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2026.10.20

情シスの属人化を解消する|引き継げる運用ドキュメントの作り方

情シスの属人化を解消する|引き継げる運用ドキュメントの作り方

「その作業、〇〇さんしかできないんです」。この言葉が出たら、属人化はもう進んでいます。1人か2人で情シス業務を回している会社では、担当者の頭の中に手順とノウハウが蓄積され、それが会社にとっての運用マニュアルそのものになっていることが多いです。本人が休めば作業が止まり、退職すれば誰も引き継げません。

属人化が怖いのは、平常時には問題が表面化しないことです。担当者が元気に働いている間は業務が回るので、問題が初めて発覚するのは、その担当者が急に休んだとき、あるいは退職を決めたときです。引き継ぎ期間が数週間しかなく、その間にすべてのノウハウを言語化しようとして、結局中途半端なまま担当者が抜けてしまうケースは珍しくありません。

この記事では、属人化した情シス業務を「引き継げる形」に変えるための考え方を整理します。柱は次の3点です。

  • 属人化が進んでいるかどうかを判定する具体的なチェック項目
  • 引き継げるドキュメントに必要な要素と、作成の優先順位
  • ドキュメント化と並行して仕組み自体を属人化しにくくする方法

属人化のサインは「聞かないとわからない」の多さで測れる

属人化の進み具合は、次の項目に「はい」がいくつあるかを数えれば確かめられます。

  • ある作業の手順を、担当者以外の社員に聞かれてもすぐに答えられない
  • パスワードやアカウント情報の一覧が、担当者個人のメモにしかない
  • トラブル対応の際、まず担当者に電話するのが暗黙のルールになっている
  • 過去のトラブル対応の記録が、メールやチャットの履歴に散らばっている
  • 「なぜこの設定になっているか」の経緯を知っているのが1人だけ

3つ以上なら、属人化はかなり進んでいるとみてよいでしょう。注意したいのは、担当者本人にはたいてい悪気がないことです。忙しい中で日々の業務を回すことを優先した結果、ドキュメント化が後回しになり、気づけば頭の中にしかない状態になっています。個人の責任として扱うより、仕組みの不備と捉えたほうが解決は早まります。

情シスの属人化リスクを判定するチェックリストの図

引き継げるドキュメントに必要な要素と作成の優先順位

ドキュメント化と聞くと、すべての業務を網羅した分厚いマニュアルを想像しがちです。それが失敗のもとです。分厚いマニュアルは作るのに時間がかかりすぎて、まず完成しません。完成しても、更新されずに陳腐化します。先に手をつけるべきは、「発生頻度は低いが、起きると影響が大きい作業」です。

優先順位の目安は次のとおりです。

優先度 対象業務の特徴 具体例
高 発生頻度が低く、影響が大きい サーバー障害対応、退職者アカウントの削除手順
中 発生頻度は高いが、手順が複雑 新規PCのキッティング、権限設定の変更
低 発生頻度が高く、手順も単純 パスワードリセット、印刷トラブル対応

優先度が高い業務から着手すべき理由は単純です。発生頻度が低い作業ほど担当者本人の記憶も薄れやすく、いざというときに「前回どうやったか思い出せない」という事態になりやすいからです。逆に発生頻度が高い作業は、担当者以外の人でもある程度は見よう見まねで対応できることが多く、ドキュメント化の緊急度は相対的に低いです。

ドキュメントに最低限含めるべき要素は、(1)作業の目的、(2)必要な権限・アカウント、(3)手順(画面キャプチャ付きが望ましい)、(4)想定されるエラーと対処法、(5)作業後の確認方法、の5点です。手順だけを書いて目的や確認方法を省略すると、状況が少し変わった応用的なケースに対応できないドキュメントになってしまいます。

新規PCのキッティングのように発生頻度が高く手順が複雑な業務は、ドキュメント化と同時に作業自体を標準化しておくと効果が大きいです。標準化の具体的な進め方は、別記事「PCのキッティングを効率化する|台数が増えても回る手順」で扱っています。

発生頻度と影響度からドキュメント化の優先順位を示すマトリクス図

ドキュメント化と並行して、仕組み自体を属人化しにくくする

ドキュメントだけでは、属人化は消えません。ドキュメントの存在を忘れられたり、更新されないまま放置されたりすれば、結局また担当者の頭の中の情報が頼りになります。ドキュメント化と並行して、業務の仕組み自体を「1人に依存しない構造」に変える視点も必要です。

たとえば、次のような工夫です。

個人のメモから共有ツールへ情報を一元化する流れを示す図解
  • 資産情報やアカウント情報を、個人のメモではなく共有できる台帳・ツールで管理する
  • 定期的なトラブル対応の記録を、都度チャットやメールに残すのではなく1か所に蓄積する
  • 拠点のPC管理など、現地確認が必要な業務は遠隔から状態を把握できる仕組みに置き換える

拠点に情シス担当者がいない会社では、3つ目が特に効きます。現地に行かないと状態がわからない業務は、そもそも「行ける人」に依存する構造になりやすいためです。この課題については、別記事「遠隔地のPCを管理する|拠点に情シスがいない会社の運用」で詳しく扱っています。

Excelの個人ファイルで管理された資産情報も、属人化の温床です。台帳の持ち方を見直す際は、別記事「IT資産管理の始め方|Excel管理から抜け出す最初の一歩」も参考にしてください。台帳とドキュメントのどちらを先に整えるかに、厳密な決まりはありません。目指す先は、どちらも「担当者が変わっても回る状態」です。

日々の問い合わせ対応についても、対応記録が個人のメールボックスに埋もれていると、頻出する質問のパターンすら把握できなくなります。問い合わせ対応の負荷軽減については、別記事「社内ヘルプデスクの負荷を下げる|問い合わせが多い項目から潰す」で扱っているので、ドキュメント整備の一環としてあわせて見直すと良いでしょう。

社員同士が運用ドキュメントを見ながら引き継ぎをしている様子

エレコムのIT資産管理・情シス運用関連サービス

エレコムは、法人向けにPCの遠隔管理・資産管理・キッティング支援を行うクラウドリモート管理サービス「AdminLink」を提供しています。資産情報や稼働状況をクラウド上の管理画面で一元管理できるため、個人のメモやローカルファイルに情報が分散する状態を避けやすく、属人化対策の土台として活用できます。具体的な機能や運用方法の詳細は製品ページで確認できます。

項目 内容
製品カテゴリ クラウドリモート管理サービス
対応範囲 PCの資産管理、遠隔管理、稼働状況の可視化
想定利用シーン 属人化した資産情報の一元化、担当者交代時の引き継ぎ負荷軽減

まとめ ― ドキュメントと仕組みの両輪で属人化を防ぐ

属人化の解消は、分厚いマニュアルを一気に作ることではありません。発生頻度が低く影響の大きい業務から優先的にドキュメント化し、目的・手順・エラー対処・確認方法まで含めて言語化します。そのうえで、個人のメモに散らばった資産情報や対応記録を共有できる仕組みに移せば、ドキュメントが陳腐化しにくい体制ができます。

担当者が元気なうちは属人化の問題は見えてきません。だから、平常時にこそ手をつける価値があります。次の担当者交代や休職の前に、優先度の高い業務から始めておきましょう。

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