「オンライン会議中に映像が固まる」「Web会議の途中で音声だけになる」――テレワークの通信トラブルの多くは、社員の自宅回線という、会社が管理できない環境で起きています。しかも原因を突き止めようにも、情報システム担当者が社員の自宅に出向いて確認するわけにはいきません。
問題は、テレワークの通信環境を「各自の自宅のWi-Fi任せ」にしていることです。会社支給のPCにはセキュリティソフトを入れ、VPNも整備しました。それでも肝心の通信経路は、各社員の契約回線とルーターの性能に丸投げされたまま、という企業は少なくありません。
自宅回線という不確定要素に頼らず、会社側で通信環境をどこまで整えられるのか。この記事では次の3点を順に整理します。
- テレワークの通信トラブルが起きる典型的な原因の切り分け方
- 会社側で用意・支給できる通信環境の選択肢とその違い
- コストと効果のバランスで、どこまで会社が整備すべきかの判断基準
テレワークの通信トラブルは「回線」「ルーター」「家庭内の電波干渉」の3層で起きる
テレワークの通信トラブルの原因は、契約回線そのもの、自宅のWi-Fiルーターの性能、同じ家の中での電波の混雑という3つの層に分けて考えます。切り分けができていないと、「回線が遅い」という漠然とした報告しか届かず、打つ手が決まりません。
契約回線の問題は、社員が個人で契約している以上、会社側で直接手を出せる範囲は限られます。ただし、光回線かモバイル回線か、上りと下りの速度がどの程度出ているかは、簡単な速度測定サイトで確認してもらうだけで切り分けができます。Web会議は下り以上に上り(アップロード)の速度が影響するため、下りが速くても上りが遅い回線では映像が乱れます。
自宅のWi-Fiルーターの性能は、会社が最も介入しやすい層です。数年前に回線契約時に付属してきたルーターをそのまま使い続けているケースは多く、同時接続台数や対応規格が古いままだと、家族の在宅端末が増えた分だけ業務用PCの通信が圧迫されます。法人向けのWi-Fiルーターと家庭用ルーターでは、そもそも想定している同時接続数や安定性の設計が異なります。この違いは「法人向けWi-Fiと家庭用ルーターの違い|業務利用でやってはいけない構成」で詳しく比較していますので、テレワーク環境の整備を検討する際はあわせて確認してください。
家庭内の電波干渉も見落とせません。電子レンジや隣家のWi-Fiと同じ周波数帯が混雑していたり、ルーターが部屋の隅に設置されていたりすると、契約回線の速度が十分でも実際の通信は不安定になります。
会社側で整備できる選択肢と、それぞれの向き不向き
会社側で用意できる通信手段は、大きく3つあります。自宅回線に依存しない体制を作るために、それぞれをコストと管理負担の観点で比べます。
(1)モバイルルーターの貸与
会社契約のモバイルルーターを社員に貸与し、自宅回線とは独立した通信経路を確保する方法です。自宅回線の状態に左右されず、どこで働いても同じ通信品質を確保しやすいのが利点です。一方で、月額の通信費が人数分発生し、電波の入りにくい地域では効果が限定的になります。
(2)法人向けWi-Fiルーターの支給
自宅の固定回線はそのまま使いつつ、ルーターだけを法人向けの機種に置き換える方法です。同時接続台数や電波の安定性が家庭用ルーターより高い機種を選べば、家族の端末が多い家庭でも業務用の通信を優先しやすくなります。回線契約は社員個人のままなので、モバイルルーター貸与よりコストは抑えられます。
(3)VPN・セキュリティ設定の標準化と併用
通信経路そのものを整備する取り組みと並行して、どの接続方式でも一定のセキュリティ水準を保てるよう、認証方式や暗号化設定を標準化しておく必要があります。無線LANの認証方式をどう選ぶかは「無線LANのセキュリティ設定|WPA3・認証方式の法人での選び方」で扱っています。テレワーク端末が社内ネットワークに接続する際の扱いも、この標準化の範囲に含めて検討します。
