Wi-Fi(無線LAN)を使用するときに気を付けたい接続台数と設置場所
インターネット回線を契約するとき、プロバイダや料金、サービス内容に気を使う人は多いでしょう。ところが、Wi-Fi(無線LAN)でインターネットに接続するために欠かせないWi-Fiルーターのことを重視している人はあまり多くありません。実際、「何でもいい」「安ければいい」という人や、プロバイダや回線業者が用意した物で満足している人がほとんどでしょう。しかし、どれだけ回線が高性能(高速)でも、Wi-Fiルーターの設定や設置がフィットしていなければ、快適なネット環境は実現できません。
ここでは、Wi-Fiルーターを選ぶ上でぜひ押さえておきたい性能や正しい設置場所をまとめました。新たに回線の契約を考えている人はもちろん、既存のWi-Fiルーターを見直したい人はぜひチェックしてください。
Wi-Fi(無線LAN)の接続台数とは
有線LANルーターはポート数=接続できる機器の数となりますが、Wi-Fiルーターの場合は接続できる機器の数がパッと見ではわかりません。とはいえ、1台あたりの接続台数に限界がないわけではありません。目には見えませんが、Wi-Fiルーターの性能に応じて接続台数の上限が設定されているのです。つまり、Wi-Fiルーターは「同時接続できる機器の数をチェック」した上で選ぶ必要があります。
しかし、スマートフォンやPCの台数分、同時につなげられれば十分ということにはなりません。家庭にある「Wi-Fi(無線LAN)を利用してインターネットに接続する端末」が、スマホやPCだけとは限らないからです。携帯ゲーム機やタブレット、スマートウォッチ、プリンター、Wi-Fi対応テレビ、Blu-rayレコーダー、DVDレコーダー、デジカメ、携帯音楽プレイヤーなど…、Wi-Fi(無線LAN)に接続できる機器は枚挙にいとまがありません。
さらに、今後はIoT(モノのインターネット)の時代に突入し、電子レンジ、冷蔵庫、掃除機、エアコンなど、さまざまな家電がインターネットに接続し、自動的に情報処理するようになるでしょう。そして、その一部はすでに実用化されています。
例えば、ある大手ネット通販企業が、ボタンを押すだけでティッシュや洗剤などの消耗品を自動発注する小型端末を販売していますが、これもWi-Fi(無線LAN)でインターネットにつながって商品を発注しているわけです。また、問いかけると質問に答えてくれるスマートスピーカーも人気を集めています。今後もWi-Fi(無線LAN)を利用する商品は続々と登場して、私たちの生活を便利にしていくでしょう。
上記のようなIoTが本格化する近未来を見据えると、10~15台以上の接続台数を確保しているWi-Fiルーターを選んだほうがいいことは明らかです。ちなみに、接続できる機器の数に余裕がある(つないでいる機器が少ない)ほうが通信速度は遅くなりにくいので、ストレスを感じることなく利用できます。しかし、接続台数の多いWi-Fiルーターは、接続台数の少ない物より高価であることは事実です。
スマホやタブレットはWi-Fi(無線LAN)接続が断然お得!
通信量がかさむ動画やゲームに夢中になって、設定した月間パケット通信量の上限を超えてしまい、通信速度が低下してしまった経験はありませんか?このようなケースは、自宅では据え置きのWi-Fiルーター、外出中はポータブルルーターで接続すると防ぐことができます。また、容量の大きいアプリや電子書籍などをスマホやタブレットにダウンロードするときも、Wi-Fiルーターを経由して行うのが賢明です。
ただし、電波環境によっては知らないうちにWi-Fi接続が切れ、自動的に携帯会社の回線に切り替わっている場合もあります。電波の通りにくい鉄筋コンクリートの建物やWi-Fiルーターから離れた部屋では特に注意してください。また、スマホやタブレットの通信状況(マークによって使用中の回線がわかります)を、こまめにチェックすることも大切です。
モデムとWi-Fiルーターの違い
モデムとWi-Fiルーターは、どちらもインターネット通信に必要な機器ですが、違いがよくわからないという方もいるかと思います。モデムは、光回線やADSLを通じてプロバイダから提供されるインターネットの情報を受け取ったり、逆に利用者から発信された情報をインターネットへ送ったりする機器になります。このモデムとスマホやPCなどの端末を中継する機器がWi-Fiルーターです。
ちなみに、モデムとPCをLANケーブルで直接つなげることもできますが、Wi-Fiルーターならスマホやタブレットなど、モデムとは直接接続できない(しづらい)端末でもインターネットに接続できるようになります。さらに、モデムにはLANケーブルの差し込み可能なポート数に限りがあります。一方、Wi-Fiルーターは、Wi-Fi(無線LAN)非対応のルーターと比べると同時接続数が大幅に増える事が多いので、より多くの端末をネットワークに接続する役割も果たすのです。
