Vol.05 ワイヤレス充電Qiの仕組みとメリット・デメリット
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ワイヤレス充電Qiのメリット・デメリット

ワイヤレス充電Qiの仕組みとメリット・デメリット

「Qi(チー)」は、スマートフォンにケーブルを差すことなく、ワイヤレスに充電できる便利な規格です。「チー」は中国語で「見えない力」を意味する「気」の読みから来ています。
この画期的な規格であるQiは、どのような仕組みで動いているのでしょうか。ここでは、Qiの種類や規格などをご紹介した上で、メリット・デメリットについてご説明します。

ワイヤレス充電Qiの仕組み

ワイヤレス充電Qiの仕組み

Qiはワイヤレス充電の国際標準規格で、「WPC(Wireless Power Consortium)」という団体が規格策定や推進を行っています。まずは、ワイヤレス充電の代表的な種類や原理、規格をご紹介しましょう。

ワイヤレス充電の代表的な種類

ワイヤレス充電といっても、雷のように空気中を電気が飛び交うわけではありません。代表的なワイヤレス充電方式の種類としては、「電磁誘導方式」「磁界共鳴方式」「電界結合方式」「電波受信方式」があります。

ワイヤレス充電の代表的な種類

・電磁誘導方式

電磁誘導方式は、送電する側と受電させる側とのあいだに誘導磁束を発生させ充電させる方式です。小型かつ低コストで実現できるため、ワイヤレス充電では一般的な方式となっています。
しかし、伝送距離が短いため、送電する側と受電する側との位置にずれがあると、きちんと充電できません。

・磁界共鳴方式

磁界共鳴方式は、送電する側と受電する側の共振器を磁界共鳴させて、電力を発生させて充電する方式です。電磁誘導方式に比べて距離が離れていても充電できます。現在は、電気自動車の充電用として研究されています。

・電界結合方式

電界結合方式では、送電する側と受電する側とのあいだに電極を用意し、それを対面させることでコンデンサー(キャパシター)を形成します。このコンデンサーに高周波数の電気を流すと、相手側電極にも電気が流れる現象が起きるので、これを利用して充電します。
電磁誘導方式と同じく短い送電距離ですが、位置ずれの影響を受けにくいメリットがあります。

・電波受信方式

送電する側で電流を一度電磁波に変換し、その電磁波を受電側に用意したアンテナで受信します。その受信した電磁波を整流回路で直流電流に変換し、これを利用して充電するのが電波受信方式です。伝送距離が長いことがメリットですが、電気の発生効率が悪いことが課題です。

Qiでワイヤレス充電を行う原理

Qiは、前述したワイヤレス充電の仕組みのうち、電磁誘導方式を採用しています。この電磁誘導方式は「ファラデーの電磁誘導則」をベースにしており、簡単にいえば「磁石同士を近づけると磁界が発生して電流が流れる」という原理を使っています。

具体的には、電気を送るワイヤレス充電器に「送電用のコイル」を、スマートフォンなど充電する側の端末に「受電用のコイル」を組み込みます。次に、送電用のコイルに交流電圧をかけると磁界(磁束)が発生します。この磁界が発生した状態で受電用のコイルを近づけると、その磁界を打ち消すための誘導起電力が発生します。
電磁誘導方式は、このときに発生する誘導起電力を利用して、スマートフォンなどの端末に充電する仕組みなのです。

Qiでワイヤレス充電を行う原理

ワイヤレス充電の規格

ワイヤレス充電の規格は複数あり、Qiの規格は「WPC」という団体が策定し、「非放射型」の「電磁誘導方式」が採用されています。Qi規格以外には「AirFuel Alliance」というワイヤレス充電の団体が推進する、AirFuel Inductive(旧PMA)規格や、AirFuel Resonant(旧Rezence)規格もあります。どの団体が推進する規格がスタンダードになるかはわかりませんが、現時点ではスマートフォンの充電には、Qi規格が多く採用されています。
なお、非放射型ではない「放射型」には、「レーザー方式」「マイクロ波方式」「超音波方式」などあります。

