複数社に見積もりを取ったら、金額が数十万円から数百万円までばらついた。何を基準に比べればいいのか分からない。オフィスのWi-Fi構築を検討し始めた担当者から、よく聞く相談です。
金額の幅が大きくなる理由ははっきりしています。Wi-Fi構築費用は「機器代」だけでは決まらず、配線工事の有無、天井裏や壁の状態、既存設備の流用可否によって大きく変わるからです。同じ従業員数のオフィスでも、テナントの建物構造が違うだけで工事費が倍近く変わることもあります。
この記事では、次の3点を順に整理します。
- Wi-Fi構築費用が何と何の合計でできているか
- 従業員数・フロア面積の目安に対して、費用感がどのくらいの幅で動くか
- 見積もり比較の際に見落としやすい追加費用の項目
Wi-Fi構築費用の内訳 ― 機器代・工事費・設定費の3層で考える
Wi-Fi構築費用は、大きく(1)機器代、(2)設置・配線工事費、(3)設定・検証費の3層で構成されます。この3層のどこにどれだけかかるかを分けて見ないと、見積書の金額差の理由が分かりません。
機器代は、アクセスポイント本体、配線用のスイッチングハブ、必要に応じたルーターやコントローラーの費用です。台数分の単価がそのまま積み上がる、最も分かりやすい部分になります。
設置・配線工事費は、天井や壁の中にLANケーブルを通す作業、アクセスポイントを天井に固定する作業、既存の配線設備を撤去・流用する作業などを指します。この工事費は建物の構造に強く左右されます。天井が二重天井で配線スペースがあるビルと、コンクリート打ちっぱなしで露出配線しかできないビルとでは、同じ台数でも工事費が大きく変わります。
設定・検証費は、SSIDやセキュリティ設定、VLANによる部門分けといった設計を反映し、実際に電波が届くかを現地で確認する作業の費用です。ここを省くと、「特定の席だけ電波が弱い」といった問題が設置後に見つかります。
規模別の費用目安 ― 従業員数だけでなくフロア形状も効く
費用の目安を考えるうえで、従業員数は一つの指標に過ぎません。同じ人数でも、フロアが細長い、壁で仕切られた個室が多い、といった形状によって必要なアクセスポイント台数が変わり、それが費用に直結します。
| オフィス規模 | 従業員数の目安 | 想定アクセスポイント台数 | 費用感が動きやすい要因 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 〜20名程度 | 2〜4台 | 配線の有無、既存ハブの流用可否 |
| 中規模 | 20〜100名程度 | 5〜15台 | フロア形状、間仕切りの多さ、会議室数 |
| 大規模・複数フロア | 100名以上 | 15台以上 | フロア間の配線経路、管理方式(一括か個別か) |
台数の目安は、一般的なオフィス環境を想定したものです。実際に必要な台数は、フロア図をもとに電波の届く範囲から逆算します。この見積もり方法は、別記事「アクセスポイントの設置台数と配置|フロア図から必要数を見積もる」で具体的な手順として扱っています。
機器単価は業務用アクセスポイントで数万円台から十万円台前半(税別)が一般的な価格帯とされますが、機種のグレードや同時接続対応数によって幅があります。正確な金額は各製品ページや見積もり時に確認してください。台数がまとまる中規模・大規模オフィスでは、機器代より工事費のほうが重くなりがちです。
見積もりで見落としやすい追加費用
見積書の本体価格だけを比較して契約し、後から想定外の請求が来るケースには共通のパターンがあります。次の項目は、契約前にひとつずつ確認しておきたいところです。
- 電源工事費:アクセスポイントの設置場所に電源コンセントがない場合、電気工事が別途発生します。PoE(LAN配線からの給電)に対応した機器を使えば、この電源工事を省ける場合があります。仕組みの詳細は「PoE給電とは|アクセスポイント・カメラの電源工事を減らす仕組み」で扱っています。
- 既存設備の撤去費:古いアクセスポイントやハブを使っていた場合、その撤去・廃棄費用が別立てになっていることがあります。
- 天井裏の点検口設置費:配線工事のために天井裏へ入る点検口がない建物では、新設費用が発生することがあります。
- 休日・夜間作業の割増費:営業中のオフィスで工事する場合、休日や夜間の施工を依頼すると割増料金がかかることが多いです。
- 保守・サポート費用:導入後の障害対応や設定変更を保守契約でカバーするかどうかで、初期費用とは別に年間費用が発生します。
これらは「初期費用」の見積書には載りません。判明するのは、たいてい契約後か工事当日です。見積もり依頼の段階で、上記の項目が含まれているかを個別に確認しておくと、後からの追加請求を防ぎやすくなります。
エレコムの法人向けネットワーク製品・ソリューション
エレコムは、オフィス規模や建物条件に応じた法人向けアクセスポイント・ネットワーク機器を提供しているメーカーです。PoE対応機種を含むラインアップから、電源工事の負担を抑えた構成の相談もできます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品カテゴリ | 法人向け無線LANアクセスポイント、PoE対応スイッチングハブ |
| 対応範囲 | 規模別の構成提案、概算見積もりの相談(詳細は要問い合わせ) |
| 関連ソリューション | Wi-Fi構築ソリューション |
よくある質問
Q1. 概算費用を出すために、業者に何を伝えればよいですか。
従業員数、フロアの平面図(間取りが分かるもの)、建物の天井構造(二重天井か直天井か)、既存のLAN配線の有無を伝えると、精度の高い概算が出やすいです。これらの情報がないまま見積もりを依頼すると、現地調査後に金額が大きく変わることがあります。
Q2. 家庭用ルーターを複数台使えば費用を抑えられませんか。
台数を増やしても、法人向けアクセスポイントのような集中管理機能や同時接続数の設計がないため、電波干渉やアクセス集中による接続不良が起きやすいです。初期費用は抑えられても、運用後のトラブル対応にかえって時間とコストがかかることが多いです。法人用途と家庭用ルーターの違いは「法人向けWi-Fiと家庭用ルーターの違い|業務利用でやってはいけない構成」で詳しく扱っています。
まとめ ― 本体価格でなく「総額」で比較する
Wi-Fi構築費用は、機器代・工事費・設定費の3層で成り立ち、建物条件によって工事費の比重が大きく変わります。見積もりを比べる前に、次のことを確かめておきましょう。
- 従業員数だけでなく、フロア形状と建物の配線環境が費用を左右します
- 見積書の本体価格に加えて、電源工事・撤去費・保守費といった追加費用の有無を確認します
- 正確な金額を知るには、フロア図と建物条件を業者に提示したうえで現地調査を依頼します
複数の見積もりを比べるときは、まずどこまでの工事範囲が含まれているかを揃えます。金額の大小を見るのは、そのあとです。