| 選択肢 | 月額コストの目安 | 向いているケース |
|---|---|---|
| モバイルルーター貸与 | 通信費が人数分発生 | 自宅回線の品質が不安定・未契約の社員がいる |
| 法人向けWi-Fiルーター支給 | 機器の初期費用のみ(回線費は個人負担) | 固定回線はあるが、ルーターの性能が不足している |
| 標準化のみ(機器支給なし) | ほぼ増加なし | 自宅環境が比較的安定している社員が中心 |
どの方式を選ぶにせよ、社内の有線LANと無線LANの使い分けと同様、「止まると困る業務」がどちらの通信経路に乗っているかを先に整理しておくと、支給対象を絞り込めます。この考え方は「有線LANと無線LANの使い分け|止まると困る端末をどちらに置くか」で扱っています。
どこまで会社が整備すべきか ― 全員一律ではなく、業務内容で線を引く
全社員に一律でモバイルルーターを貸与する必要はありません。必要な水準は業務内容によって違います。それを前提に線を引いたほうが、コストと効果のバランスが取れます。
Web会議が毎日発生する営業職や、顧客対応でオンライン商談を行う職種は、通信の安定性が業務の成果に直結します。一方、資料作成が中心でオンライン会議の頻度が低い職種であれば、自宅回線の標準的な品質でもまず支障は出ません。まずは部署・職種ごとにテレワーク中の通信トラブル報告の頻度を集計し、頻度が高いグループから優先的に支給対象にする進め方が現実的です。
エレコムの法人向けテレワーク通信ソリューション
エレコムは、法人向けのWi-Fiルーターやモバイル通信機器を扱うメーカーとして、テレワーク環境の通信整備に関する相談に対応しています。自宅回線の状況や職種ごとの要件に応じた機種選定について、相談窓口で確認できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品カテゴリ | 法人向けWi-Fiルーター/モバイル通信機器 |
| 対応範囲 | テレワーク環境の通信整備に関する構成相談(詳細は要問い合わせ) |
| 関連情報 | 対応機種・同時接続数の仕様は製品ページで確認可能 |
よくある質問
Q1. モバイルルーターと法人向けWi-Fiルーター、どちらを先に検討すべきですか。
分かれ目は固定回線の有無です。固定回線があり、ルーターの性能不足が疑われる場合は法人向けWi-Fiルーターの支給から検討します。固定回線自体が未契約、または品質が不安定な社員がいる場合は、モバイルルーターの貸与を優先したほうが解決が早いです。
Q2. 支給した機器のセキュリティ設定は、誰が管理すべきですか。
初期設定は情報システム部門が行い、認証方式や暗号化設定を統一しておくのが望ましいです。社員個人の判断に設定を委ねると、拠点ごと・自宅ごとに設定水準がばらつき、監査やセキュリティチェックの際に説明できなくなります。
まとめ ― 通信環境を「個人任せ」から「会社の設計対象」に変える
テレワークの通信トラブルは、自宅回線という不確定要素をそのままにしている限り、根本的には解決しません。回線・ルーター・電波干渉という3層で原因を切り分け、業務内容に応じてモバイルルーターや法人向けWi-Fiルーターの支給ラインを引く。それだけで、対応の優先順位が見えてきます。
- 通信トラブルの原因は「回線」「ルーター」「電波干渉」の3層で切り分けます
- 会社側の選択肢は、モバイルルーター貸与・法人向けルーター支給・標準化の3パターン
- 全員一律ではなく、Web会議の頻度など業務内容で支給対象を線引きします
最初の一歩は、テレワーク中の通信トラブルがどの職種に集中しているかを自部署・自社で把握することです。そのうえで、支給する機器の候補を絞り込んでいけば、コストをかけすぎずに業務継続の水準を底上げできます。
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