なお、モデムとWi-Fiルーターを一体化した機器も増えています。こちらは、1台ですべてが済むため、モデムとWi-Fiルーターが分かれている場合に起こる、配線や場所の問題はありません。しかし、ポート数が少なく、ネットワークを分岐するときにはやや不便なところもありますので、用途や設置環境に合った物を選ぶようにしましょう。
Wi-Fiルーターの「APモード」とは
多くのWi-Fiルーターでは、「RTモード(ルーターモード)」と「APモード(アクセスポイントモード)」を切り替えられるようになっています。APモードは、接続台数が足りなくなったとき、Wi-Fiルーターをハブ(接続できる端末数を増やす分配器)として利用するために搭載された機能です。APモードをオンにしたWi-Fiルーターは、「接続できる端末数を増やす」機能に特化した状態になります。 ただし、Wi-FiルーターによってはAPモードを搭載していない物(RTモードのみ)もありますから注意してください。
オフィスや広い家では、1台のWi-Fiルーターだけで隅々まで電波を届けられないことがあります。このような場合、複数のWi-Fiルーターを導入してAPモードに切り替えて使用するわけです(アクセスポイントを増やすと、接続しやすくなります)。また、無線LAN中継機を使うことで、弱くなった電波を増幅する方法も有効です。
一方、利用者が増えることで接続台数が不足する事態も考えられます。大元のWi-Fiルーターの同時接続数を超えてしまう場合は、契約回線を増やして対応するか、より多くの接続に耐えるWi-Fiルーターに換える必要があるでしょう。
Wi-Fiルーターの設置に適した場所
Wi-Fiルーターを設置する場所には、ちょっとしたコツがあります。
もし、接続する端末が1台しかなければ、その近くにWi-Fiルーターを置くようにしましょう。端末が複数ある場合は、Wi-Fiルーターからの電波が部屋の隅々まで届くよう、できるだけ部屋の中央か、それに近い場所に置くのがおすすめです。その理由は、一般的なWi-Fiルーターが電波を四方八方へ球状に飛ばしているからです(太陽の光のように、全方位に電波が飛んでいると考えるとイメージしやすいでしょう)。
3階建ての戸建て住宅であれば、Wi-Fiルーターは1階ではなく、2階に設置したほうがいいということになります。また、壁や大きな家具に遮られず、接続する端末ができるだけ多く見える場所を探すことも大切です。
Wi-Fiルーターを置かないほうがいい場所
Wi-Fiルーターは、部屋のどこに置いても、電波がしっかり飛ぶように作られています。しかし、一部、電波にとって良くない(苦手な)場所があります。以下の場所には設置しないようにしましょう。
・水回り
Wi-Fiルーターを置かないほうがいい場所の筆頭は「水回り」です。Wi-Fi(無線LAN)の電波は水を透過しにくい性質がありますので、お風呂場や洗面所、台所の流し、水槽・花瓶の近くに設置するのは良くありません。また、紙も水を含んでいるため、本棚なども設置場所としては適さないとされています。
・棚やケースの中
見た目がインテリアにマッチしないため、Wi-Fiルーターを棚や収納ケースの中にしまうのもNGです。Wi-Fiルーターの周りを囲うと、電波が弱くなってしまいます。特に、金属は電波を遮断しますから、鉄やアルミなどのケースへの収納は避けましょう。
・電波を発する家電の近く
電子レンジやBluetooth機器、コードレスの固定電話、ITコンロなど、別の電波を発する家電の近くに置くことも、Wi-Fiルーターの電波を飛ばす機能を弱める原因になります。特に、電波の周波数帯が2.4GHz帯のWi-Fiルーター(IEEE 802.11gなど)は、ほかの電波の干渉を受けやすい傾向がありますので、電波を出す家電からは離して設置するようにしてください。今後は、東経110度CS左旋円偏波による4Kおよび8K放送も電波干渉の原因になる可能性がありますので、設置場所に注意が必要です。
・床への直置き
Wi-Fiルーターの床への直置きも、電波環境を悪くさせる一因です。これは、床面が電波を乱反射させ、通信速度の低下や不通につながるためで、床面から1m程度高い場所に設置することで、ある程度防ぐことができます。
Wi-Fiルーターのアンテナを活用してみる
現在のWi-Fiルーターは高性能ですから、アンテナが本体に内蔵されている物でも、十分に電波が飛ぶようになっています。ただ、アンテナが外に出ている機種であれば、設置場所や求める通信環境に合わせて「電波の飛ばし方をコントロール」することが可能です。例えば、床面積の広い家ではアンテナを上へ向けるようにし、階数がある家ではアンテナを横に伸ばしましょう。そうすることで、それぞれアンテナが向いている方向と垂直方向に重点的に電波を飛ばすことができます。
ただし、アンテナのような突起物があると、小さい子供やペットがいる家庭では、そこに体を引っかけてしまい、転倒や負傷などといった事故の原因になるおそれもあります。また、Wi-Fiルーターが、落ちた衝撃で故障してしまうかもしれません。そういった意味も含めて、設置場所には気を配りたいものです。