「とりあえず4ベイの人気モデルを買ったが、1年で容量が足りなくなった」「安いモデルを選んだらRAIDが組めず、結局バックアップも取れていない」----法人向けNASの選定でよく聞くのは、この手の後悔です。
NASはいったん設置すると、社内の共有フォルダやバックアップ先として何年も使われ続ける機器になります。個人用の外付けHDDを買う感覚で選ぶと、容量不足・性能不足・拡張不能のいずれかに数年以内に突き当たります。逆に言えば、購入前に5つの軸さえ押さえておけば、選定作業そのものは難しくありません。
これから法人用にNASを導入する情報システム担当者・総務担当者に向けて、機種選定で確認すべき基準を整理しました。次の3点は、購入前に決めておかないと後から変えにくい部分です。
- 容量とベイ数を決めるための考え方
- RAID構成ごとの特徴と、選ぶべき基準
- 将来の拡張性を見誤らないための確認ポイント
軸1:容量は「今の使用量」ではなく「3年後の使用量」で決める
容量選定で最も多い失敗は、購入時点のファイルサイズの合計をそのまま基準にすることです。NASは一度導入すると数年単位で使い続けます。容量は、将来の増加分まで織り込んで決めます。
目安としては、現在の総データ量に加えて、過去1年間のデータ増加率を確認し、それを3年分見積もっておくと大きく外れにくいです。たとえば現在500GBを使用していて、年間20%のペースで増えているなら、3年後にはおよそ860GBに達する計算になります(500GB×1.2の3乗)。ここにRAIDによる冗長化分(後述)とバックアップ用の余裕を足すと、実効容量は使用量の2倍前後を見ておくのが現実的です。
なお、ベイ数を増やすほど総容量は稼げますが、消費電力・設置スペース・故障時の交換コストも比例して増えます。容量だけを見て多ベイ機を選ぶと、運用コストで割高になるケースもあります。容量が将来的に足りなくなった場合の対処法は、別記事「NASの容量が足りなくなったら|拡張・移行・世代交代の判断」で具体的に扱っていますので、増設か買い替えかで迷う段階になったら参照してください。
軸2:ベイ数はRAID構成と将来の増設余地から逆算する
2つ目の軸はベイ数です。今必要なドライブ本数だけで決めると、後で行き詰まります。基準は「RAID構成に必要な本数+将来の増設余地」です。
法人向けNASは2ベイから始まり、4ベイ、6ベイ、8ベイ以上と選択肢が広がります。小規模拠点で共有フォルダ用途だけなら2〜4ベイでも足りることが多いですが、部門ごとにデータを分けたい、バックアップ先としても使いたいという要件が加わると、4〜6ベイが現実的な下限になります。
ここで見落とされがちなのが、「未使用ベイの価値」です。購入時にドライブをすべて埋めてしまうと、容量が足りなくなったときにドライブそのものを大容量品に交換するしかなくなります。1〜2ベイを空けておけば、まず増設で対応でき、コストと作業負担を抑えられます。
軸3:RAIDは冗長化の仕組みであって、バックアップの代わりではない
RAID構成の選択は、法人利用でもっとも誤解の多いポイントです。RAIDはドライブが1台故障してもデータを失わずに稼働を続けるための仕組みであり、誤操作による削除やランサムウェアによる暗号化からは守ってくれません。この違いを理解しないまま「RAIDを組んでいるからバックアップは不要」と判断すると、深刻な事故につながります。
主要な構成の特徴を整理すると次のようになります。
| RAID構成 | 必要ドライブ数 | 耐障害性 | 実効容量の目安 |
|---|---|---|---|
| RAID 1 | 2台 | 1台故障まで耐える | 搭載容量の50% |
| RAID 5 | 3台以上 | 1台故障まで耐える | 搭載容量の(n-1)/n |
| RAID 6 | 4台以上 | 2台同時故障まで耐える | 搭載容量の(n-2)/n |
| RAID 10 | 4台以上(偶数) | 構成により2台以上の故障に耐える場合あり | 搭載容量の50% |
台数の少ない4ベイ機であればRAID 5、より高い耐障害性が必要ならRAID 6、という選び方が一般的な考え方です。ただし、どの構成を選んでもドライブが同時に複数台故障すればデータは失われます。RAID構成別の耐障害性とバックアップとの併用については、別記事「RAIDはバックアップではない|構成別の耐障害性と必要な二重化」でより詳しく整理しています。