ワイヤレス充電Qiのメリット・デメリット

ワイヤレス充電Qiのメリット・デメリット

Qiを使ってワイヤレス充電をすれば、これまでのようにスマートフォンを充電する際に毎回ケーブルを接続しなくて済みます。その1点だけ見ればメリットしかないように思えますが、デメリットはないのでしょうか。
ここでは、Qiを使ったワイヤレス充電のメリットとデメリットをご紹介します。

ワイヤレス充電のメリット

まずは、ワイヤレス充電や、ワイヤレス充電器のタイプによるメリットを見ていきましょう。

ワイヤレス充電のメリット

・ケーブルがなくても置くだけで充電できる

ワイヤレス充電はスマートフォンと充電器を接続するケーブルは必要なく、上に置くだけで充電できます。ケーブルがないということは、充電器に置くときも充電器から持ち上げるときも、両手を使ってケーブルを抜き差しする必要がなく、片手で簡単に行えます。

・ケーブルがないので異なる機種にも充電できる

ケーブルがないということは、スマートフォンの接続端子がLightningであろうがUSB Type-Cであろうが関係ありません。端子の種類に関係なく、Qiにさえ対応していれば充電できるのです。
ケーブルを持っていなくても、友人や知人のスマートフォンがQiに対応していれば、充電器を貸すことも可能です。

・複数台を充電できる充電器もある

Qiにさえ対応していれば充電できるので、複数台、それも異なる機種でも同時に充電することが可能です。これは、同時に複数台を充電可能なワイヤレス充電器であることが条件となりますが、家庭で複数のスマートフォンを使っている場合などは、大きなメリットとなるでしょう。

ワイヤレス充電のデメリット

続いて、ワイヤレス充電や、ワイヤレス充電器のタイプに関連するデメリットを紹介します。

ワイヤレス充電のデメリット

・充電が遅い

ワイヤレス充電最大のデメリットが「充電が遅い」という点です。これは、直接電源に接続するのではなく、あくまで磁界の仕組みを使って電力を生成しているため効率が悪いことが原因のひとつです。
さらに、ワイヤレス充電器の供給電力が低い場合は、もっと遅くなります。例えば、高速充電ができるiPhone 8の場合、ワイヤレス充電器側が7.5Wの電力を供給できなければ、本来のスピードでは充電できません。

・充電する位置がシビア

Qiは、電磁誘導方式を利用しているために、送電する側と受電する側とのあいだにずれがあると、きちんと充電できません。そのため「充電器の上に置いて安心していたら、位置がずれていてまったく充電されていない」というトラブルも起こります。
特に、パッドタイプのワイヤレス充電器は、スマートフォンのサイズに制約がない反面、位置のずれが起こりやすいので注意が必要です。

・ワイヤレス充電器のタイプによってはスマートフォンのサイズが影響する

スタンドタイプやホルダータイプは、決まった位置に固定されるためスマートフォンの位置ずれの問題が起きません。しかし、設置するデバイスを選ぶというデメリットもあります。
スマートフォンだけであれば問題ないかもしれませんが、例えばAppleのワイヤレスイヤホン「AirPods」のような物を充電するには不向きです。

・ケースやアクセサリーが充電の邪魔になる

プライベートで使うスマートフォンの場合、ケースやアクセサリーで見た目や使い勝手をカスタマイズしている人も多いでしょう。しかし、ケースやアクセサリーの種類によっては、充電の妨げになる場合もあります。
基本的には「磁界生成の妨げになるもの」が問題発生の原因になりますので、ケースやアクセサリーに金属製のパーツがついていると充電に影響しやすいようです。

メリットとデメリットを比較してQiの導入を決めよう

ご紹介したように、Qiを使ったワイヤレス充電はメリットばかりではありません。特に、充電の遅さは、人によってはかなりのストレスになるでしょう。しかし、就寝前にセットすれば翌朝には充電が完了しています。また、位置のずれといった充電のトラブルは自分自身で注意すればいいことですし、ケースやアクセサリーも、問題のないものを使えばいいのです。
ですから、メリットとデメリットを比較して、自分の使い方でワイヤレス充電が必要かどうかを判断して導入を決めるといいでしょう。

メリットとデメリットを比較してQiの導入を決めよう