アンテナの数で高速化
MIMO拡張方式がLANを変える
家庭や職場、そして公共の場所でも使用されている無線LAN。いろいろな場所で手軽にインターネットに接続できる一方で、無数の電波が飛び交っている環境では、電波障害なども起こっています。電波障害があると「接続に時間がかかる」「接続が切れやすい」などの弊害が出ます。その弊害を解決するために、様々な技術革新が行われていますが、そのひとつがMIMO拡張方式という技術です。
MIMOとは何か
MIMOとはMultiple Input Multiple Outputの略語で、複数のアンテナを使用してデータを同時伝送することにより、無線LANを経由した通信を高速化させる技術です。通常の通信では、送信側・受信側に1本ずつのアンテナを使用しますが、それぞれの本数を増やすことで、電波の安定化を図ります。
具体的な伝送方法
例えば、送信側・受信側のアンテナを通常の倍の2本あるとしましょう。あるデータを送信する場合、送信機器はデータを2分割して、分割されたデータを2つのアンテナから一つずつ送信します。そして受信機器はその分割されたデータを、やはり2つのアンテナで受信して元のデータに復元します。このような技術を採用することで、1つのアンテナで伝送するデータを2つのアンテナに分割して送信することができます。この方法で送受信することで、これまで1つのアンテナで送信していたデータを2つのアンテナを使い、2倍の通信速度を実現したのがMIMO拡張方式です。
MIMOのメリット
MIMO拡張方式を利用することで、通信の高速化を図るばかりか、他のメリットもあります。上記の2本のアンテナを使用する場合、それぞれのアンテナで異なるデータを送信するため、デッドスポットと呼ばれる無線が届いていない場所が減ることで安定性と確実性を備えた無線LAN環境が整います。
進化するMIMOテクノロジー
MIMOは無線LAN回線が増加する傾向の現代において、さらに進化していくテクノロジーです。MIMOは送信側もしくは受信側のみが対応する場合でもある一定の高速化が実現しますが、両方がMIMOに 対応している場合は、大幅なパフォーマンスの向上が期待できます。これはMIMOスマートアンテナテクノロジーと呼ばれる技術で、通常のアンテナを使用するよりも長距離であっても確実に信号を受信できる上、通信速度が落ちる可能性があるところを、速度が落ちずに通信が行えるというメリットがあります。
使用できるアンテナの本数の増加
もともとMIMO拡張方式では、送信側・受信側でそれぞれ4本ずつのアンテナの使用が可能な技術としてスタートしました。しかし、無線LAN環境の現状を打破すべく技術革新が進み、これまでの倍にあたる送信側・受信側でそれぞれ8本ずつのアンテナの使用が可能になりました。
単純に4分割して送受信していたデータを8分割できるようになったため、アンテナを多く使い、それぞれのデータを小さくすることで、通信の高速化はもちろんさらにデッドスポットが少なくなることになります。
最終的にはさらなる高速化が実現か
このようにMIMO拡張方式は、無線LANの可能性を大きく広げました。今後も、無線LANの使用頻度はさらに増加すると想定されていますが、MIMOをはじめさらなる高速化のために技術革新も進むことでしょう。そのためにもどのような技術で通信の高速化が図られているのかを知っておくことは重要なことなのです。