軸4:アクセス性能はドライブとネットワークの両方で決まる
NASの体感速度は、搭載するドライブの種類(HDDかSSDか)と、ネットワークの接続規格の両方で決まります。どちらか一方だけを高性能にしても、もう一方がボトルネックになれば速度は頭打ちになります。
一般的な有線LANは1Gbpsの環境が多いですが、これは理論値で毎秒125MB程度が上限になります。動画編集データや大量の画像素材を日常的にやり取りする部門があるなら、2.5Gbpsや10Gbps対応のNASと、それに対応するスイッチ・LANカードをセットで検討する必要があります。ネットワーク側だけ強化しても、NAS本体が対応していなければ意味がありません。両方の仕様をそろえて確認してください。
軸5:拡張性とアクセス権設計は「導入後の運用」を見据えて確認する
最後の軸は、導入後に組織が変化しても対応できるかという拡張性です。増設ベイの有無、上位モデルへのデータ移行のしやすさ、部門やユーザーが増えたときのアクセス権設定の柔軟さは、カタログの容量やCPUスペックほど目立ちません。それでも、長期的な運用負担を大きく左右します。
部門・役職ごとにフォルダのアクセス権をどう分けるかは、導入後につまずきやすいポイントの一つです。この設計方法は、別記事「NASのアクセス権設計|部門・役職別のフォルダ権限の決め方」で具体的な手順を扱っています。また、社外の拠点や在宅勤務者からNASへ安全にアクセスする方法を後から検討する企業も多く、これは「社外からNASへ安全にアクセスする方法|VPNとクラウド接続の比較」で選択肢を比較しています。導入前にこれらの記事にも目を通しておくと、機種選定の段階で必要な仕様が見えやすくなります。
エレコムのNAS・ストレージ関連製品・サービス
エレコムは、法人向けにQNAP社製NASの取り扱いと、導入・保守に関するサービスを提供しています。自社ブランドのNAS本体ではなく、QNAP製品を法人の業務環境に合わせて提案する立場での取り扱いになります。容量・ベイ数・RAID構成の相談から、導入後の保守体制まで、用途に応じた選択肢があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品カテゴリ | QNAP社製 法人向けNAS(2ベイ〜多ベイモデル) |
| 対応範囲 | 機種選定の相談、RAID構成の提案、導入後の保守サービス |
| 保守サービス | 法人向けQNAP保守サービス(詳細は製品ページでご確認ください) |
具体的な型番ごとのベイ数・対応RAIDレベル・価格については、製品ページで最新情報を確認してください。
よくある質問
Q1. 中小企業でも多ベイの上位モデルを選んだほうがよいですか。
必ずしもそうとは言えません。従業員数十名規模で共有フォルダとバックアップ用途が中心なら、4ベイ程度のモデルでも軸1〜3を満たせることが多いです。多ベイ機は初期費用と消費電力が上がるため、将来の増設余地を残しつつ、現時点で必要な性能に見合うモデルを選ぶ方が無駄がありません。
Q2. HDDとSSDのどちらを搭載すべきですか。
用途によります。大容量のファイル共有やアーカイブ用途はHDDのコストパフォーマンスが有利で、業務アプリケーションのデータベースなど頻繁な読み書きが発生する用途はSSDのほうが体感速度が上がります。1台のNASにHDDとSSDを混在させ、用途別にボリュームを分ける構成も選択肢の一つです。
まとめ ― 5つの軸を先に決めれば機種選定は迷わない
法人向けNASの選定は、カタログスペックを比較する前に、次の5つの軸を自社の要件に当てはめておくことで大きく迷いが減ります。
- 容量は3年後の増加分まで見込んで逆算します
- ベイ数はRAID構成に必要な本数と将来の増設余地から決めます
- RAIDは冗長化の仕組みであり、バックアップの代わりにはなりません
- アクセス性能はドライブとネットワークの両方を合わせて確認します
- 拡張性とアクセス権設計は導入後の運用まで見据えて選びます
この5つを社内で整理してから機種選定に入れば、担当者が変わっても判断基準がぶれにくくなります。具体的な型番選びや構成の相談は、早い段階でメーカーの窓口に相談するのも一つの方法です。

