やランサムウェアによる暗号化、火災や盗難によるNAS本体の喪失には対応できません。RAIDレベルを上げることは可用性を高める対策であり、保全対策であるバックアップの代わりにはなりません。
Q2. ホットスペア(予備ディスク)があれば、リビルド中の追加故障は防げますか。
ホットスペアは、故障を検知した時点で自動的にリビルドを開始できるため、交換までの時間を短縮する効果はあります。ただしリビルド自体にかかる負荷や時間そのものをなくすわけではなく、その間に別のディスクが故障するリスクをゼロにはできません。あくまでリスクを下げる手段の一つとして位置づけるべきです。
まとめ ― RAIDは「止めない」、バックアップは「戻す」
RAIDとバックアップは、守れる事故の種類がそもそも違います。両者の関係を整理すると、次のとおりです。
- RAIDが守るのはディスク一台の物理故障までで、誤削除やランサムウェアには対応できません
- RAID5は一台の故障までは耐えられますが、リビルド中の追加故障という構造的な弱点を抱えます
- RAIDで可用性を、バックアップで保全を、それぞれ別の仕組みとして設計する必要があります
RAID構成を検討する段階で、バックアップ設計もあわせて決めておけば、実際に事故が起きたときの対応がぶれません。構成や保守体制で迷うなら、導入前に一度相談してください。

