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2024.07.04

生後間もない命を救うため、「新生児蘇生法教育」の質向上を目指して

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創業当初、エレコムはデスクトップ型パソコンのラックなどを販売する会社でした。そして創業から38年経過した今ではパソコン周辺機器メーカーとして、皆さまの暮らしに寄り添った製品・サービスをお届けしています。

<このロゴマーク、見たことがある方も多いのではないでしょうか>

また、近年ではパソコン周辺機器の開発のみならず様々な分野に新規参入しており、その一つとして生まれたばかりの命を救うための「デバイス」の開発を進めています。
今回は、その背景や今後の取り組みについてご紹介します。

適切な処置があれば救えるはずの命が、救えていない現実

医療技術の進歩などにより、世界的に5歳未満の子どもの死亡率は減少しているというデータがあります。一方で新生児(生後28日未満)の死亡率は、緩やかに減少しているものの、5歳未満児の死亡率の中で最も高くなっています(※1)。

さらに、全新生児の約15%が出産直後に呼吸・循環が不安定になってしまい、仮死状態に陥ってしまうそうです(※2)。しかしながら、適切な新生児蘇生法が受けられれば90%以上救命ができると言われています(※3)。

※1:出典 国際連合「UN Levels and Trends in Child Mortality Report」、2022年
※2:出典 世界保健機構「WHO and Maternal and Child Epidemiology Estimation Group」、2018年
※3:出典 総務省消防庁「日本版救急蘇生ガイドライン2020」、2021年

途上国の医療機関が抱えている課題

万が一に備えるため、出産の場には新生児蘇生法を習得した医療従事者の立ち会いが求められています。ところが多くの途上国では、新生児蘇生法を習得している医療従事者が不足しているという課題があります。

また、周産期医療(※4)を提供する施設でも、新生児蘇生法の訓練に利用できる教育設備や習熟した指導者が不足していることや、研修内容が実践的ではないなどの課題を抱えています。

※4:妊娠、分娩に関わる母体・胎児管理と出生後の新生児管理を対象とする医療のことを指します

医療の教育現場が抱えている課題

新生児蘇生技術の向上と、習得した技術力を維持するため、医療従事者には反復トレーニングが提言されています。ところが、特に途上国では、新生児蘇生法を指導できる講師が少なく、シミュレーション教育がほとんど行われず、教育機会の欠如や教育資源不足が大きな課題となっています。

そこで、新生児蘇生法研修の質を向上させ、実践的な技術を習得した医療従事者を増やすことを目指し、産学連携により「遠隔新生児蘇生法講習シミュレーター」の共同開発に取り組みました。

<訓練用デバイスイメージ>

新生児蘇生法のシミュレーション訓練用デバイスを共同開発

当社が開発した訓練用デバイスは、医療用聴診器の一部を交換するだけで訓練ができる「IoT聴診器(※5)」です。マネキンの胸に聴診器をあてると心拍が聞こえる仕組みで、新生児蘇生の講習に広く導入されている既存の新生児マネキンをそのまま用いて学習いただくことが可能です。

※5:訓練用の模擬聴診器であり、非医療機器です。

また、スマートフォンやタブレットを講師用のコントローラーと疑似的な心拍数やSpO2(動脈血酸素飽和度)を表示するモニターとして使えるアプリも共同開発しました。アプリはIoT聴診器と連動し、講師がシミュレーションシナリオ進行の状況に合わせて簡単に操作することができます。

<訓練用デバイスを使用した講習>

新生児蘇生法シミュレーション訓練用デバイスの実用化に向けた取り組み

現在、途上国での普及活動やニーズの把握を行っています。医療機関や教育機関でデモンストレーションを行うことで訓練用デバイスへの関心や必要性を把握し、各国の財政状況や関連機関との連携状況にあわせたビジネス展開の可能性を検討しています。

訓練用デバイスの普及活動実績(2024年9月時点)

カンボジア王国、ネパール、コンゴ民主共和国、ラオス人民民主共和国、モンゴル国の5か国にて、デバイスを活用した研修を実施しました。実際にデバイスを使った研修を受講した研修生からは、「リアルで効果的な訓練だった」、講師からは「操作も簡単で、負担が軽減した」、という声を多く頂いています。

また、モンゴル国においては、現地の周産期学会と協働して当該シミュレーション補助デバイスを活用した新生児蘇生法研修導入事業を実施しています。

<モンゴル新生児科医に対する新生児蘇生法インストラクター養成講習をエレコム東京支社にて実施>

今後も、産官学のパートナーとともに日本の医療教育機器の国際展開を進め、国外の保健医療が持つ課題解決のサポートを行っていきます。

エレコムグループは、今まで、そしてこれからも、より良き製品・サービス・ソリューション、より良き会社、より良き社会を追求しつづけます。

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