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2026.09.28

工場のWi-Fi環境構築|金属・粉塵・電波干渉のある現場での設計

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工場のWi-Fi環境構築|金属・粉塵・電波干渉のある現場での設計

オフィスと同じ感覚でアクセスポイントを工場に置くと、たいてい失敗します。ラックや棚に囲まれた通路の奥で電波が届かない、稼働中のモーターやインバーターのそばで急に切れる、粉塵の多い環境で機器が数か月で不調になる。現場担当者から上がってくる相談は、だいたいこの3パターンです。

原因は二つあります。電波の性質と、工場という空間の特殊性です。金属製の棚やコンベア、鉄骨の梁は電波を反射・遮断し、天井の高い倉庫では電波が拡散して届く距離が短くなります。オフィス向けの設計図をそのまま流用すると、現場に出たときに「思ったより繋がらない」という結果になりがちです。

この記事では、工場・倉庫でWi-Fiを構築する際の設計上の注意点を、電波干渉・粉塵対策・設置方式の3方向から整理します。具体的には、次の3点を扱います。

  • 工場特有の電波干渉が起きる原因と、周波数帯・チャネル設計での対処法
  • 粉塵・温度・振動といった環境要因に対応する機器選びの基準
  • ハンディターミナルやAGV(無人搬送車)を安定稼働させるための設計上の勘所

工場でWi-Fiが不安定になる3つの原因

工場のWi-Fiトラブルは「電波が届かない」「繋がっても切れる」「特定のエリアだけ遅い」の3つに大別できます。原因が違えば、対処法も変わります。

(1)金属による反射・遮蔽

スチール棚、コンベアライン、鉄骨、金属製の間仕切りは電波を反射し、思わぬ場所に電波の届かない「デッドゾーン」を作ります。オフィスの石膏ボード壁とは、減衰がまるで違います。棚のレイアウトが季節や生産計画で変わる現場では、固定的な設計図だけでなく、稼働中の実測(サイトサーベイ)で死角を確認する工程が必要です。

(2)設備機器からの電波干渉

モーター、インバーター、溶接機、電子レンジなどは2.4GHz帯にノイズを発生させることがあります。2.4GHz帯は障害物を回り込みやすい反面、干渉源の影響を受けやすい帯域でもあります。5GHz帯やWi-Fi 6Eで使えるようになった6GHz帯は直進性が高く干渉源からの影響を受けにくいため、設備が密集するエリアでは上位帯域を優先する設計が有効になります。周波数帯ごとの得意・不得意は、別記事「無線アクセスポイントの選び方|同時接続数・電波干渉・給電方式で決める」でも整理しているので、機種を選ぶ段階であわせて確認しておきましょう。

(3)移動体端末の切り替え(ローミング)不良

フォークリフトに載せたハンディターミナルやAGVは、走りながら接続先のアクセスポイントを次々に切り替えます。アクセスポイント同士の電波が適切に重なっていないと、切り替えのタイミングで通信が瞬断し、業務システムとの通信がタイムアウトします。特にAGVの制御通信は、数百ミリ秒の遅延も許容しないケースがあります。ローミング設計の甘さは、そのまま生産ラインの停止に直結します。

フォークリフトのハンディターミナルを操作しながら移動する工場作業員
工場フロアにおける金属設備とWi-Fiのデッドゾーンを示す図

環境対応が必要な機器選びの基準

工場では、オフィス向けと同じアクセスポイントを使い回すべきではありません。確認するのは、粉塵・温度・振動の3つへの耐性です。

粉塵の多い現場では、保護等級(IP等級)を満たした筐体が求められる場面があります。木くず、金属粉、食品工場の微粉末などが吸気口から入り込むと、内部の基板が短期間で故障する原因になります。温度も見落とせません。空調のない倉庫や、逆に冷凍・冷蔵設備のある食品工場では、一般的なオフィス機器の動作温度範囲を外れることがあります。設置場所の温度は、事前に測っておきましょう。振動が常時発生するライン脇に設置する場合は、固定方法(ボルト留めか、マグネットか)も含めて検討する必要があります。

確認項目 見るポイント
粉塵対策 保護等級表記の有無、フィルター構造
動作温度範囲 設置場所の実測温度が範囲内に収まるか
振動・固定方法 ライン脇など振動源の近くでの固定強度
給電方式 電源工事が難しい高所・天井裏でのPoE給電の可否
防爆・特殊環境 危険物取扱区域など特殊な認証が必要な区画の有無

天井裏や高所への設置では、そもそも近くにコンセントがないことが珍しくありません。この場合、LANケーブル1本で電源とデータ通信を同時に賄うPoE給電が現実的な選択肢になります。電源工事の手間とコストをどう減らせるかは、別記事「PoE給電とは|アクセスポイント・カメラの電源工事を減らす仕組み」で仕組みから解説しています。高所に設置するなら、目を通しておいてください。

有線と無線の振り分けも、工場では迷いやすい点です。生産ラインを直接制御するPLCや基幹システムのサーバーは、通信の安定性を優先して有線LANに残し、ハンディターミナルや巡回点検用のタブレットなど移動を伴う端末をWi-Fiに乗せる、という切り分けが基本になります。この判断軸は「有線LANと無線LANの使い分け|止まると困る端末をどちらに置くか」でより詳しく扱っています。

工場向けアクセスポイント選定時の確認項目5つを示す図

設置台数と配置の考え方

工場では、床面積だけでアクセスポイントの台数を決めると失敗しやすいです。天井高、棚の高さ、金属遮蔽物の位置まで加味します。

目安として、遮蔽物の少ない平屋の倉庫であれば、1台のアクセスポイントで半径20〜30メートル程度をカバーできる場合があります。一方、金属棚が密集する保管エリアや、複数階にまたがる工場では、同じ床面積でもカバー可能な範囲は大きく縮みます。この数値はあくまで目安です。実際には壁材・棚の高さ・天井の梁の位置によって変動するため、フロア図をもとにした事前設計と、設置後の実測による微調整の両方が必要です。フロア図から必要台数を割り出す具体的な手順は、別記事「アクセスポイントの設置台数と配置|フロア図から必要数を見積もる」で解説しています。

もう一つ、拠点をまたぐ管理の方法も決めておきます。工場が複数拠点にある企業では、本社の情報システム部門が全拠点のアクセスポイントを一元管理する構成と、拠点ごとに設定を管理する構成のどちらかを選ぶことになります。台数が数十台を超えてくると、個別管理では設定ミスや対応漏れが起きやすくなるため、集中管理の仕組みを検討する価値があります。

本社から複数の工場拠点のアクセスポイントを一元管理する構成図

エレコムの法人向けネットワーク製品・ソリューション

エレコムは、法人向けの無線LANアクセスポイントやPoE対応スイッチングハブを取り扱っており、工場・倉庫のような特殊環境での利用を想定した製品も展開しています。設置環境や運用体制に応じた構成の相談も可能です。

項目 内容
製品カテゴリ 法人向け無線LANアクセスポイント、PoE対応スイッチングハブ
対応範囲 環境対応機種の選定相談、複数拠点の構成提案(詳細は要問い合わせ)
管理方式 クラウド管理・コントローラーによる複数拠点の一元管理に対応する製品ラインあり

具体的な保護等級や動作温度範囲、対応チャネルなどの仕様は機種によって異なるため、詳細は製品ページで確認するか、導入前に用途を伝えたうえで相談することをお勧めします。

よくある質問

Q1. 既存のオフィス向けアクセスポイントを工場に転用してもよいですか。

短期間なら動作はします。ただし、粉塵や温度、振動への耐性を考慮して設計されていない機器を長期間稼働させると、想定より早く故障するリスクが上がります。恒常的に工場内で使う場合は、環境対応をうたう機種への切り替えを検討しましょう。

Q2. AGVや無人搬送機を導入する予定がある場合、Wi-Fi設計はどう変わりますか。

ローミングの精度が重要になります。移動体端末が増えるほど、なおさらです。アクセスポイント間の電波の重なりや、送信電力の調整、対応するローミング規格の有無を事前に確認し、可能であれば導入前に実機を使った通信テストを行ってください。停止時間が生産ラインに直結する用途では、設計段階での検証を省略しないほうが良いでしょう。

まとめ ― 工場のWi-Fiは「現場を歩いてから」設計する

工場のWi-Fiで失敗しないための要点を、改めて並べます。

  • 金属遮蔽・電波干渉・ローミング不良という3つの原因を切り分けて対策します
  • 粉塵・温度・振動への耐性を機種選定時に確認し、オフィス向け機器の転用は避けます
  • 台数と配置はフロア図だけでなく、現場での実測をもとに調整します

図面上の設計だけで終わらせず、稼働中の現場を実際に歩いて電波状況を確かめる。この工程を省くかどうかで、あとからの手戻りの量は大きく変わります。

※法人様向け「導入ご相談 / 製品・サービスの販売」以外の
お問い合わせは、回答致しかねますのでご了承ください。

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